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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
辺境の森での日々
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目と目⑤

 「あ、いえ、整備じゃなくてですね~。長ほどの精霊術師(シャーマン)なら、独力でできるのですが、私の術だと助力が必要なんです~。」


 「あ、整備じゃないの?えっと・・。」


 私は、再びリタを見たが、俄然やる気らしくまだ頷きつづけている。なら問題ないかな。私は、両手でリタをすくい上げ、トルクちゃんの手に乗せる。


 「とりあえず、どうぞ。」


 「ありがとですぅ~。じゃぁ~。いきましょうかぁ~。」


 整備でないなら羽化場に行くのかと思いきや、トルクちゃんは、入口を通り過ぎていく。


 「えっと、後学のためについていっていいかな?」


 「もちろん、ついてきても大丈夫ですよ~。」


 入口を通り過ぎ、しばらく歩いた。どこにいくのだろう?


 「ここらへんかな~?」


 トルクちゃんが立ち止ったのは、なんの変哲のない場所だ。そこの土を集め、盛りあげ、そこにリタを座らせた。


 「じゃ、おねがいねぇ~。」


 『うんうん』


 私にはわからないが2人で通じあってるのかなんなのかわかんないけど、とりあえず様子を見ていると、トルクちゃんが、両手をリタにかざし、目を閉じ、集中していくのがわかった。


 『土の眷属たるノームの力を借りて、我が願いをかなえ、地の底まで道を作れ!!』


 ゴブリン語ではなく、ノーム語だと思われる詠唱が終わるや否や、トルクちゃんの手から放出された魔力が、リタの全身にから身付くとその魔力が増強され、トルクちゃんとリタの間の地面に小石ぐらいしか落ちない小さな穴ができはじめる。穴掘りの精霊魔術っぽいけど、精霊魔術を行使するのをはじめてみたので、なんとも言えない。

 しばらくすると蟻地獄のように穴の周囲にかき出されていた土が、止まるとトルクちゃんは、額の汗をぬぐい、丸薬を口に入れてかみしめると再び詠唱し、違う場所に穴をあけては、丸薬をかみしていく。


 「これぐらい、あったら大丈夫かな~?」


 額の汗をぬぐい自分たちで開けた穴を眺めていく。


 「あの~トルクちゃん、なにしたの?」


 「ん~?穴を開けたんですよ~。」


 「それはみてわかったけど、何のために??」


 「あ~。ほら、燻すとなると煙突が必要じゃないですか、それを作ったんです~。ちょうどこの下あたりに羽化場があるんですよぉ~。」


 なるほど、燻製を作るための煙突ね。ってほんと食べる気満々なのね。


 「あ、そういえば~。フレイヤさんも魔力があまり残ってないみたいですね~。この丸薬どうぞ~。」

 

 トルクちゃんは、穴を1つ1つ確認し、後ろ手に黒い丸薬をのせて差し出してくれた。


 「これは?」


 「長特製、魔力回復薬です~。噛み砕いて、飲み込んでくださいね~。おいしいですよ~。」


 手に取り、臭ってみるが、草っぽい匂いしかしないので、思い切って、口に放り込み噛みしめたが、口の中に腐ったような独特の味が広がるが、がまんして飲み込むと、こんどは、胃の中が熱く感じ吐きだしそうになった。が、先ほどまでの魔力を喪失した特有の気だるさは消え去っている。


 「おいしいでしょ~。」


 「えぇ・・・。」


 私を見ずに穴を確認しているトルクちゃんには、私の表情を見ていなかったのだろう。能天気に聞かれて、まずいと答えられるほど私は子供ではないのだ。でもこの丸薬をおいしいって思える味覚ってことは、今から作ろうとしている燻製の味もますます疑わしい・・・。


 「よち、問題ないですね。ありが・・。」


 「「Gya!!gyo!!」」


 「ワン!!」


 トルクちゃんが確認終え、丁寧に頭を下げた瞬間、入口のほうが騒がしい。ゴブリンや、ハティやスコルさえも騒いでることを考えるとただ事ではないかもしれない。


 「あっちでなにかあったみたいですね~。戻りますか~。」


 無理して人の言葉を話しているからかその語尾を延ばされると危機感なさそうなんですけど・・・。

でも伸びた語尾を言い終わらないうちにトルクちゃんは、走り出していた。しかも早い。私もリタをすくい上げ、急いで後を追った。

 入口方面での騒ぎの時点で、トラブルは想像できる。ただ、その危険度がどのレベルかだ。

 ①大芋虫が羽化場に入ろうとして、戦闘になった。

 ②複数の大芋虫が孵化場に入ろうとして、戦闘になった。 

 ③羽化したキラービーが羽化場から出ようとしてる。

 ④複数の羽化したキラービーが羽化場から出ようとしている。

 この4つのうちどれかだろう。下に行くほど危険度が増す。というか④になると致命的だ。③までならどうにか対応できる。と思う・・・。走りながらリタをポシェットに入ってもらい、召喚主の本を出した。


 『主よ。魔力が回復したか。再び召喚するとは、嬉しいことよ。』


 左目の激痛とともにいつもの言葉が頭に響く。こっちは喜んでないってば。


 「期待しないでね。乱戦になってたら即戻すからね。それに戦闘になってるかどうかもまだわかんないから。」


 『安心せい。主が我を呼び出すときは、決まって我を必要としておるときじゃ。』


 考えが正しいって言ってくれてるんだろうけど、できれば、魔眼の力なんて必要のない程度のトラブルだったらいいんだけどね・・・。


 あと少し、で入口だといったところで、不気味な羽音が耳に聞こえてきた。 

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