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 どう足掻こうと、浮かばれない

作者: 浮遊するごんぎつね

 書きたいな!!! と思い立ち、またしても駄文を連ねました、読んでくれるとありがたいです。

 ぷかぷかと私は波状が頭上に日中浮かんでいる水槽にゆったりゆらゆらゆらいでる。

 傍から見ればきっと私は余程退屈そうに見えている事だろう、だって漂流しているだけなんですから。

 何を唱えようとどんな音を出そうと誰も何も発してはくれない、反応してくれない。

 誰かは言った、


 ―――――――いいね、君は、どんな辛いことからも無関係で

 ―――――――はぁ…貴方はいいわよね、何も悩みなんて、なさそうですもの


 なんて、皆無性の愛で柔らかく包み込んでくれる水の中にいる私に向かって好き勝手自分勝手な戯言をキャッチボールをする気などさらさらないドッジボール感覚で投げ付けてくる。

 どれだけ自分勝手? それらの言葉を投げ掛けられる度に私は常々憤慨するモノだ。

 私にだって、人生の辛さや災難に遭うことは幾多もある。

 こんな常時薄暗い、平常的ヒッキ―加減がこびりつく様な教室にいたって、至ってそんなことは多々あるものだ、あるよ、ありますよーだ。

 ほら、今日だって始まろうとしてる、私のとりあえずの毎日の苦悩。

 それはいつも一人の少年がドアを叩くノック音から汽笛が鳴る。

 

 ―――トントン、トントン、誰か、誰かいますか?


 少年は年さながらな声変わりの寸の様な声をドアの向こうに響き渡らせる。

 そうして、もう一度ドアを叩き、誰もいない事を確認すると少年はいつもの様にドアノブを左から右へ捻りノブの錆びつき音と共にドアノブを捻りながら体ごと教室に入ってくる。

 少年は、そうやってまた普段通り飽きることなくもはや習慣と化した一連の動作を繰り返す。

 辺りを見回して、それから、本当に誰もいない事を確認して。

 水槽の中の魚を凝視する為にどこからか椅子を水槽の前に引っ張ってくるのだ。

 椅子に座った少年は多少思春期も終わり据わり始めた目力ある目を水槽にいつもの様に向けるのだけど。

 正直言って、私には何が楽しいのかさっぱりわからない。

 でも、なんだかそうやって少年が水槽を見つめてくるたびに私の心にはおおよそ持っていいのかわからないそうして自分でもよくわからない感情がぐるぐると渦を巻くのだ。

 今日の私は、少年に見つめられながら微かなイノセントに打ちひしがれた。


 ――思えば、この少年がこの教室に来始めてからいくつの歳月が流れただろう


 つたない私の思考能力では、数は10までくらいしか数えることは出来ないけれど、

 それでも10以上を超えるっていうことだけは私にもわかった。

 また、こんなイノセントが生まれた


 ―――この少年が私を見つめ始めて一体計何時間くらいなんだろう


 覚束無い私の暗算能力じゃあ(性的な方の能力は中々得意な方だけども)やはりやっぱり数は10までぐらいしか数えることは出来ないけれど、

 やっぱやっぱり、それでもでもれも10以上を超えるってことは至極了解。

 おぉっと私が似合わない耽りに生じていると、少年がなにやらゴニョゴニョ言いだしている。

 そうなのだ、少年は、私がいるこの水槽を見つめに来る度に私の理解の範疇を超える言語を駆使して

 私になにやら問いかけてくるのだ。

 今日は、なんと言っているのだろう。


 ―――――ねぇ、シャニ―、今日も元気だった? 僕は今日も疲れちゃったよ、あのね…今日はね…


 なんと言っているのかはさっぱり、私には私の中で渦巻いてる物を具現化したような竜巻みたいなグネグネした音にしか聞こえないけど、私は少年が言葉を

 一言、――、一言、私には永久に届かない、届いたらむしろ自の消滅を意味する地の底に落としていくたびに、唯一私にも理解できる理解しうる彼の表情が柔らかく柔和になっていく変化していく過程を見ていく事、それだけが、なんだか私に幸福の福音をもたらしてくれる。

 なぜだろう、本当なら、彼だって自分勝手に言いたい事を私に好き勝手ぶつけてきているだけのはずなのに、私は彼に対して同じことを思えない。

 彼に凝視されながら私はまた沈んでいると彼がなにやら動き出した。

 動き出した、とはいってみても、私には彼がその後どんな行動をするかをもう予測して予感して確定しているから、特段、それほど期待の念は到底皆無に近い。

 今度は私が彼を観察する場面に切り替わる、これも普段通り。

 彼は何回やったかわからない動作の癖にそれでいてぎこちない趣で目的の場所へ辿り着いて目的のブツを入手してから又、私の元へと戻り、なんだか機械の様なモーションで椅子に座る。

