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組み換えの音

あらゆる淋しさを混ぜて 過去にと投げる

この身が揺れる 音もたてずに揺れる

誰も言葉もかけずに いちいち確かめもせず

この場所からは 音だけが聞こえる

真っ白な悪もあるから 静かに崩れて

それでも逞しく 前にと転がり続ける

時間は流れ続けて そこからは上りかもね

不思議な絵本みたいに すじは繋がらない

ある地点から 遠い場所まで走る

溢れるものもないから コップは要らない

不必要なものが 必要を教えてくれて

だから現実の方が 荒唐無稽な文化財だ

わたしは見つめ続けている 昔からね

              「文化の証」





古くさい湯飲み茶碗で オレンジジュースを飲む

味は同じなのに 違和感を覚える

それが大人 子供には同じジュース

体裁を気にするね 体裁を気にするさ

安らぎを求めて 椅子にと座る

そこから窓の外 風は強いね

言えないことばかりだから 黙り込む

見えないことばかりだから 瞼を閉じる

明日が遠いならば 歩き出せばいい

昨日から遠くへと 離れていけ

この冷たい河の果てには 青い空が

哀しみを砕いて 歩いていく

強く強く 歩いていく

             「清廉」




努力を重ねた人が あっけなく砕け散る

根性を叫んだ人が 腐りきって手錠を嵌められる

わたしは個人としては 運しかないと思うな

誰かと感覚を共有したいとは 少しも思わない

わたしだけの実感だね 運だけしかないと思うな

不謹慎だと怒られるだろう それでもね

非科学的だと怒られるだろう それでもね

そういうことなのだ そういうことなのだ

               「わたし」




不幸に導かれて 門は開かれる

よって来るのは黒いカラスたち その瞳は賢さに満ちている

時代の神輿に誰かをあげて 祭りは続いていく

わたしは不幸の従者で 人々は目を合わせない

居心地の悪い幸福なら そんなものは必要ない

だから不幸の従者にと なったのだから

今年の雪は 早いだろうか

               「不幸の従者」




静かに窓ガラスの向こうの 白い雪を見ている

何もないであろう わたしの未来の景色

孤独と貧困だけが横たわり それさえも放ったらかして

つまづいた覚えもなく 負けた訳でもなく

はじめから与えられた そんなものですから

望むことは罪 せめて安らかな最期を

みんなみんな 幸せになりなさい

みんなみんな ありがとう

雪は音を外しながら 降り続いている

みんなみんな 元気でいてね

みんなみんな 好きでした

高い空で 悲しい風の音がした

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