しつじとひつじと私③
魔法陣からまず、4本足が出現した。
私の天性の才能を考えれば、カードの中に入れたというだけで、悪魔や人ではないのはわかっているけど、魔獣なのか、妖魔なのかわからない。焦らず、観察しよう。まだまだ契約開始まで時間があるはずだ。
次に出てきたのは、脛毛というべきだろうか、すごいちぢれた毛が、足に密集して肌が見えてない。白いからまだ許せるが、これが黒でおっさん顔の主だったら、契約しないでカードを消失させるようとおもう。
さらに出てきたのは、下っ腹かな?とりあえず、4つ足主ということは、確定っぽい。けど、腹まで毛むくじゃらなのだからきっと魔獣かな?でも上半身は人、下半身は馬のケンタウロスの例もあるからまだわかんない。ケンタウロス族は、勇猛果敢で、知性もプライドも高いから契約内容は難しいだろうな・・。
さらに魔法陣は、浮かび上がり胴?が出てきた。なんか丸くない?今のところ、樽を縦に割って、4本足をつけて、白い剛毛でくるむといった感じ。
そしてさらに上がり、胴体全体が見えた。って本当に丸い。樽だ。樽。
そして一気に魔法陣はラストスパートの如く、迫上がり、消えた。残されたのは。
「め゛ぇ~」
白い毛におおわれた樽体型の4本足の魔獣型。顔には毛がなく、どこかおびえているような目。羊が大きくなった感じだ。そして羊と違うのは、渦巻状に巻いた角が、鋼色ってことだろう。
毛は、羊よりも硬く、肉の臭みも強いため、あまり牧場などでは見かけないが、狼や魔獣が多い牧場では、家畜自身に身を守らせる為、羊の変わりに飼う事もある。その名は、『鉄羊』だ。
「・・・・・・。」
「め゛ぇ~・・・・。」
これと契約して役に立つのか?爺よ。
「め゛ぇ~め゛ぇ~」
「とりあえず、契約する?」
「め゛ぇ~」
鉄羊が鳴くと羊と私の間に契約書が浮かび上がった。
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契約その① 私を食べないでください。
契約その② 私の毛を刈るなら初夏にしてください。風邪をひきます。
契約その③ 私は、放牧がいいです。
契約その④ 私は、雄なので、乳はでません。期待しないでください。
以上4項目を守ってくださるなら血印を私の額にお願いします。
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「って・・・。こんな契約でいいの!?」
「め゛ぇ~」
あまりにも低レベルな契約内容にびっくりした。子狼と同レベルの契約内容だ。
その①の『食べないでください。』って契約したら死なないから、解体して肉にできないし・・。
その②の『毛を刈るなら』って刈り方わかんないですから・・・。
その③の『放牧がいい』って言うのは、契約をしたら随時外にだしておけってことかな。犬2匹と羊1匹がいつもそばにいるって牧場でも始めろって言うのかな?
その④の『乳はでません』これがすこし問題かもしれない。毎朝新鮮な乳が飲めないのにメスじゃないのか・・。
ため息がでる。もう少し、もう少しだけでいいからお前のこれからの人生いや、羊生に関わることだから慎重な契約内容でいいんじゃないのかい?と聞きたくなるが・・・。
私は、右手の親指の腹を噛み切り、鉄羊の額に押し付けた。
「め゛ぇ~」
「はいはい、よろしくね。」
使い道にも頭脳的にも心配な召喚魔獣が増えたな・・・。
契約書の文字が消えると私の目の前に召喚獣のステータスカードが現れる。
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名前:
カード名:鉄の角持つ羊
種族:鉄羊族・♂・3歳
召喚主:フレイヤ
Lv:★
攻撃力:★★
防御力:★★★
速度:★
知能:★
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人のステータスカードとは違い、細かい数値にはならないし、5つの星がMAXとなる。ただ、たとえば、コボルト族と鉄羊族の召喚魔・獣がいたとして、星の数が一緒でも同じ数値とは限らない。その種族の最高値のなかでの星の数なのだから、速度が同じ星数でも走ってみたらウサギと亀並みに違うこともあるのだ。カードの外に出てからハティとスコルと訓練させて様子をみるしかないだろう。
「め゛ぇ~」
魔獣だから人語も話せないし、鉄羊語があるかどうかは知らないけれど、召喚獣として契約しても「め゛ぇ~」は「め゛ぇ~」としかわからないみたい。これは、ハティとスコルも召喚獣『魔狼』の時も同じだったから、この鉄羊も第2段階に進化しないと無理なのだと思う。細かい情報をやり取りできないのは、面倒な事も多いけど、こっちの言うことは理解してるはずだからよしとしよう。
「め゛ぇ~」
鉄羊が何かいいたげなように私に擦り寄ってくるのは、なついてるのかな。あ!!名前か!!
「名前だね。名前っと・・。」
「め゛ぇ~」
若干頷いているように鳴いてるから名前をつけろといいたげなのかな?
「うんと、なんとなく『ショーン』でいいや。よろしくねショーン。」
「め゛ぇ~」
ショーンが頷くと強い光が視界をさえぎり、収まるとそこには、切り株でティーカップを優雅に傾けている爺と足を押さえながら片足でたってるハティと爺の足元で気絶しているスコルがいる。カードの外に出たみたい。
「お帰りなさいでござ、ます。お嬢様。無事契約終了おめでとうござ、います。」
「ただいま、爺。」
私の横には、ショーンが立っていや、草を食んでいる。はたから見ると羊を放牧する羊飼いかもしれない。が、ショーンの頭上には、召喚獣である証の小さな『青い逆三角形』が浮かんでいるので、契約無事完了した事を示していた。
「爺、ありがとうね。鉄羊カードといえども高価だったでしょ?」
「いえいえ、お嬢様が喜んでいただけるならば、爺はうれしくおもうでござ、ます。昨晩、お嬢様方が寝てから家を掃除しておりますと、お嬢様のポーチからモンスターカードを見つけたのでござ、ます。」
「えっ!?それって・・・。昨日トルクちゃんからもらったカードじゃ!?この冬越える食料かえなくなったらどうするの!!」
まさか、あのカードだったとは、後『青猿』のカードだけで、今年の冬を越えるだけの食料かえるのかな・・・。もし、買えなかったら・・・・。ショーンを・・・・。って食べれないのか。はぁ・・・・。
私の視線など気にもせず、ショーンは、草を食んでいる。




