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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
辺境の森での日々
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目と目⑦

 ランタンの明かりの中、ショーンが進んでいく。進むにつれ、響きわたる羽音は一段と大きくなるが、反響の為あいかわらず、数を計る事はできない。その羽音に気おされてなのか、元来の臆病さの為なのかショーンの速度は、一段と遅くなっていく気がする。


 「ショーン、ゆっくりすぎない?もう少し急がない?」


 「め゛ぇ~。」

 

 嫌々返事はしても速度は変わらずのろのろと進んでいった。


 『主よ。歩いて行ったほうが速かろう?』


 自分の力を解放でき、なおかつ集星できる瞬間を待ちきれない魔眼が急かすが、私は無言で却下する。片目は、闇の奥まで見え、片目は、明かりの範囲までしか見えない今の状態で、うまく歩けるかどうか疑わしいし、あわよくばショーンの集星もしておきたい。

 せっかくの召喚獣なのだから臆病なだけの羊では、今後のいざという時に対応できないままであるというのは、困るのだ。今回だけで、第二形態に進化することは無理なのはわかっているが、比較的安全な日常の狩りなどとは段違いの集星が期待できるはずだ。そういった意味では、リタも連れてきたいのだけど、武器を整備したりする彼女を見る限り、戦闘に向いているとは思えない。


 「め゛ぇ~!!」


 ショーンが、強く鳴き、足を止めた。まだ羽化場まで、距離があるはずなのに恐怖で縮みあがったわけではないと思う。恐怖で縮みあがるより、逃げだすのが、羊なのだから。何かを感じ取って立ち止ったというのが、正しい判断だろう。


 「ハティ、スコルどう?」


 「臭いはあんまりないよ?」


 「音もかわらないよ?」


 羽化したてのキラービーに遭遇したことないため、ハティやスコルにも判別できないのかもしれない。

 

 「魔眼、暴発はしないでね。」


 『承知。』


 魔眼に念押しして、前方を警戒する。が、なにも起こらない。


 「ショーン?もしかして疲れた?」


 「め゛ぇ~。」


 「・・・・焼き肉にするわよ?」


 ショーンが先ほどまでの速度より早く前進していく。こいつの教育を考えないかもしれない。ハティやスコルなら食事抜きで、躾ができたけど、ショーンは、草ならなんでも食べるからあまり効果がないだろう。せめて言っていることがわかればやりやすいんだけど、第二形態に進化させるときに魔獣系より獣人系に進化させたほうがいいかもしれない。鉄羊の獣人型は、なんだったっけ?確認しとかないとね。


 先ほどより足早に進み、進むごとに羽音は大きくなっていき、大きくなっていく音に押されるようにショーンの歩みも再び遅くなっていくが、立ち止ることなく羽化場の入口にたどりついた。


 「見える限りの蛹は減ってなさそうだから、この羽音はもっと奥の蛹が羽化したのかな?ハティ、スコル。ここで待ってってって・・・・。なに?この音・・。さっきまでなかったよね?」


 カチンカチンと激しく硬いなにを打ちつけ合うような音が聞こえてくる。羽音のように反響していから方向はわからないないが、近づいてきているように思える。ショーンもハティもスコルも前方を凝視しているのは、野生の感で前方から来ると感じているのかもしれない。


 『主は、鈍感だな。』


 「魔獣や妖獣それに寄生虫と一緒にしないで、人間なんだから。」


 『き、寄生虫!?我の事か??確かに眼球にとり憑くのが、我の性質だが、き、寄生虫では、』


 「だまって見えたわよ!!」


 闇から突如、複眼が姿を現し、徐々に頭部、腹部、脚、細かく動かし続けている羽などが、ゆっくりと姿をランタンの明かりの中に現していく。私よりも大きい黄色い蜂だ。大顎をかみ合わせ、先ほどから聞こえていたカチンカチンと音を鳴らし続けている。


 「大きいけど、幸いにもこの中じゃ、天井が低すぎて飛べないみたいって・・。」


 キラービーの全貌が見えそうなときに、さらにもう一匹が、大顎をかみ合わせながら明かりの中に入ってきた。


 「通路の中まで下がるよ。一列にして、効率よく仕留めるからね!!」


 私がいうやいなや、ショーンは振り向き、今までからは想像できないほどの速度で、走り抜ける。その速度は、短距離ながらハティやスコルでさえも凌駕しそうな勢いだ。やればできるんだ・・・。


 ショーンの背中にしがみつきながら、後方のキラービーを確認するが、すぐ闇の中に入ってしまい見えなくなっていることから、飛ばない限り、速度が遅いようだ。あの速度ならここより狭い通路での魔眼放出は、避けることはたぶん無理だろう。だけど・・・。


 通路で、待ち構える私たちを追ってか、外に出るためかは、しらないけど、キラービーが再び大顎をかみ合わせ、音を立てながら明かりの中に入ってきた。案の定、通路には2匹横に並ぶことはできず、縦列で、通路を登ってきていた。


 「ちゃんと狙ってね。」


 『承知。』


 魔眼の声が頭に響くや否や、左目の視界に青い魔法陣がきらめき、青い閃光が放たれた。先頭のキラービーの頭部から腹部を貫通し、2匹目の頭部こそ外したが、胴から腹部を見事に射抜く、それと同時に私の体は大量の魔力放出の為の倦怠感に襲われたが、即、トルクちゃんからもらった丸薬を1つ口に放り込むと噛みしめ、ただでさえ、視界が歪み気持ち悪いのに、さらに胃の中が熱く吐き気をもよおす。が、ぐっと我慢し、飲み込んだものを吐きださないようにすると倦怠感は、ましになっていく。


 『ほぉ、我は本に戻らぬともよさそうだな。では、どんどん行くか!!』


 「そんなに数はないわよ。後4発だけだから、それにもう残ってないことを祈るわ・・・。」


 「め゛ぇ~。」

 

 私の祈りを共感するようにショーンは鳴くが、1人と1匹の祈りは無駄だったようだ。羽化場の奥から羽音がまだ響いているのだから。

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