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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
プロローグ
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最後の決戦。~そして悪は・・。~②

 「・・・魔法師団。広範囲魔法から個体攻撃魔法に。光魔法ならなおよし。」


 黒いマントに黒いとんがり帽子。手には捻じ曲がった杖といかにも魔法使いというスタイルの少女が、周囲の魔法兵達に淡々と命をくだした。乱戦となれば、今まで駆使してきた広範囲魔術は、味方を巻き込む恐れがある。だが、個体魔術に切り替えるとなると魔力の消費効率は極端に悪くなるものだ。


 「グルヴェイグ殿。皆魔力がつきかけております。」


 少女に向かい豊かな髭を生やした老人が、膝を折り、頭をたれて報告をする様は、はたからみれば、異常にしか見えないだろう。


 「・・・・グルちゃん。」


 「・・・・・・。」


 その膝を折っている老人に向かい、少女は、ぼそとつぶやくが、老人は頭を下げたままだ。


 「・・・・グルちゃん。」


 老人に反応がない事に一瞥もくれず、再びつぶやく。


 「ぐ、グルちゃんどの、皆、ま、魔力が、つ、つきかけております。」


 膝を折り、頭を垂れ、さらに精神的にも折れそうになりながらも老人は、少女の希望通りの呼び名で言い直すが、宮廷魔術師として長く仕えた老人には、人を『ちゃん』付けで呼ぶ言い慣れない言葉は、そのあとの報告すらも詰まらせたのは、周囲の魔法兵達にも聞きなれた事である。


 「・・・・・。『どの』いらない・・・。でも私ももうないかも・・・。『不浄なる我が敵を光を矢よ貫け。マジックアロォ~』」

 

 少女の杖の先に魔法陣が描かれ、詠唱が終わると同時に10本の光の刃が、戦場に飛び、10本の光の矢(マジック・アロー)が召喚魔達を貫いていく。貫かれた召喚魔は、断末魔と共に煙になり消えていく。


 「・・・それでもないのですか?」


 「ん、あと2回しか撃てないかも・・・。」


 「「「・・・・。」」」

 

 老人も周囲の兵も開いた口がふさがらなかった。


 光の矢(マジック・アロー)とは、光属性の単体攻撃魔法だ。 基本魔術の1つで、魔術を心得ているものなら大半は扱うが、基本なのは、光の矢(マジック・アロー)を1本だけであり、下級妖魔を1本で貫殺するほどの威力を持たすには、途方もない魔力を集約しなければならない。たしかにこの宮廷魔術師の老人の腕を持ってすれば、貫殺する威力を持たせるならば1本。数を増やすならなら5本は出せるだろう。ただ、魔術を発動させるには、落ち着いた精神状態で詠唱しなければならず、極度の精神的圧迫が多い戦場でしかも語尾を力が、抜けるような詠唱ではまず発動できないだろう。さらにその貫殺の1本か数が多いだけの5本を発動させただけでも魔力が底をつき、立っていることも難しくなるかもしれない。

 そんな無茶苦茶な魔術を先ほどまで広範囲高レベル魔術を駆使していた少女が、3回も発動できる。宮廷魔術士の老人のプライドは、木っ端微塵に砕けた。


 「・・・グルちゃん。平和になりましたら、わしを是非弟子にしてくだされ。」


 齢60を超えようが、魔術を収める者として、さらなぬ極みに立つ為なら弟子なり道を究めんと志すのは、至極当然のことだ。相手が少女であろうが、もうプライドなどは砕けているのだから。


 「・・・嫌・・・・。むさいから・・・・。」


 「!!」


 少女の一言で、砕けたプライドは、さらに砕かれ、風に吹かれどこぞに散っていった。







 爺を担いでどれくらい これ(螺旋階段) を降っただろうか?まだそこは見えてない。いくら4つ星最強のこの俺様ライドウ様でもいい加減飽きてくるぜ・・・。


 「サトウウォーリアの姐さん!敵はまだか?」


 「だれが、砂糖(サトウ )戦士(ウォーリア)よ!!サートゥルナーリアよ!!いい加減覚えなさい。」


 俺の後ろをついてくる姐さんが、俺の背中を あれ(赤いとがった靴 ) で、蹴った後で大きく息を吐(た め 息 を つ) いている。もう疲れたのか?5つ星ランクの癖に情けない。俺ならまだまだ、びしっとあれでなにできるぞ。と思うが、5つ星でもしょせん女だってことだ。