 手元をニョロニョロと年相応ではない各所骨ばった手を動かしながらありふれた素材で製作されたありふれた絵柄で彩られた袋から何かを取り出す。

 それは、こう記名されていて『魚が飛びつく餌!!!』…魚は飛びつかないよ…と私は突っ込む。

 ここまでも一連として私は思っているので一応今日も突っ込んでおいた。

 彼は、水槽に餌を小粒小粒、まばらに掴み入れながらまた私には不明瞭な言葉をいくつもいくつも呟く。


―――――そういえばね、シャニ―、君の名前なんだけど、太陽のサニーと輝くのシャイニーを掛けてるって事知ってた? 賢いシャニ―ならどうせ気づいているんだろうなーもしかすると、僕のクラスを受け持っている担任の女の先生みたいに「なんか覚えたての英単語並べてみましたーて感じで安直ね」とか思われてるかもしれないなー、でも、それでもいいんだ。だって僕にとってシャニ―っていう魚は本当に僕の輝く太陽みたいな存在なんだもん。


 もやもやするような言葉を散り散りに投げ入れられる餌に食いつきながら私はなんとか取り留めて、取り留めながら彼の表情を見ていく、あ、言い終わった。

 言い終わった後の彼の表情はまた一段と華々と煌めいていて薄暗い教室がなんだか私には蛍光灯全開の様に錯覚してしまった。

 彼が何か言いだそうとする度に、私の水中の波みたいなうねりもまた浮き浮きしだして

 彼が何か言い終われば、私の水中の波みたいなうねりも又、沈んでいって。

 私はそんなに軽い女なのかな、と思う程彼がいるとき、私は彼に何から何まで支配されてしまう気がする

 気がする、なんていう言葉は遠慮がちで、支配されている、が正しいのだけど、私はなぜか彼に対していつも言い切りの断言の言葉だけは躊躇ってしまう。

 あ、なんとなく漂流していれば彼がまた動き出した、次は、なんなのだろう。

 もういいかな、なんなのだろう、とは言ってみても、もう私には分かり切っているから。

 彼は彼と一緒に運ばれてきたもの、彼が片手に引っ提げて来た学生鞄を、椅子の真ん中あたりに置いていた学生鞄を、ふと手に取り、その中に栄養失調児の様な左手を入れてガサゴソガサゴソとやりだして、中から何かを取り出す、って…もうわかりわかられきりきってるのだけれども…。

 中から出てきたのは、さもお母さんがスーパーの安売りで選んできましたっていう感じの模様で彩色られたお弁当箱らしきモノだ、それを彼は水槽が置いてある机の空いてあるスペースに置いて、お箸なんかも取り出しちゃって多少私が今プカプカ浮かんでいる所と同じ色の液体を瞳にたたえながら開封して、誰に向けているのかも私には全く持って不明な申し訳なさそうな表情で弁当に入っている数多くの食材に、一つ、又一つとお箸を多用しお口に運んでいく、なんだか私には彼がお弁当を食べることで贖罪でも償っているかのように見えて、不思議な感覚だった。

 まぁ、これも一連、いつものことなんだけど、なんとなく同じ事を思っておかないとテンポ? テンション? が狂いそうになるから同等の反応をしてみた、一期一会とはいうけど、実はそんなことはない、自分がそうだと認めればそうなりそうじゃないと認めればそうじゃなくなる、ボーダーラインなんていうモノは、自分で決めちゃっていいと私は思ってる、え? 屁理屈? そうとも言う。

 彼はお弁当の中の食材をモグモグしながら、またも何かゴニョゴニョとぼやく、

 いや正直今は辞めた方がいいんじゃないかな、食べ終えてから喋りましょうよなんて突っ込んでみたい。


――――――あぁ、シャイニー、今日のお弁当も美味しいよ。お母さんがさ、毎朝毎朝早起きして作ってくれるんだ、こんな事言うんだよ? 「○○が友達とお昼ご飯なんか一緒に食べるときに、貧相なご飯だと、○○がいじめられちゃったりするからね、お母さん、毎朝手によりを掛けて作っちゃうぞー」て、夜勤してからだから眠いはずなのにね、なんでそんなことするんだろうね、ハハハ、ホント笑っちゃうよね…、友達なんて…ね…。

 あぁ、ごめん、僕にはシャイニーがいたよね、だから僕は大丈夫…そう…大丈夫。


 彼は一口噛み締める度に落涙しながら、一言一言器用に口の中を動かさずに私に向かって発声してくる。

 私は、そんな彼を見て、なぜだかわからないけれど、えら辺りがビクンビクンと成った。

 彼は、一体、何に対して悲しんでいるのか、私にはわからない、私にはそもそも悲しみという感情がわからないのかもしれない、所詮私がわかる事なんて全て仮初でしかない。

 でも、彼は私に語り終えると、やはりやっぱりいつも通り、私が存在している場所と似通った液体なんかは瞳にたたえず、ふしぎと清々した表情で先ほどとは打って変わって飄々と次々に食材を口に運んでいる。

