目と目⑨
本気?をだしたショーンは早い。振り返るが、明かりの中にハティとスコルが入っていない。そこまで疲れていたわけではないと思う。このショーンの突進が早すぎるのだ。
『この婆、我の獲物を・・。』
そしてももう一つ異常がこれだ。私の左目の魔眼からの殺気が、ドルグおばーさんのしわだらけの首筋に刺さっているように思える。というか、右目は、前方を左目(魔眼)はドルグおばーさんの首筋を見ていて、気分が悪い。
(どうでもいいけど、勝手に放たないでよ。)
私の思考を読んでいるはずなのに返事もせずに「婆、婆」と私の中で言い続けていて、精神的に危ない域に入って暴走、穴のあいたおばーさんの出来上がり。では困るのだ。
「おやおや、魔眼がわしの魅力にぞっこんになってしまったようじゃの。何歳になっても罪じゃのぉ。くえっえっえっえ。」
魔眼の殺気を感じてか、振り返りもせず、おばーさんはいうが、しわくちゃ緑のゴブリンおばーさんに同族のゴブリンさえも惚れそうにないんですけど・・・。
「ほれ、つまらんこと考えとらんで、もうつくぞ?つくと同時に人に寄生し目の妖魔よ。左右に主の力を放て。正面は、わしが引き受けるからの。先ほどの激流は、押し流しただけじゃからの。」
『承知。』
「へ?まってよ。魔眼は、目だけだし、魔力も射線決めるのも私なんだけど?まるで私が付録じゃないの?」
「使役してるようで、頼り切ってるのじゃから同じようなもんじゃ。くえっえっえっえ。」
「うぐぅ・・。」
言い返せない自分がいる。リリアがいたときには、リリアに。今は、ハティとスコルそして魔眼に頼っていると言えるだろう。でも召喚術士が、召喚に頼って悪いっていうの?
『主よ。よいではないか、我は異存ないぞ?』
そりゃ魔眼は、異存ないでしょうね。集星集めがまだできそうだし、でもまるで大砲の土台扱いされた主人としては、異存だらけなのよ。
「いらんこと考えとらんでつくぞ。」
おばーさんがいうやいないや、羽化場にたどりつく。明かりの中にキラービーは、いないうえが押し流されてさらに機嫌が悪くなったのだろうか?大顎をかみ合わせる音が響いている。
「とりあえず、こっちから!!」
気に入らないけど、やるしかない。そうきめて、右に視線を向けると青い魔法陣が浮かび上がり、魔眼が力を放つ、喪失感を感じつつ、丸薬を口にほおり込み、今度は、左を振り再び魔眼が青い閃光を放つと、手に持っていた召喚主の本が、軽く振動した。以前はびっくりして、確認したが一度経験して理解しているし、そろそろだとわかっていた事だしね。
『よろこべ主!!』
「わかってる。後で!!」
私は、喜んでいる魔眼を黙らせて、前を向く、左右は魔眼で薙ぎ払ったけど、おばーさんは、前方をどうやって対処するんだろう?って思っていたけど、明かりの中にキラービーが入り込んでくる。
「っておばーさん!!なにもしてないっ、すごっ!!」
私の声の途中で、おばーさんの口元からいくつもの何かが吐きだされる。それもすごい速度で、広範囲にだ。1つの粒がキラービーの頭に当たるとボコッという小さな穴があいていく。その穴が粒が当たるごとに穴が増えていく。しばらく放射状に打ち出され続けた。
「ふぅ。こんなもんかのぉ~。」
息をついているが、そんな疲れた声色でもない。あれだけの威力をあれだけ放出したというのにどれだけの魔力量があるんだろう?
「くえっえっえっえ。精霊の力を引き出すだけじゃ、疲れることも少ないのじゃ。」
なにも言っていないのに・・・。
「それは、年を重ねた経験じゃ。欠点もあるぞ。精霊の力の源と魔法陣が必要になるからのぉ。」
おばーさんは、振り返ると私の水筒と魔法陣が刻まれた舌を出して見せてくれた。魔力量が少なく、接近戦も向いていない私が、召喚術に頼らない戦力になるかもしれない。習得できればだけど・・・。
「おばーさん、それって私にも」
「今は話はここまでじゃ。また羽化されては、困るからの。」
おばーさんは、私の言葉をさえぎるとショーンから降り、懐から大きくいびつな塊と藁を取り出すとを取り出し、カチカチと火打ちを打ち出した。飛び散った火花は、藁を燃やし、その藁をいびつな塊に押しつけると、塊から白い煙が上がり始めた。
「これは?」
「この煙は、昆虫に効く麻痺する効果があるんじゃ、もちろん昆虫系魔物であるキラービーにもきくぞ。羽化したキラービーは、この煙の中では、動けまいて。では、戻ろうかの。後は、トルクに任せればよい。」
おばーさんは、優雅に体重を感じさせない跳躍で、先ほどまでショーンに乗っていた位置に飛び乗ると勝手にショーンを出口へと促すのであった。
「おばーさん、私にも精霊魔術はできるかな?」
「どうじゃろうのぉ。人間は、森の恵みよりも自分たちの知識や世界を大事に考えるからのぉ。どこまで精霊と力を合わせられるか。それが課題だのぉ。」
できないわけではないかもしれない。私個人としての戦闘能力の上昇の一つの手段になるかもしれない。




