小鳥と森
今回は、ほのぼの系のお話かな?
あの日、家に帰ってからも、消えない思いがある。
いつものように、庭から見える夕陽を眺めながら、ユウはずっと考えていた。
『どうして私には、魂戻しの力があるんだろう……?』
偶然な訳はないだろう。偶然で出来る事ではないのだ。
「私は誰なの……?」
ユウ、これは私が名乗って来た名前。先生がつけてくれた筈の名前。
戦の中、道端に捨てられていた私達二人を拾った先生が、私達を育ててくれた。
だから自分達も先生と同じ道を選んだのだ。
「私は…何で……捨てられたの……?」
わからない。
わからない事ばかりなのだ。
でも一つだけ、確かな物がある。先生が何かを確実に隠しているという事。それもおそらく、自分達に関する何かで。
本当は真実を知るのが怖い。でも何も知らないのは、もっと恐い。
夕日が沈んでいく。ゆっくりと優しい色で、町を染めていく。
「何で隠さなきゃいけないの……?」
◆◆◆◆◆
次の日、ユウ達は久しぶりに休暇が取れた。
すっかり塞ぎ込んでしまったユウは、久しぶりに秘密の森に行く事にした。
勿論、先生とユキには、ピクニックに一人で行きたいと言った。かなり難色の気配だったが、必死にお願いして暗くなる前まで、という条件で許しをもらった。
「いいですか、くれぐれも気を付けて行くんですよ、最近、不信人物が出ているらしいので、くれぐれも早めに帰ってくるように」
と言われたので、ユウも早く帰るつもりではいる。
「行ってきます」
ユウの住んでいる近くには、大きな森がある。美しい葉を広げた巨木達は、ユウを温かく迎え入れてくれる。
――ユウ、いらっしゃい……
――久しぶり……
――何かあった?……
――ユウ、さあ、奥へ……
沢山の声に誘われ、ユウは森を進んでいく。木々からこぼれる光が、キラキラしていて、とても綺麗だ。
――ユウ、こっち……
また声がした。ユウの前に、先程まで無かった道が現れた。
通称、迷いの森。
地元の人はこう呼ぶ。入ったら最後、森の気まぐれでも起きない限り、生きては出れないとされている森である。
だが、ユウは迷わない。
何故なら、森に認められた人物だからだ。森は人を選ぶ。ユウは森に選ばれた特別な少女なのだ。
「わあぁぁ!!……綺麗に咲いたね!」
嬉しそうに笑ったユウに、森の木々が次々と声をかけてくれる。
――今年は雨が程よく降ったからね……
――綺麗でしょ?……
――ユウが笑ったよ!……
皆は嬉しそうだ。梢をなびかせて、ユウに語りかけてくる。
ユウの目の前には、白い大輪の花を咲かせた花が一面に咲き誇っていた。
花の名は、うつつゆめじろ。
白く透けるような花びらを持ち、背丈はユウの半分程。
――ユウ、元気、出た?……
小さな声だ。それは多分、まだ小さい木から。
儚いその声に、ユウは微笑みを浮かべた。
「うん、ありがとう」
やっぱり木々達には、ばれていたらしい。そう思うと嬉しくて、嬉しくて涙がこぼれた。一人で抱えるには大き過ぎる悩みだったから。
――ユウ、貴方の悩みは、もうすぐ解決するわ……
「えっ?」
唐突な言葉と共に、木々達の騒めきが聞こえてきた。
――侵入者だ……
――ユウを守らなきゃ……
――こいつらを森の外へ……
口々に木々達が騒ぎ始める。ユウがここへ来て、こんな事は初めてだった。
――ユウ、森の外へ……
――この道を通って……
――絶対に守るからね……
「ありがとう……皆、大好き」
礼を言って、ユウは皆が示す方へと足を向けた。
――こいつら中に入って来る……
――すぐにここを隠すよ……
どうやら迷いの森へ入る、とんでもないバカがいたらしい。それも木々達のまやかしも、全く効いていないらしい。
焦ったような声が、あちらこちらから聞こえてくる。
「大丈夫?」
不安になって問い掛けるが、木々達はただ騒めくだけだ。
――ユウ、しばらくここへ来ては駄目……
――ここは危険……
――いいね?……
「えっ!?………わかったわ」
迷惑はかけられない。皆のように、活躍できる力も、知恵も中途半端なのだから。
そのままユウは森を後にした。
どうも、地味に不運な秋月です(泣)
ユウちゃんも不運な星の下に生まれた少女ですが、秋月もみたいです……。
この前、見事に階段を踏み外し、捻挫しました(泣) 今もアザになっていて、地味に痛いです……。えっ?病院?何のコト? 秋月は病院が嫌いなのですよ……嘘です。近所に無いだけです(笑)
皆さんも、気を付けてくださいね!!
さて、次回はユウちゃんが重要な人物に出逢います。お楽しみに!
感想、お待ちしております。なお、誤字脱字がありましたら、教えて下さいませm(__)m