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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
辺境の森での日々
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目と目⑥

 茂みをかき分け、木々を抜けると地に穴がぽっかりと開いている。その穴の周囲にゴブリンが3匹とトルクちゃん、そしてハティとスコルが囲み、少し後ろに下がってショーンが草を食まずにでも逃げ腰になっている。

 これで、なにかが出てこようとしているということが明確になり、次の問題は、羽化したキラービーが、複数なのか少数なのかだが・・。


 急ぎ、包囲の輪に加わり穴を覗き込むが、まだキラービーが見えない。が、不気味な羽音は、洞窟から響いており、反響の影響で、単体なのか、複数なのかがわからない。


 「トルクちゃん、どうするつもり?」


 「今穴をふさげば~、別の場所に穴を掘って逃げられるだけですし~。かといって、少数が出てきてどこかに飛んで行ってくれるなら許容範囲なのですが~・・・。いっぱい出てこられると、この森の生物は、全滅ですね~。」


 ゴブリンシャーマンというゴブリンの特別種でももて余すってことね。ということは・・。

 

 『我の仕事だな。』


 「そういうことになるかもね・・・。」


 「???」


 「あ、ほら、これが例の魔眼だよ。今のは、魔眼との会話だから気にしないで。」


 魔眼の声は私にしか聞こえない。私が独り言をいったように思ったのか、不思議そうにきょとんとしたトルクちゃんに、左目を指さし、魔眼を紹介すると「あぁ~。」と大きくうなづいた。


 「トルクちゃん、さっきの丸薬あとどれくらいあるの?あれって貴重?貴重じゃないならどれくらいわけてもらえる?」


 人の世界では、魔力回復薬は、そこまで貴重ではない。私の魔力量を回復させる程度なら普通に流通しているが、ここは辺境の森。私の知る限り、ここで魔力回復薬を手に入れようと思えば、年に1個しか実らない空の柱の実だ。ドライアド達の第三段階の一つの進化である『世界樹』。その実は、魔力のみならず、致命傷ですら治すらしい。

 らしい。というだけにあって、エント達から聞いた話。貴重な実を見せてもらったこともない。ドライアド達になにかあった時ように保存されているらしい。後は、ウィンディーネからも入手できるはずだけど、今の私には彼女達と交換できるものがない。ほかに手に入れる方法がないということは、トルクちゃんのもっている丸薬も貴重なのかもしれないし、そんなに数がないかもしれないのだ。


 「後ですか~。10個ぐらいですよ~。貴重というか、材料も『ツンツン草』ほど入手しづらくはないはずです~。えっととりあえず5個ぐらいは大丈夫です~。」


 放てるのは、5回。効率よく通路に並べたらそれなりの数相手ができるかな・・・。でも視界の気持ち悪さと魔力放出しすぎた気だるさを5回連続っていうのも避けたいけど、わがままは言ってられないよね。


 『そうだぞ。主よ。わがままはいかんぞ。』


 叱咤しているようで、嬉しそうに頭に囁く魔眼。きっと、大物であるキラービーを複数打ちのめせば、5つ星にランクアップでき、第二形態に進化できると思っているのだろうな。悔しいけど、今対抗手段が、魔眼しかないのだ。頼るしかない。


 「はいはい、5発が限界なんだからね。そこは留意してね。」


 『承知。』


 「ショーン。私を背中に乗せても歩けるよね?」


 「・・・め?め゛ぇ~。」


 急に話を振ったためかびっくりしたのか、あわてて草を食むのをやめて返事をするショーン。というか、あんたこんな時にでも草を食むのか・・・。


 「じゃ、背中に乗るからゆっくりでいいから慎重に羽化場に進んで。」


 「め゛ぇぇ~。」


 嫌そうに返事したが、しぶしぶ私に近づいきてくれる。


 「ハティ、スコルは、念の為、ショーンの後ろについてきて。」


 「「わん。」」


 後方からの襲撃はなくても羽化場に入れば、左右からの挟撃の恐れもある。警戒はしておいて損はないと思う。


 「えっと~。私も付いていきますよ~?」


 私が、矢次に指示を出していくのにびっくりしたのか、大きな目をぱちぱち、瞬きをしながらトルクちゃんは、あわてて参戦を申し込んでくれる。


 「トルクちゃんは、リタとここにいて、突然リタが消えたら、私が魔力を供給できなったってことだから気絶したか、殺されたかってことだからね。」


 「えぇ~。」


 トルクちゃんは、両ほっぺに手を当てて驚くというかわいらしいしぐさのまま、硬直してしまう。ゴブリンシャーマンってこんなのんびりした性格でもやっていけるのかな?人間社会じゃ、人を襲って食らったりする人畜超有害の代表であるゴブリン達のリーダー的存在のはずなんだけど・・・。

 私は、心配しつつも固まったトルクちゃんの頭の上に悲しそうな顔をするリタを乗せ、ショーンにを手で招いた。いやそうな顔をしつつもショーンは、従い私に向かってくるが、ショーンは、死ぬようなことはない。カードに戻るだけだし、私が死んでも世界のどこかにカードとして存在し続けるというのが、この世界の定説だ。


 「ショーン。あきらめてね。」


 それでも私はショーンをなだめ、ショーンの口にランタンをくわえさせ、跨ると頭を撫ぜてやる。ショーンのおかげで、足元も気にせず、魔眼の解放だけに集中できるのだ。遅滞的前進か、突進的退却も可能なはずだ。

 私は、両脇のハティとスコルに目をやるが、声をかける必要はないだう。5歳の誕生日からの長い付き合いだし、この森に来るまでも森で生活してからも共に生きてきたのだから。


 「さて、蜂さん退治にいきますか!!」


 私たちは、ショーンの遅滞的前進に合わせ、ゆっくりと進んでいった。

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