引き籠りな冒険者⑤
翌日の昼には出立準備を整える終えた。正確には、大半が、娘の旅立ちの手伝いと称して、ギルが用意してくれたのだ。
ノアと名付けた。ピクシーの小さな突剣に主食らしい蜂蜜、それをノアが持ち運べる彼女サイズの水筒はもちろんのこと、僕用の食料や消耗品、そして質に入れておいても流れないから安心して質入れしていた愛用というか僕専用といっても過言ではない片刃剣まで、質から取り出してくれた。
ギル曰く、「保護者がよわっちすぎるとかわいい愛娘が大変だから。」というおかしな言動だったのは、忘れるよう努めている。
まだ一晩程度でだが、わかったことは、彼女は声を持たないようで、身振り手振りで僕に物事を伝えてくれる。僕の言う事はわかるようなので、問題はなさそうだ。後は、知識の裏付け程度しかできていない。たとえば、夜、目を開けるたびに僕の頭元付近で、座っていたり、月光を浴びたりして、寝ている雰囲気はない。
短い間だけだが、姿を隠せるのも確認できた。飛ぶことができる原理はわからないが、飛ぶ事で、疲れる事はないみたいだ。だけど、必要がなければ僕の肩あたりに座るのが、気にいっているようだ。
僕の血を媒介にした召喚をおこなったためか、召喚魔術師と召喚魔との契約と変わらないらしい。血を数滴与えることで、召喚魔術師と似たような事が出来る隷属妖魔の卵が、高価に取引されているわけだ。だけど、これだけの卵をある程度の数を作り出すには、それなりの魔力要素が必要だろう。一体どこのだれか作り出しているのかということに興味をもってしまう。
「い、いてて。ノアなんだい?」
考え込んだ僕の耳をノアは、引っ張って、昨日壊され治された扉のような家の出口を指さしている。
たぶん、行こうっていってるのだろうと思う。
「はいはい、そろそろ行きますよ。」
気が重い、占いの結果で強引に引き受けさせられた依頼だし、卵からノアが出てきたことで、ギルは成功を疑ってないけど、この依頼の終了方法があいまいなのだ。
辺境の森を調査しろ。言われれば簡単だけど、たとえば、ざっと地図を描くだけでも広いそして、目印が多そうで見つけにくい森の中。そして調査というのだからそこに生息する生き物の事までも必要だといわれると、辺境の森には、妖魔が多く生息すると言われ、狩人達も立ち入らない場所で、人があまり立ち入ってない為か、中の情報は皆無だ。その生態までも必要だったらどれくらいの期間が必要なのだろうか?森で暮らすぐらいの覚悟が必要になるかもしれない。そこらへんを出立前にギルに確認しておくべきだろう。
にしても、そんな辺境の森にフレイヤがいるとは思えないんだけどな・・・。
ドゴンッ!!
ドアノブに手をかけようとすると扉が、盛大に吹っ飛び、そして、大きな物が、扉があった場所をくぐりぬける。思わず、剣に手をやるが、相手の発した言葉を聞き、僕は警戒をゆるめるのだった。
「いとしい我が娘よ~~!!」
ギルが、両手を広げ、ベアハッグ、いや熱い抱擁でノアを包みこもうと突進してくるが、ノアは、瞬時に姿を隠す。実は、主従関係にあるためか、ぼんやりとだが、僕には見えている。だけど、パン屋のおばちゃんや井戸端会議してるおばちゃん達の髪や耳を引っ張らさせても見つかることはなかった。後は、元だけど、トップクラスの冒険者にどこまで通じるか・・・。って・・。
ギルは、姿を消して、僕の頭上天井すれすれにまで飛んだノアに向かって、手を伸ばし、ノアを捕まえた。
「見えてるの?」
嫌そうに手から抜け出そうとするノア。そのノアに頬ずりする筋肉ダルマのおっさんの図。変態図だね。と思いつつ、僕は、ギルに疑問を投げかけた。
「見えてないぞ?感じるんだ。愛娘が飛んだり、姿を隠すと微妙な魔力の流れが、残るからそれをおっているだけだよねぇ~。愛の力だ・・。あ・・・。」
愛の力らしいけど、それなのに僕の罠には気が付いていないのか、全指先から放出させ、ノアに頬ずりしているギルに絡めておいたていた魔糸に魔力を流し込んだ。
ノアをつかんでいた手の包囲網は、ゆるまり、ノアは姿を隠したまま、僕の背中に隠れ、僕の服をつかむ。変態に追われた少女さながらに震えているのが、伝わってくる。
「よ、し、腕は、落ち、てない、よ、うぅだな。」
魔糸の流し込んだ麻痺効果の魔術の為、普通の人なら動けないはずなのにギアは、とぎれとぎれでもしゃべれる事に少し驚きはするが、腕が落ちてないかどうかを試したのか、変態の血が落ち着いてのいいわけかどうかは、わからない。とりあえず、ある程度以上の実力者相手にノアの隠れるスキルは、意味がないことがわかったのは、ギルのおかげだと考えておこう。慢心はできないということだ。
「ところで、ギル。今回の仕事の依頼主って、辺境の森のなにが知りたいの?どこまで調べてきたらいいの?」
「し、知ら、ん。」
知らんって、あんたが仕事依頼を受諾したんだしそれぐらい聞いておいてくれよ・・・。




