第十三章 冬とメッセージ
第十三章 冬とメッセージ
どうでした。春さんからの愛のこもったメッセージ。
私、初めてここまで愛のこもったメッセージ、今まで見たことありません。
え、当たり前だろ。何ですか、ノロケですか。ああ、嫌だ。さっきまで、真っ青な顔をして怯えていたのに、安すぎでしょ、メッセージごときで。
ばかにするなって、馬鹿になどするわけないでしょ。逆ですよ、逆。褒めていますよ。そんなお気楽な思考の持ち主で、羨ましいなと。
そう言えば、覚えていますか。私が一番初めに言った言葉を。そう、人生をどうやって決めているのか。それと、自分は本当に自分なのか。
質問していいかしら。志菊さんは、さっきの愛のこもったメッセージとあの物語を聞いて、本当に自分の人生は自分で決めているのかしら。
私は、この物語を貰った時。酷く滑稽で笑いが止まらなかったわ。ああ、勘違いしないでね。自分の人生で笑ったのではなく、この物語に登場する登場人物にたいしてよ。え、何で。そんなの決まっているじゃない、面白味が全く感じないからよ。
だってそうでしょ。志菊さんはこの物語を聞いてそう思わなかった。私は読んでいる最中でも、笑うのを必死に耐えていたのよ。
まあ、わからない人に同意を求めた私が馬鹿だったわね。え、説明してほしいの。仕方ないわね。時間はまだ大丈夫みたいだから、話してあげるわ。
私が夜さんのどこが面白くないと思ったのは、ヒーローだのヒロインだの、そんなの気にしている時点で可笑しいのよ。普通の人はそんなの考えないわ。志菊さんは考えたことあるかしら。ほら、ないでしょ。夜さんは、物事を深く考えすぎなのよ。
まあ、夜さんは天才的に頭がいいから、そういう風に考えてしまうかもしれないわ。そう、無理矢理考えるとして、白夜さんのためにそこまでやるかしら。
私には、兄や姉からわからないけれど、アレって白夜さんからしてみればいい迷惑よね。勝手に勘違いして変な子に育ってしまったのこと、全部白夜さんの所為にしているのだから。
そんなこと言ってないって、当たり前でしょ。誰が、白夜さんが悪いって言ったのよ。私が言った。違うわよ。訳すとそうなるって話でしょ。まったく、もうちょっと頭を柔らかくしてよ。
ところで、まだわからないの。何がって顔ね。私が言っていることよ。
夜さんは自分の人生の半分を、白夜さんのために使ったと言ってもいいわ。けれど、白夜さんの方はどうかしら、白夜さんは立派に自分の人生は自分で決めているわ。白夜さんこそ、人類の見本となる人物だと思言っているわ。
この頃、過保護の親ばかり。朝の服から夜の服まで、子供の世話ばかりしている。別に悪いことじゃないわよ。でも、その子供が大人になっても、何もできないままだと滑稽よね。まあ、そんな子供はみんなおんなじ言葉を言うのよね。
自分にはママが付いているから大丈夫。馬鹿らしい。反吐が出るわ。自分の意思を持っていない人間なんて、機械と同レベル。いや、それ以下かもしれないわね。
そこで、私からそんな人たちに言葉を上げましょう。心して聞きなさい。
人は自分のために嘘をつき、周りのために笑顔を向ける。ああ、いつから私が作った生物は、このように進化してしまったのだろうか。時間は大きなものを連れてやってくる。その代償として、人として大切なものを奪っていく。
ここまで話せば、私が言いたいことがわかったでしょ。志菊さんは、頭はそれほどよくないけれど、勘が鋭いわ。だから、おおよそ予想はついているはずよ。
あら、ダンマリかしら。仕方ないわね。それじゃ、冬さんからのメッセージを読むわ。きっと、もうわかっているはずだろうけれど。一応聞いとくわね。どうして志菊は、この話を聞きに来たのか、聞いてどうしたいと思ったのか、もう一度よく考えて。そして、気づきなさい。私は、この物語の一番重要な部分を隠していることに。それは、何か。きっと、志菊さんならわかるはずよ。あら、もうすぐ日が沈みそうね。早くしなくては。
初めまして。志菊さんと会うのは初めてではないのですが、志菊さんはワタシを知らないと思うので、初めの挨拶はこの言葉にしました。