 はぁ…あんな物がおいしいのでしょうか…。

 牛を切り刻んで固めたようなモノ、細長くしたモノ、なにやら噛みにくそうな緑色々したモノ…。

 全く持って私には不明…わかろうともしてないけど。

 やっぱり私には、少々ネーミングセンスに問題があるエサが一番だなぁーとしみじみ思いながら私は彼が投げ入れてくれたモノを噛み噛み。

 私が最後の一口まで食べ終えると同時に彼も食し終えたようで、弁当を風呂敷に包んで学生鞄に仕舞い終えると、また学生鞄の中に手をまさぐり、細長い金属の棒のようなモノ、水筒? を取り出して頭部分をクイクイやって、またもや口に運んだ。

 美味しそうに透明色の液体を口に運ぶ彼を見ていると、それに常時浸かっている自分がなんだか不思議に思えた。

 彼は、美味しそうにグビグビと煽り終えると、また私に何かツブツブ零す。


――――――はぁ…今日もシャイニーと過ごす時間も終わるね…そろそろ、夕焼けが見えてきたよ、あぁーやっぱりここは落ち着くなぁーどこかとは違って、なんでだろうね、ハハ。


 それらを語り終えた時の彼の表情、彼の笑顔は、どこか何かを誤魔化しているようで。

 いつも彼を見ている私には、少し違う彼を見れたような気がして、違和感も確かに感じたけど、なんだかないまぜになって、言葉には言い表すことが出来ない様なモノに満たされた。

 彼は、水筒を学生鞄の奥に仕舞って立ち上がり、辛そうな表情で私にまた何かぼやく。


 ――――――じゃあね、シャイニー…もう6時30頃だろうから、帰るよ、多分、校庭にも体育館にも、多分…だけど、誰もいないだろうし…ね…。


 私は彼の辛そうな表情などは意に介さず、なぜかその言葉を聞き終えた瞬間、意味も分からないはずなのに、多少の寂寥感、寂しさや哀しみに包まれた気がして、なぜだろう、と自分に問いかけては見たけど、やっぱりいつも通り、答えは出なかった。

 少年は、入って来た時と同じような動作で、教室を出て行った。

 どこか、いつも彼は出ていく時だけ、また私が自分を確立している場所と同じ液体を地の底に落としている気がするのだけど、なんだか私の勝手な願望の様な気がするから、気の所為ということにしておこう。

 ふぅ、とにもかくにも、今日も私の日々の微量の苦悩や葛藤は幕を下ろした。

 でも、なぜだか私のえらはまだビクンビクンと発情期みたいにビクついていて不思議な感じ。

 そんなことを一匹思っているとまた誰かがドアノブを捻って教室に入ってきた。

 

 ――――――トントン、トントン、て…私の教室じゃん…


 彼女は慌ただしく教室に入ってくると、即私の水槽がある机とは反対側の机の引き出しを開けて、白衣と金属製の柱頭部分に凹凸が入ったモノを取り出して、反則的なスピードで、ドアに向かう。

 と、ドアに向かう直前、突然私の確立されている水槽に気付き足を止めてこっちに向かってくる。

 なんだか新鮮な風に語っているけど、実はこれもいつも通りだ。  

 彼女は両足を右へ左へ忙しく機能させて半ば走る様に私の方へ到達すると、またこの彼女も私には不明瞭な言葉を彼とは違ってハッキリと鮮明な口調で話し掛けて来た。


 ――――――君か…どうだった? 今日も○○は来たかい? ○○、クラスに馴染めないらしくて私もどうすればいいかなーと悩んではいるのだけれども、結論的に直接的に手を出さない方がいいかなて所に落ち着きまして、こうして毎日君のいるここの教室の鍵を開けておいて、彼が落ち着ける場所を作ってるのだけれどもどうかな、○○は今日もここに来たかな? て、まぁ君に聞いてもわかんないのだけれども。彼、ここはなにやら落ち着くみたいでね、あぁちがうか君がいればなんか落ち着くみたいでね…ハハハハ担任教師が何甘えた事してるのだよって感じだけれどもね。あ、やっばい、急がなきゃ会議遅れる…!!!!


 彼女は白衣に着替えながら私には取り留めることが出来ない言葉を幾つも汗をダラダラ書きながら口早に次々と発声してくる。

 そうして、発声し終えた後、彼女は再度反則的なスピードでドアに向かい、ドアを開き出ていく。

 彼女が出て行った後、何かが終わりを告げるようなガチャリという四文字構成の音が鳴り響き。

 

 ――――――私はまた彼女が囁いた言葉の列に不思議とえらをビクンビクンさせながら、一匹、目を瞑り、プカリプカリと無償の愛に浮かぶ

 書きたいなと思い、書き終えました、疲れた…読み終わってくださった方には最大の感謝を…。

 では、貴方の脳裏に蘇りますように。

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