しつじとひつじと私④
「えっ!?それって・・・。昨日トルクちゃんからもらったカードじゃ!?この冬越える食料かえなくなったらどうするの!!」
まさかまさかの爺の行動だった。いくら雪が少ないこの辺境の森とはいえ、野生の動物は、活動が減り狩りづらくなるし、魔獣は、飢えから凶暴になりやすく、森の中を行動するのは避けたい。さらに毎年、お駄賃でもらってたゴブリン達からの干し肉は、今回少ないって言っていた。さらにこの森の木々は、ドライアドの眷属ばかりで、あまり伐採するのは好まれないことから、薪が大量に必要になる冬には買わないとたりないのだ。今ある資金で、10日後の始冬の日といわれる冬季の第1週目に毎回この辺境の森のすぐそばを通る交易商人さんから買って、冬の期間の食料や薪を確保しないと死活問題になるだろう。
「さすがは、お嬢様でござ、います。鉄羊との契約をいとも簡単におすませになると、この爺、お嬢様のご成長を心からお祝いいたし「もう世辞はいいから!!」ま、はい。」
珍しく爺の目が少し泳いでいたように思えるが、世辞より今後どうするかである。爺の言葉をさえぎり私は、爺に詰め寄った。
「で、爺。その自慢のポケットから備蓄がいっぱい出るのでしょうね?」
「はい。いいえお嬢様。まことに残念ながら、爺のポケットの中には、『青猿』のカードと帝国金貨3枚ぐらいでござ、ます。」
「まって、爺。その青猿も帝国金貨も昨日の夜の掃除で見つけたの?」
「はい、ポーチの隅に入って「それは私の!!返して!!」どうぞ、お嬢様。」
この爺、もしかして実家でもこういう行動してたのかしら・・。
「他には?なんかないの??ちょっとそこで跳ねてみてくれる?」
私の気迫に押されたのか、爺は1歩下がるとポケットから手のひらサイズの黒い石を取り出す。実家の暖炉にあった石似ているようにもおもえるけど・・。
「これがありますと薪など不要でござ、ます。多少の魔力で、長時間使えますので、大変便利でござ、ます。」
私は、爺からそれを奪うように取り、くるりと裏返すとそこには『剣と天秤』をかたどった法と秩序の女神の聖印が刻まれている。
「爺、これはどこで見つけたのかしら?」
「それは、お嬢様、ご実家の暖炉の煤を取ろうと思いまして、掃除しようとした時にみつけたのでござ、ます。」
「へぇ・・・。10年くらい前?」
「良くご存知で、さすがは、お嬢様。」
「暖炉の魔炎石が無くなったって大騒ぎになってたのが、10年位前で、信者じゃない私は疑われた1人だから覚えているのよ・・。」
「・・・・・・。」
「ほかには?」
「えっと、このノームが、お嬢様と契約をしたいと・・・。」
「爺、ノームの言葉わかるの!?」
「執事たるものそれぐ「ありがともういいわ。」はい。」
爺の手のひらに乗せられたノームに手を出すとノームも手を出して、手と手が合わさった。そして再び視界が暗転とした。
別にモンスターカードからでもなくても契約は行える。お互いがその意思さえあればいいのだ。精霊と契約をするときは、こうやることのほうが多いのではないだろうか?多くの精霊は、無闇に人を襲わない為、カードをドロップさせる確立もうんと減る。そのため、精霊のモンスターカード自体が電話っていないためだ。
先ほどは、暗闇だったのに対し、今度は、周囲が茶色な様子なのは、土の精霊との契約の場だからだろうか?リリアの時は、草茂る草原だった事を考えると、土の洞窟のようなかんじだ。しばらく待つと、私の目の地面が小さく盛り上がり、割れた。その中にいたのは、あの金髪のノームだ。
「アナタ、ワタシタスケタ。ワタシ、アナタタスケル。」
「やっとお話できたね。でもいい?あなたは故郷に帰りたくないの?」
「ワタシ、コキョウハ、モウナイカラ・・。」
ノームの小さな目が潤んでくる。故郷がない、あの狼に全部食べられた?いや、野生動物が、無駄に狩りはしないだろうし、魔獣や妖魔による対立かな?とりあえず、これ以上は聞き出せないかな。
「そっか、私は、あんまりリリアから、あ、あの家の横の木の子ね?離れないって約束したから、一緒にここを故郷にしてくれる?」
無言で頷くノーム。頷くと同時に契約書が浮かび上がる
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契約その① カードに戻さないでください。
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「えっ!?これだけでいいの?」
私の言葉に頷くノーム。妖精だから血印はいらないのは、わかってるけど、リリアのときは、もう少し項目が多かったような・・・。羊といい、この子といい、欲がないのか、なんのか・・。まぁ、いいか。
「うん、大丈夫だよ。約束は守るから契約してくれる?」
3度目の頷きと共に契約書の文字が消え、私の目の前に召喚妖のステータスカードが現れる。
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名前:リタ
カード名:土の妖精
種族:ノーム(鉄)・♀・1歳
召喚主:フレイヤ
Lv:★★
攻撃力:★
防御力:★
速度:★
知能:★
スキル:武具修復・・・新品同様に手入れする
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レベルは2つ星なのに、ステータスが全部1つ星ってことは非戦闘向きっぽかな。あ、スキルもってくれてるんだ。微妙だけど、武具の新調するお金ないからその分節約できるか。
って女の子なのね・・・。違いがわからないわ・・・。
「よろしくね。リタ。」
「オネガイシマス。」
光が徐々に強くなり、私の視界を埋め尽くした。収まるとやはり現実だ。
ハティとスコルが爺が座っていた切り株に座り込み羊を涎を流し眺め、少し離れ、羊が草を食んでいるが、どこか視線は、ハティとスコルを警戒しているような気がする。
「ただいま。って爺は?」
そう爺がいない。お茶を飲んで待っていてもよさそうだけど?
「爺、帰った。」
「爺、帰った。」
「あの盗人執事!!逃げやがったな!!」
小屋からかなり離れた小鳥さえずる森。そこにリンク家の執事は突然立ち止まり、指を鳴らす。突如として2つの影がその場に現れた。それに驚き、飛び立つ小鳥達。鳥にいることすら気がつかせない程に気配を隠せるということだろうか。ただ、爺は驚きもせず、フレイヤに見せていた温和な好々爺的な雰囲気から一変していた。ハティやスコルがこの爺をみれば、背を地につけ、腹をだし降参のしるしをあらわすのではないだろうか。
「長。この森に放たれたオークの数は30。うち18は死亡。残り12は集団で現在地より南に1日の距離にいます。」
「そうか、では、その12匹は、随時見張れ、そして、お嬢様に近づく前には消せ。まだお嬢様には荷が重い。」
「はっ!!」
1つの影が爺の命令で、再び消えた。
「長。オークを放ったのは、帝国南領領主という事がわかりましたが、意図はまだ不明です。」
「意図をかならず探り出せ。」
「はっ!!」
1つの影が爺の命令で、残るのは爺だけだ。
「さて、帝国南領領主は言えば、第3王子でござるな。オークを放ってなにをしたいのやら。一度リンク殿にも報告するでござる。」
爺の口調は、東方なまりがで出てしまうが、1人なのだから言い直す必要など無かった。爺も突如消える。いや、目で追うのが難しいほどの速度で走り出した。都まで、馬車で半年も掛かる距離を爺は、自分の足だけで5日もあれば到着するのだから彼にとっては、この大陸は狭いのかもしれない。