春に頼んで、この手紙を書いています。なので、この手紙の文章は春の文字です。
まず、ワタシの自己紹介をした方がいいですよね。
こんにちは。藍染 冬です。春の双子の姉になります。ワタシは、小さい頃から体が丈夫ではなく、ワタシの人生のほとんどが、病院のベッドの上で過ごしていきました。そんな訳か、学校は外国の飛び級制度がある学校に通うことになりました。
ワタシは、頭だけはよかったので、七歳の頃にはもう高校の勉強が終わっていました。日本に帰って来たのは、十歳前後ぐらいだったと思います。
日本に帰って来ても、暮らしが変わるわけもなく、ずっと病院のベッドの上。毎日が退屈でした。朝、目が覚めると同じ天井。個室だったので、話し相手もいませんでした。
そんなある日、ワタシは病院を抜け出しました。医者からも親からも運動をしてはいけないといつも言われ続けられましたが、この日だけはその言いつけを破りました。そう、この日ワタシは、志菊さんにお会いしました。
気づきませんでした。服装が無地の真っ白なワンピースだということ。春は、城が大嫌いらしく、白色の服は着ませんよ。
この時、志菊さんと春が同棲していることは知りませんでした。その前に、付き合っていることも、お互い愛し合っていることも知りませんでした。春とは、週に二回文通をしていますが、好きな人ができたことや同棲している人などの話は聞いていましたが、ワタシが誰と尋ねても、秘密の一点張りでした。
志菊さんと会った時、運命だと感じました。要は、一目ぼれです。話がしたいと思いました。この時、頭でいつも考えて行動しているワタシは、頭で考える前に体が先に行動してしまいました。
財布を落としたのを拾って手渡した時、話せて嬉しいと思う反面、やはり罪悪感がありました。もう、聞いたかもしれませんが、ワタシは志菊さんのズボンのポケットから、財布を引きに来ました。あ、心配しないでください。中身は見たりしていませんし、何も取っていません。
少し話しただけですが、ワタシにとってはすごく嬉しかったです。それに、ワタシは初めて父親やアリス、ウサギ以外の男性と話しましたので、別の意味でもドキドキしました。もちろん、志菊さんに対してのドキドキとは別ですよ。
志菊さんと別れた途端、倒れてしまいました。まあ、病院からあそこまではしってしまったのですから、仕方ないです。
それから、救急車に運ばれ、また病院で寝ることになりました。病院から脱走して事は、お咎めなしでした。というか、誰もそのことに触れようとしませんでした。よかったと思っている反面、ワタシは本当にココにいるのだろうか、ちゃんと人から認識されているのか、不安になりました。
ワタシ、春が羨ましかったです。春からの手紙は、毎日を楽しく過ごしているのが、文章を通じて伝わってくるほどでした。何度、病院のベッドの上で、春になりたかったと願ったことでしょう。ワタシの初恋も、実らない。だって、志菊さんはもう春の物なのですから。
ワタシたちのことは、春からの手紙。いや、ココではメッセージでしょうか。それに書いてあると言っていましたが、一つだけ言っていないことがあると言っていたので、ワタシから説明させていただきます。
ワタシたちが、人間ではないと言うのはもうご存知だと思います。ワタシたちが何者かは、春から説明があるらしいのでワタシからは何も言うことはございません。
ワタシたちは、愛する者ができたのであれば、どんな手段を使っても手に入れることが常識です。ですが、例外があります。
それが、今起こっていることです。そう、ワタシと春。同じ人を好きになってしまいました。コレが、例外です。この場合、どちらかが引き下がらなければなりません。それを決めるのが、志菊さんです。
志菊さんが、一生一緒に暮らしたい、共に生きたいと思える方を選んでください。選ばれなかった方は、潔く引き下がります。この審判は絶対です。この話を聞いている時が、審判の時です。
まあ、志菊さんが選ぶ方はもうわかっていますけど……それでも、審判を下してください。
ワタシからは以上です。
志菊さん、一目会った時からずっと好きです。
愛しています、志菊さん。




