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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
辺境の森での日々
19/38

目と目①

 結局、その日に食糧が届くことはなくいつも以上にうるさい朝を迎えることになった。


 「フレイヤ、起きる。」


 「フレイヤ、起きる。」


 「め゛ぇ~。」


 「フレイヤ、起きない。」


 「め゛ぇ~。」


 「フレイヤ、起きない。」


 「羊邪魔。」


 「め゛ぇ~。」


 「羊邪魔。」


 「あなたたち全部がうるさいわよ!!」


 起き上がると左右にハティとスコルが、足元からショーンがのぞきこんでいる。ハティとスコルはおなかがすいたんだろうけど、ショーンあなたは自分で外に出て、草を食めばいいんじゃないのかしら・・・。

 

 「あれ・・・・?リタは?」


 ノームのリタが見当たらない。小さいから身をとしているだけならいいけど、誰かの下敷きになってでもいたら、即カード戻りになるだろう。


 「小さいの、「め゛ぇ~。」あっちの部屋。」


 「小さいの、あっちの「め゛ぇ~。」部屋。」


 ハティとスコルがショーンを睨むが、昨日の模擬戦までとはうって違い、ショーンは、気にもせずに能天気に鳴き続けている。昨日の模擬戦の結果で、自分のほうが強いと勘違いしてしまったのかもしれない。たしかに打撃系の攻撃は、無効でもハティとスコルは、ナイフが基本だし、それを棒の先にくくりつけて、鉄羊を狩ったこともある。それをショーンが知ったら、きっと臆病になるんだろうな。


 私は、寝室から出るとそこには、手入れされた革鎧があった。手に入れてから2年。一度も手入れしてなかったから大変だったのだろうか、革鎧にもたれリタは眠っている。私は、そっと彼女をすくい上げ、藁の上に横たえる。


 「ありがとう、リタ。おやすみ。」


 玄関からショーンを出し、ついでに見回すが、何もなく。深夜にゴブリンが約束の干し肉を持ってきているかなって思ってたけど、なにかあったのかな・・・・。


 「フレイヤ、ご飯。」


 「フレイヤ、お腹すいた。」


 「あっ、はいはい。」


 ハティとスコルが、私のズボンのすそを引っ張っりせかしてくるので、先に彼らに干し肉を出し、自分は、果物をかじる。


 「ハティ、スコル。今日は、ドルグおばーさんのところにいくよ。」


 「なんで?」


 「おつかいない。」


 「おつかいは、ないけど今日行かないと明日のあなたたちのご飯がなくなっちゃうよ?」


 「・・・・。」


 「・・・・・。」


 少し考えて、急にご飯を口に詰め込んだ彼らは、いそいそと立ち上がると胴巻き鎧を私のそばに持ってきた。


 「ん?(もぐもぐ)なに?」


 「フレイヤ急ぐ。」


 「フレイヤ急ぐ。」


 どうややら、ご飯がなくなる事に焦っているようだ。食べること以外にももう少し頭を使ってほしいんだけどな・・・・。 


 出発準備が整う頃には、リタが起き上がった。


 「あ、リタおはよぉ~。手入れありがとぉ~~。」


 私が指先で頭をなでるとうれしそうにはにかみながら静かにうなづいてくれる。なんていい子なんだ・・。見習ってほしいとほんと思うよ・・・。

 リタが、ショーンの頭の上に飛び乗り、角を両手でつかむと私たちはすぐに出発になった。

 先頭を急ぎ足で進み、ときおり振り返り、ときおり草を食むショーンをせかすハティにスコル。

 そりゃ私やリタやショーンからすれば、肉食じゃないのだから危機感が薄いよね。でもゴブリンの事が心配だ。ただ、肉を運ぶのを忘れている程度ならいんだけど・・・。

 せかされてもショーンの速度は変わらず、3時間たってもまだ半分ほどだった。この速度で歩かれるとドルグおばーさんのところに行くだけでも1日かかりそうだしこれからは、移動のときには、ショーンはお留守番がいいかもしれない・・・。


 そんな事を考えている矢先に先頭を行くハティとスコルの耳がピン!!と前方に向けられ、鼻を周囲にひくひくしだした。


 「ハティ、スコルどうしたの?」

 

 「血の臭い。」


 「血の臭い。」

 

 木々で視界が通らないのは、森の中だから仕方ががないが、ハティとスコルの鼻と耳は、そんな状況下でも便利だな。でも獲物の臭いでもなく、よだれもたらさず、目には警戒色しかない。これは危険かも・・。


 「ハティ、スコル、警戒しながらゆっくりすすんで。リタは、私のポーチに入って、顔出しててもいいけど戦闘になったらもぐりこんでね。ショーンは、私の後ろね。草、食まないできちんと警戒しておいて。」


 矢次に指示し、召喚主の本を呼び出した。魔眼を出すか出さないか悩むつつ、召喚する。オークの事もあるし、念には念をだ。


 『主、めずらしいな。』


 左目の激痛を少しでも紛らわすため手で目を抑えるが、治るわけもない。


 「じゃ、戻そうか?」


 『主、も、もうすぐ進化できそうなのだ。そ、そんなつれない事をいわないでくれ。』


 初めて魔眼が焦るところを聞いたかもしれない。契約内容に『進化方針は自由に選ばせる』ってあるぐらいだから魔眼としては、進化したいのだろうし、進化が可能になる5つ星まであと少しと本人が自覚しているのだからチャンスは逃したくないんだろうな。


 「とりあえず、状況しだいだからなにもしなくても怒らないでね。」


 『問題ない。で、できれば我が力を使ってほしいものだが・・・。』


 できれば、ショーンの実戦での動きを確認したいけど、もし相手が、打撃系じゃなかった場合で、ハティとスコルの手を焼くならば、って感じかな・・・。


 「行くよっっと。」


 ハティとスコルは小さくうなづき、ショーンの頭の上から私のポーチに飛び乗ると器用に隙間から顔だけ出している。ただ、ショーンは相変わらず草を食んでいた。こいつ食べ続けないと餓死するとか?いや召喚魔に死という言葉はないからただの食いしん坊かもしれない・・・。 

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