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英雄のご子孫ご一行(仮)  作者: 赤月
辺境の森での日々
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しつじとひつじと私①

 ゴブリンの集落から帰る途中で、しいの実などを拾っていたため、少しあたりが暗くなってしまった。が、ハティとスコルの方向感覚は、狂う事無く、家に向かって行ってくれるのはありがたい。

 

 「ただいま、リリア。」


 「ただいま。」


 「ただいま。」


 私達は、家の横に生える木に口々に挨拶すると家の中に入っていき、私は、ポーチの中から白い石を取り出し、数回布でこすると何と不思議、本が読めるぐらいの光を放ちだした。

 発光石と呼ばれるなぜか光る石だ。便利な分高価ではあるが、以前、ゴブリン達との交換で手に入れたものだ。


 「さてと晩御飯でも・・・・え?」

 

 私が足元をみるとハティとスコルが、背を床につけ、お腹を見せて尻尾をふっていた。


 「ハティ、スコルなにしてるの?・・・・・。」


 私が、ハティとスコルに触れようとしたときだった。急に靴が、見えたかと思い、顔を上げるとそこには、うっすらとした明りの中、静かに顔が浮かび上がる。


 「きゃっ!?」


 私は、驚きつつも腰の短剣に手をかけ抜こうとするが、手が、私の右腕に添えられ、短剣を引き抜くことができない。私の腕を押さえるためにさっきよりも近くなった顔を狙い左肘を振りぬくが、相手は後ろに一歩下がり、肘は空を切った。間合いが取れたことにより、少し冷静になれた私は、浮かび上がった顔を思い出すのであった。


 「爺!!人が悪い!!人の家に勝手に上がりこんで、気配を消すとは。」


 「ほっほっほっほ。執事たるもの主の部屋に入る権限は得ておるでござ、ます。」


 実家の執事の爺だ。ハティやスコルに戦い方を教え、その気配の消し方は、ハティやスコルの鼻や耳すら欺く、白い口髭に白い髪を綺麗に整え、黒い給仕服を皺ひとつなく着ている。口調の語尾以外は、完璧にこなす執事だ。

 爺が、指を鳴らすとどういう仕掛けを施したかわからないけど、囲炉裏に火が灯り、家の中を照らしだすと、そこには、シチュー・白いパン・チーズ・そして大きな魚の香草焼と豪華な食事が並べられ、その横には、ウサギの丸焼きが2つおかれており、私が料理に目をやっている間に移動したのか、椅子といっても木箱だけど、その後ろに爺が立ち、私に席をつくのを促していた。


 「はぁ・・・。爺には勝てないわ。」


 「ほっほっほっほ。爺はお嬢様の執事でござ、ますので、勝つ必要などござ、いません。」


 私が席に着くと、器用に木箱の椅子を押してくれる。


 「あ、この子忘れてた・・・。」


 私がポーチを外し、ノームをそっと手を出すと私には、この2日で慣れてくれたのか、それとも純粋な土の餌付け効果なのか、逃げもせずに手に乗ってくれ、テーブルにそっとおろした。


 「ほぉ、ノームでござ、ますな。ふむ。」


 爺は、再び指を鳴らし、ポケットから白いハンカチを取り出し、テーブルの開いている場所に広げ、また、指を鳴らす。そして、ハンカチを引くと、そこには、ノームにちょうど良いサイズの可愛い机と椅子が現れ、さらに机の上のお皿には、茶色いかけらがおかれている。


 「・・・・。爺。あなた出来ない事ないでしょ?」


 「執事は、万能でなければ務まらぬでござ、ます。」


 「どこで、手に入れてきたの?ここには、パンもチーズも無かったはずだけど・・。」


 「ささ、冷めぬうちにお召し上がりください。」


 爺は、意味ありげな頬笑みを浮かべ、果汁ジュースを注いでくれた。




 「さすが爺ね。完璧で完敗だわ。」


 満足げに微笑む爺は、この家に無かったはずの紅茶を注ぐ、ハティとスコルは、満足げにお腹を丸出しに寝ており、いつの間に仲良くなったのか、ハティのお腹の上で、ノームが大の字で寝ている。


 「で、爺、今回は何のようなの?」


 「はい、お嬢様の御顔を拝見しにきたのと後、いくつかござ、いますが、まずは、リンク様よりこちらを。」


 爺がポケットから取り出したのは、白い包装に赤いリボン、メッセージカードが挟まっていた。


 『18回目のおめでとう。』


 几帳面なほど字体を崩さない文字で、ただそれだけ書かれたお養父様からの手紙。そしてリボンを開くと、銀のチェーンとその先のペンダントトップは、小さな鳥かごだそしてその鳥かごの中に小さな丸い石。ただその石は、ダイヤでもアメジストでもないそれは、色が揺らめき、青や赤や黄と様々な色に変化していく。不思議な石だ。


 「この石・・・って?」


 「さぁ?私は存じあげません。18歳のお誕生日まで、後少しですな。」


 そういうと含み笑いをしている爺は、きっとこの石を知っているのだろうけど、教えてくれないのは、もうわかってるので、食い下がらないでおこう。


 「さて、爺の用事も終わらせますかな。失礼いたします。」


 爺は、そっと伸ばした指を私の額に当て、詠唱する。


 『汝のすべてを示せ。』


 額のあたりで、青い光が灯ると爺の指先には1枚のカードが挟まれていた。

ステータスカードと呼ばれる、人の技能などを表すカードだ。名前や所属まで表記されるので、身分証明などにも使え、詐称はできないといわれている。ただ、だれもが、取り出せるわけではなく、それなりの要職に就く人でなければ使えないはずなのに、爺はあっさりと使いこなしている。もちろん理由は「執事たるものできるでござ、ます。」といわれるだけので、ここは、突っ込まないでおこう。

 

 「あまり成長されておりませんな。鍛錬や学習を怠っておられてますな。」


 爺は、私のステータスカードを眺め、まるで厳しい家庭教師が、出来の悪い生徒を見るがごとく私に鋭い視線を投げかけた。

 確かに、前回爺が来たのは、6か月前。それから鍛錬や学習などは一切してない。理由は簡単。森で生きていくのにそんな時間の余裕からないからとしか言いようがないだろう。

 でもいいわけは、無駄。いつも言い訳しても怒られるだけなら次回は、黙っておこうときめていたのだ。


 「まぁ、明日の夕方まで、爺はここにいますので、明日は、たっぷりと鍛錬でございますな。」


 「えぇ~~~!!」


 爺の鍛錬・・・・。明日は地獄だ・・。

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