 「大地の波動で、感じる限り膨大な魔力が存在しているのは、まだまだ底のほうよ。でも不思議なことにそこまでの間にも微塵にも魔力を感じないのはなぜかしら・・・?」


 「ほぉ、全軍出さないと表での戦で敗戦すると考えたか、潜入されることがないと考えたか、後は罠かじゃの。」


 「・・・。姐さんと爺。任せた。」


 姐さんと爺の言うことは、俺にはそれだ(難しい)。もっと上下や右左やはっきりとわかりやすいように言ってほしいもんだ。


 「誰も貴方に考えることなんて、期待してなくてよ。筋肉の塊のライドウさん。」


 「おぅ、俺の筋肉がいくらかっこよくても惚れるなよ。姐さん。」


 「・・・。」

 

 しまった。ストレートにふってしまったのが、まずかったか? あれ() の駆け引きなんて俺には、できっこねぇ。姐さんが、黙ってしまったぜ。きっと俺の後ろで、あれ(失恋) のあまり泣いてるかもしれないな。俺の これ(筋肉) は罪だぜ。でもごめんよ姐さん。今の俺には、姐さんよりもあれ(強い敵) と戦いたいんだ。

 

 俺は、爺を担いで、降っていく。その間も爺と姐さんは、話をしている。


 「主、魔王とは、旧知であると伺っておりますが、どのような方なのですか?」


 「・・・。奴とは、同じ師匠の元で学んだ仲じゃ。わしの 天性の才能(ギフト)は、知っておるな?そう、わしの 天性の才能(ギフト)は、『集星増加』と呼ばれる大変珍しい 天性の才能(ギフト)じゃ。おぬしらのようにわしと契約をした召還人のランクアップを早める効果があるのじゃ。」


 またむずかしい言葉が一杯過ぎる話だ。とりあえず、爺の 天性の才能(ギフト)は俺や姐さんの 星が増える(ランクアップ)を早めるらしい。だからこそ1つ星の俺が、1人の召喚主で4つ星ランクまであがったってことか、聞く限りじゃ、3つ星から4つ星になるまで、最低、召喚主が2人の期間がいるって誰かが言ってたな。俺的には、この爺と契約してラッキーってことか。


 「魔王と呼ばれる奴の 天性の才能(ギフト)はもっと珍しく文献上初めて出現した『改造カスタマイズ』と呼ばれるものでな。召喚したもの能力を契約時に好きに改造できるという代物じゃ。」


 ブンケン? ぶんぶんと振り回す剣のことか? 

 カイゾウ? かゆがってる珍獣象のことか?

わからねぇ・・・・。


 「辺境で、改造カスタマイズにより改造限界の召喚研究をしていたことは、風の噂でしっておったのじゃが、まさかこれだけの召喚魔を扱うようになるとはのぉ・・・。」


 「主、改造カスタマイズは、召喚主にも有効だったのですか?」


 「いや、わしの知っておる限りでは、召喚したものの力や知能を良くするか、『鷹目』や『操炎』といった 天性の才能(ギフト)をつける程度だったんじゃが、もう100年も前のことだしのぉ・・・。」


 100年?爺、爺だと思ってたが、いったい何歳まで生きるんだ?普通70とか限界じゃないのかよ?と思ったが、口には出さなでおいたぜ。姐さんに「話の腰折るな」って蹴られるのが目に見えてるからな。


 ところで 話に『腰』があるのか?骨折ったら大変だけど、どこにあるだろ?


 「爺、姐さん、それは終わりだ。あれだぜ。」


 「『それ』とか『あれ』ってなによ!!」


 また姐さんが俺の背中を蹴っているが気にもならない。それどころか、赤い先のとがった靴で蹴られるのは、なんとなく気持ちいような気がするしな。

 それ(難しい話)は終わってもらわないとな。あれ(螺旋階段)の先が見えてるのだから。


この先におれの これ() で楽しませてくれる あれ(相手) がいることを あれ(期待) してるぜ。にしても これ(言葉) は あれだ(難しい) な・・・。

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