引き籠りな冒険者⑥
「知らん。ってなにそれ?募集する仕事内容の確認は、ギルドの義務でしょ?」
年会費を払ってでも冒険者ギルドに所属する最大の利点は、仕事の安全性って言われている。個人で依頼を受けても本当に依頼人が、報酬を払ってくれるのかどうかは定かではないし、依頼主の身元もある程度まで確認したうえでの依頼受諾をしてくれる。そして依頼主にしても冒険者ギルドが適切だと判断するか、それ以上のギルド構成員を派遣してくれるので、目的を達してくれる確率は高くなるし、力に物を言わせ、報奨金の上乗せ要求も基本的にはない。その分依頼主もある程度の身元保証を証明しなくてはいけないし、冒険者に支払われるより少しだけ冒険者ギルドに支払われているらしい。
そんなシステムなのにギルドの幹部が、仕事の詳しい内容を知らないというのは、どういうことだろうか?職務怠慢?自分の出世の為に僕を無謀な旅に出すというのだろうか?
「とりあ、えず、ままひを・・・。」
あー、忘れてた。魔糸に流し込み続けていた麻痺魔術をやめるけど、これだけ流したら巨人でも当分動けないと思うんだけど、大丈夫かな?
「い、いきなり罠でなにしとんじゃ!!」
魔術を止めた瞬間、僕のこめかみをかすめ、なにかが、隣との薄い壁を突き抜け、ぽっかりとこぶしよりも大きな穴が開いた。
「・・・・。」
「おっと!!つい、気弾を放ってしまった・・・。」
穴を見つめる僕とそして、自ら放ってびっくりしているギル。気弾と言えば、修練者と呼ばれる素手で戦闘を行う人たちの遠距離技。いくら薄い壁とはいえ、簡単に貫通している威力。それがもし、僕の頭に直撃などしていたら今頃生きてたかな・・・。
「とりあえず、大家さんには、ギルドから謝りに行ってくださいね。」
「うむ、後で、修繕魔術使える奴に治させるから黙っておけ。」
証拠隠滅を図るのですか、治れば大家さんも文句言わないと思うけど、公のギルドとしてどうかうとおもうんだけどね。
そんなやり取りをしつつ、ギルから依頼の詳細を聞くと、どうやら冒険者ギルドのギルド長が依頼を前金で受けたらしく。ゴブリンの討伐。数種類の薬草の収集。そして調査。だったらしい。ギルもギルド長に詳細な説明を求めたが、なにも語ってもらえず、ただ、「この依頼を成功させた方を次期ギルド長候補にしようかな~。」なんていう曖昧な長の一言で文句なく受諾したらしいのだ。
曖昧な約束の為にギルは、討伐には、実績あるフィンス達のパーティーを収集にも実績あるハンブルやコイルに託したらしい。全員、すでに森に旅立ったらしい。そして残った調査を誰にさせるか、で迷った結果。占いに行き、僕に白羽の矢が立ったというわけだ。
「馬を借りて、急ぎ向かうか?ギルドで用意するが?」
「いや、確認したい事もあるし、すこし時間はかかるけど乗合馬車で向かうよ。」
「そうか、では、乗合馬車の費用は、俺に来るように一筆書こう。後、先行している奴らに情報を聞きやすいようにそれも一筆書くから出発前に俺の部屋まで来い。」
了解した事を伝えると、ギルはしぶしぶと部屋を出ていく。もちろん、僕と別れることを残念がっているわけではないだろう。その後、長期間離れることを知り合いに告げ、ギルドのギルの執務室で書類を受け取り、ギルに告げていた街の南方にある辺境の森方面への乗合馬車乗り場に向かわなかった。向かったのは、北の門である。
巨大な門が大きく開いてはいるが、その通路には、数十人の衛士達が、完全武装で立ち並んでいる。簡単に行き先と目的を聞かれ、僕は、南都の外に出た。出るときは、簡易的だけど、入るときには、もっと詳細にきかれ、早朝の開門時間などの入都者が多い時などには、その詰問や通行税の徴収のため、大行列ができるほどだ。そうやって厳重に守られた南都の周囲には、壁こそないが、さらに外街とよばれる街が広がっている。 身分書などをもたない者や流れ着いてきたもの、壁の中には用事はないが、外街の住人相手に商売をし日々の糧を得ている者たちが住みつき、門周辺に外街を形成しているのだ。
実際、南都で手に入らない物を外街で売っていたり、通行税がない分安く手に入れる為、活気は外街のほうがある。ただし、粗悪品、偽物も多い為、注意が必要なのだ。
朝、外街を出て、さらに北上する田畑に徐々に散漫となり、途中で、小道に入った。先ほどまでの石畳の歩きやすい道からうって変り、徐々に道は細くなり、そして道の先は、森の中に消えていった。
ノアは、不思議そうな表情で、まるで「どこにいくの?」といいたげな表情で、首をかしげている。この森の先には、南都で冒険者ギルドに所属希望者ならだれでも訪れる場所がある。
『死霊男爵の館』と呼ばれる不思議な館だ。ギルドに所属する為の試験として、その館の中に置かれている石版の文章を読んでくることができる実力がある事というのが、冒険者ギルド構成員の必要最低限の実力となるのだ。もちろん死霊男爵が住む館は、子供は当然ながら、戦いに不慣れな大人でも無事に探索できるような場所ではない。10人の加入希望者がいれば、数人は、生きて帰れない場所なのだ。




