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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
辺境の森での日々
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目と目⑦

 私の疑問は、すぐに解消された。明かりの中に入ってきたキラービーの顔は、上下さかさまにだったのだ。そう昆虫なのだから天上でも関係なく縦横無尽に進むことができるのだから、床にいたキラービーと致命傷を負う箇所が胴軸とは限らないってことだ。相変わらず大顎をかみ合わせているのが、私には、あざけられているように思えた。

 ただ、天井を進むキラービーの速度が少し遅い、明かりでみえた羽は、片羽がなく、バランスが悪いためか、歩行も困難なようだ。


 『放つか?』  


 「少し、待って。」


 いくら歩行困難でもいずれは、ここに到着するのだから魔眼が言う通りとっとと始末すべきだが、魔眼を制し、ショーンの背にどうにか立つ。これで、片羽のキラービーの顔を真正面から見据える事が出来、この位置からなら羽化場まで魔眼の力の射線軸がとれるはずだ。


 「放て!!」


 『承知。』


 青い魔法陣そして、青い閃光が、片羽のキラービーの頭部から腹部にかけて貫通したが、私は、大量の魔力放出の倦怠感と足場の悪さからショーンの背中から踏み外し、落下した。


 「フレイヤ!!」


 ハティは、とっさに地面と私の間に入ってくれ、下敷きになり衝撃を減らしてくれる。


 「あ、ありがと・・・。」


 丸薬を噛みしめ立ち、自分とハティの怪我を確認するが、打撲はありそうだけど、裂傷などはないようだ。


 「ハティありがと。」


 「ワン。」


 一声鳴き、ハティは、ショーンの後ろに戻っていく。


 『主よ。あのタイミングは、これを狙ったのか?』


 「えぇ、一応ね。」


 私の目の前には、2撃目で倒した先頭のキラービーの死体の背に先ほどの片羽のキラービーが乗りかかり、通路をふさいだ格好になっていた。


 「少しでも時間を稼ぎたいからね。さっきは、あのキラービー以外に被害なし?」


 『1匹目、頭部貫通、死亡。2匹目、片方の脚だけになった奴の片羽を半分奪った。これで、歩行も飛ぶことすらできないだろう。それぐらいだ。』


 進歩なしといった感じかな。それでもまだ羽化場から聞こえてくる羽音はやんでいない。あらたに片羽になったキラービーだけでは、今までどおりの音量を鳴り響かすのは、難しいだろう。ということは、まだ羽化したキラービーがいるってことよね。

 考えているうちにも折り重なった2体のキラービーの死体の隙間から見える向こうに新たなキラービーが現れているが、死体が通路をふさぎ、こちらに来れないのを悔しいといわんばかりに大顎をかみ合わせている。

 まぁ、悔しいって感情があればだけどね。


 キラービーは、しばらく大顎をかみ合わせていたけど、仲間の死体に噛みつくと、ひっぱっりだし、通路に通り道を開けようとしている。


 「め゛ぇ~。」

 

 「なんにしても、時間は稼げそうね。」


 私は、ショーンの頭を撫ぜ、ポーチから水筒を出し、口をつけた。いつ飲んでも冷たく、体全体にしみわたっていく。『天の柱』のエントが言うには、私の家の前に流れる小川の水は、水の妖精(ウィンディーネ)の魔力がしみ出しており、木の妖精(ドライアド)達の成長(集星)を促進させるらしい。それ以外にも人が飲めば、少しではあるが、魔力回復効果があるかもしれないって言っていた。その真偽はわからないけど、丸薬の影響の吐き気が、治まってくれる。これだけもだいぶ助かるし、疲れた頭のもやもどこか、澄み渡っていくような気がする。


 「フレイヤ。スコル、戻ってきた。」


 ハティは、先ほどまで、心細そうにペタンと倒していた耳をピンっと立て、私にはまだ聞こえない足音を聞きている。やはり精神的に2匹で1人前なのかもしれない。


 「でも足音が重そう。」


 「槍を持ってきたからじゃないの?」


 「もっと重そう。息切れもしてる。」

  

 ハティは首を大きく左右に振って心配そうに入口のほうをみつめている。スコルの足音なのだから重そうだろうが、息切れしてようが、ハティが聞き間違えることはないだろうけど、一体何をもって戻ってきたのだろう?槍をありったけ借りてきたとか?いくら片方だけで、半人前状態でも、お使い先は、慣れ親しんだやさしいトルクちゃんだし、子供でもできそうなお使いを失敗することはないと思うのだろうけど。


 「ハティ、スコルまでどれくらい?」


 「ん~。すぐ?」


 首をかしげて、くりくりっとした瞳で私を見つめているハティは、かわいいけど。いや、聞いているのに聞き返されても困るのだけど・・。まぁ、いいか。


 「ハティ、スコルを迎えに行って、急いで連れてきて、急いでよ。」


 「わん。」

 

 一声鳴くと嬉しそうに駆けていく。が、しばらくして戻ってきたスコルは、槍を2本だけ持ち、ハティに嫌なものを渡したからか、どこか嬉しそうに駆けてくるのだが、ハティのテンションは、底辺にまで落ちていた。ハティの背におぶさった問題の荷物は、私を見ると右手を差し出しこういったのだ。


 「丸薬の代金は、高いぞ?」

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