目と目⑩
入口に戻る途中で、ハティ、スコルと合流し、そしてさらに先に薪などをもったトルクちゃんの一団とすれ違った。外に出るとゴブリンとホブゴブリンが歩哨に立っており、おばーさんと私は、そこでショーンから降りた。
「さぁて、我らは、今から保存食を作るので、忙しいからのぉ。おぉそうじゃ、繭に捕われていたいた我が眷属に代わって礼を言うぞ。後、これを受け取りに我らが村に向かっておったのじゃろ?」
おばーさんが、私につきだしたリュックには、干し肉がいっぱい入っていた。これがないと今日のハティとスコルの晩御飯がないのだ。
「あと、そうじゃな。4日後ぐらいに村にきておくれ。今回手に入った材料で宴でも催すでな。」
今回の材料・・。大芋虫に蛹にキラービー。それを食べる。大芋虫ならまだわかるけど、キラービーはさすがに食べたくないな・・。
「今回、手伝った分のお礼に丸薬代をチャラにして、さらにいいもんをやるから必ず来るのじゃぞ。くえっえっえっえ。」
いつもの奇妙な笑いを響かせながらおばーさんは、再び入口に入って行くのであった。
「さて、食糧も手に入ったし、家に帰ろうか。」
『主。我の事忘れてないか?』
「お、覚えてるわよ。目が痛いまんまで忘れるわけないじゃない。でも落ち着いてからね。じゃないと飢えたハティとスコルが、ショーンに襲いかかっちゃうわ。」
お昼の時間はとうに過ぎており、受け取ったリュックから干し肉の臭いが漂っているのだろう。ハティとスコルの口から涎が、止まらない。ショーンは、その姿をみて、先ほどよりも間合いを取っており、草を食まずに警戒しているようだ。
「ショーン。食べられたくなかったら私を乗せて家まで走ったほうがいいよ?のんびり歩いていたらお尻かじられるかもね・・・。」
「!!め゛ぇ!!」
もちろん嘘だと言ってあげたいけど、言い切れないのも事実だ。脅されたショーンは、私を乗せると家に向かってゆっくりと駆けだした。それを追う、ハティとスコル。そしてハティの頭の上にはいつの間にかにリタが、耳にしがみついていた。
「リリア、ただいまぁ~。」
いつも通り、リリアにあいさつをすると、その木陰で、お昼にする。ハティとスコルは、今日分けてもらった干し肉をおいしそうに食べているが、2匹の食欲を考えれば、冬の期間も狩りをおこなっても春まで、到底足りるわけがない。そろそろ交易商人さんが通るはずだけど、今回も食べ物と交換してもらえるかどうかまだわからないから、少し節約気味にしていかないとだめだろう。ショーンはずっと食んでいるだろうから他のみんなが食事を終えるのを見届け、私は、召喚主の本を具現化する。
「さてと・・。ハティ、スコル、リタ、ショーン。私は、魔眼と用事あるからしばらく消えるけど、遠くにいっちゃだめだからね。」
4匹とも頷くのを確認し、召喚主の本を開き、契約の間に飛ぶことにした。
「お待たせ。」
「主よ。忘れているかと思ったぞ?」
なにもないただ白い空間に私の目の高さに1本の線が浮かんでいる。いや、これが魔眼の本体で、召喚すると私の左目の奥に現れ、目を通し力を行使する。魔眼に聞かれると機嫌が悪くなるだろうが、いわば、寄生型妖魔。いまだからこそ見慣れたけど、最初は契約すら躊躇した。でも契約をしていなかったら今頃、生きていない。ただ、契約内容の最後にある項目それが、今は気になる。気になってもどうしようもないのだけど。その内容は。
「主よ。契約内容通り、進化の方針は好きにさせてもらうぞ?」
「えぇ、前に話していた私の目を糧に進化するんでしょ?」
「主よ。契約は契約だ。悪いが・・。」
「悪くないわよ。あなたのおかげで、私は、いや私たちは生き残れたとも言えるんだから。」
魔眼は、あたりの空中を泳ぎまるで考えているかのようだが、しばらくすると私の目の前で泳ぐのをやめた。
「・・・主よ。まるで死を覚悟したものの目をする。我は自由に動きたい。誰かの目を通し、世界をみるのではなく、我が目で世界を見たい。我が意思で自由に動きたい。そのためには、主の目が必要なのだ。」
「目?目だけ?文献じゃ、魔眼の進化って寄生した生き物の体を乗っ取るんじゃないの??」
そう、野生の魔眼に寄生された生物は、目の痛みを感じだし、寄生が進むにつれ徐々に体を乗っ取られ、最終的には、体すべてが魔眼の支配下に置かれる。支配下におかれた生物の意識が、どうなるのかはわからない死ぬのか、それとも自分の体の中でなにもできないだけなのか、ただ、辞書には、寄生が進み過ぎるともう元に戻せた試しがないと書かれていた。だから、魔眼が進化すると体を乗っ取られるとおもっていたんだけど、どうやら違うらしい。少し安心したけど、『主の目が必要』って?
「うむ、それも可能だが、我は、別に主になりたいわけではない。先ほども言ったが、自由に動きたいだけだ。そのために主の左目をもらう。よいかな?」
死を覚悟していたのに目だけ済む、しかも片目だけ。年頃の私からすれば、片目がなくなるのも嫌だけど、まだいいか・・。
私は、覚悟を決め、静かにうなづいた。
「主よ。決断を下した時のその透き通った青い目。それが気に入って、我は契約をしたのだ。その目をいただくぞ。後、我が名は、ナルス。それを覚えておいてほしい。」
魔眼が、まっすぐに私に飛んでくる。そしてそのまま私の左目に触れた瞬間。私は、契約の間から追い出されたのだった。




