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The Symphony Ring Stories
☆
――見渡す限りの戦場だった。
瑠璃を散りばめたような蒼穹の空を、黒く塗り替えるように硝煙が立ち上り、爆発や銃撃の怒号がどこまでも続く翡翠の森に響き渡っている。
太陽を劈くように伸びる“巨大な塔”が遠くのほうに見え、近いところでは“機械の巨人”たちが淡い緑色の風に乗って激しい戦闘を行っていた。
ここはいったいどこで、
これはいったい何なんだろう?
僕は自分が今いる場所も分からないまま、ただただ高い所に立って、目の前で繰り広げられる現実感のない戦場の景色を眺め――
そして愕然としていた。
僕が立っているのは吹きさらしの広間の様な場所だった。円形の広間の床一面には、青色の大理石のような艶やかな石が埋め込まれ、ドーム型の天井には金色の複雑な幾何学模様が描かれている。
青い大理石の床は淡い緑色に発光していて、うっすらと文字のようなものが浮かんでいた。
僕はその文字を追うように振り返った。
円形の広間の中心、浮かび上がる淡い緑色の文字と記号と円――
その複雑な紋様の中に、一人の少女がいった。
一糸まとわぬ姿で艶やかな褐色の肌を晒した少女が、円の中心で仰向けに倒れていた。
褐色の少女はかすかに体を震わせた後、ゆっくりと顔を上げて僕を認識した。
「ああ――」
小さな花の蕾のような唇を動かして、少女が告げる。
「――救星の英雄さま」