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星空が願う未来、黒き器

お待たせ致しましたm(_ _)m

ようやく、書き上げました。いやはや、今回は台詞に悩んでしまいました。

今後もシリアスシーン続きますが、どうぞ、お付き合い下さいませ。



「星はね、姫、ーーーーー彼を助ける事を、願っているの」


優しい藤花姫の言葉は、不安感の上に立っているかのような私には、希望にも思える言葉であったのだ。・・・・・すがりたい、と思ってしまう程に。


「だからね? 姫の持つ神器で、彼を浄化して、解放してあげて?」


「えっ・・・? そうすれば、助けられるのですか・・・?」


思ったよりも、ずっと簡単に思える言葉に、驚いてしまう。浄化ならば、弓の華樹だろうか。


「そうよ、今のうちに早く、もう、時間が無いみたいだから」


促されて見た先には、未だに虚空へ視線を向けたまま、ぼんやりと何かを呟いている、先生の姿・・・。しかし、最初に見た時よりも、僅かに黒い部分が増えたように思う。時間がない、というのは、本当なのだろう。


「お願い、華樹・・・先生を、助けて・・・」


先生のこんな姿を見たくなくて、私は視線を反らしてしまう。悔しくて、涙が出てきた。

やっぱり、変わらなかった。私は弱いままだ・・・。もっと早く気付けたら、もっと違う未来があっただろうか?


『分かりました』


華樹は、優雅に現れると、先生へ狙いを向けて、浄化の弓を絞る。独特の弓の音が消えたのは、直ぐだったーーーーー私にとっては。

呆然としたままの彼は、動く事すらなく、当然、狙いは外れず、浄化の矢を受けた先生を、強い光が包んでいく。あまりに強い光に、場に居た誰もが、腕を使ったりして、光から目を守る行動を取った。それだけ、強烈な閃光だったのだ。

・・・・・しばらく経って、光が落ち着いた頃。何かが倒れた音がした。そして、浄化の光があった場所には、驚くべき光景があった。


「・・・っ!? これは一体っ!?」


星回さんが息を呑む。当然、私も理解が及ばず、目を見開いたまま、固まるしかない。


「えっ? 先生・・・?」


目の前には、光によって浄化された“私と同じ若竹色”の髪を持つ、先生よりも幾分か若い、しかしよく似た少年が、倒れていた。恐らく、これが本来の姿だったのだろう。華樹の浄化により、元に戻ったのだ。


「あ、先生っ!」


慌てて側に寄ろうとした私を、何故か回りが止める。側に行きたいのに、何故邪魔をするのか・・・。思わず、暴れそうになる私に、星回さんの焦った声が止める。


「いけません、姫君! まだ、あれが居ます!」


あれ、の意味が分からず、私も今一度、先生を見る。そこで、ようやく理解した。そこに、先生の直ぐ側に、何かが居る。黒く、ふにゃりとした何か。未だに動くそれは、あまりに不気味で、確かに皆が止める理由が分かった。


「さぁ、姫、あれを浄化してくれるかしら? そうすれば、全てが終わるから」


流れるような、藤花姫の指示に、不安が無いと言えば嘘になるが、先生を助けたい一心で、今度は流星にお願いする。細かな作業は苦手らしいが、既に先生と分離しているため、大丈夫だろうと思うのだ。


「・・・お願い、流星、あれを浄化して」


「御意」


すんなりと受けた流星は、剣を構えると、躊躇もなく、一気に剣を凪いだ。それは、光のやいばとなって、黒くうごめれを、切り裂き、浄化していく。しかし、黒き塊は中々しぶとく、流星の刃をもってしても、終わりが見えない。


『面倒なっ!』


遂に、怒りの色を見せた流星は、剣を構えると、何やら力を溜め始める。どうやら、大技を繰り出すつもりらしい。


「皆さんっ! 伏せて!!」


星回さんの言葉に合わせて、慌てて伏せた直後、凄まじい轟音と、そして、衝撃波と突風が吹き付けてくる。砂埃を巻き込んだそれは、かなりの威力であった。一瞬とも言えない時間が過ぎても、未だに、耳がおかしいと思う程だ。


「っ・・・姫様方、ご無事ですか!?」


星回さんに問われ、ようやく頭を上げると、少し土埃が落ちた。諸に頭から被ったようだ。それは、周りも同じらしく、こんな時なのに、手で払ってしまう。


「驚いたけど、大丈夫よ! ふふっ、流石の威力ね、姫の神器は!」


何故か、藤花姫は楽しそうだが、桔梗姫は慎重に辺りを見ていた。いくら周りを護衛に守られているとはいえ、今回の相手は、人ではないのだ。どうしても、藤花姫の事もあり、桔梗姫は気が気ではない。


「藤花・・・そんな呑気な事を言ってる場合じゃないでしょう!」


桔梗姫の怒気を含んだ言葉も、藤花姫はどこ吹く風だ。


「あら、大丈夫よ? さぁ、姫さん! もう大丈夫よ、彼に近寄ってもね」


そう、優しく言われたら、私はもたつく足に力を入れながら、倒れ、更には土まみれの先生だった人へ、近寄っていく。近くに寄ると、間違いなく先生であり、汚れてはいるものの、顔も間違いない。幾分、若いが。そして、よく見れば、微かに息をしているのが分かる。


「先生っ! 先生! 先生っ!!」


ぐったりした彼を、いくら揺すっても、起きる気配はない。


「先生、先生ってば! 起きて、起きてよぉ・・・」


怖いと、思った。このまま、先生が起きなかったら・・・・・。どうしよう、また、一人に、なっちゃう・・・。

ユキには、新しい記憶と、新しい家族が居る。私には、記憶はあるけど、周りには利害関係の人たちだけだ。ちゃんと、分かっているけど、やっぱり不安になってきて・・・。

私は、暗く小さな場所に立っているような、そんな不安がある。運命が変わったあの日、私は、本当を手に入れて、代わりに今までを無くしたのだから。


「姫様、泣かないで下さいませ、大丈夫です、気を失っているだけのようですから」


星回さんに手拭いを渡され、私は初めて自分が泣いている事に気付いた。


「星回さん・・・私、私っ・・・ふぇ・・・」


嗚咽が止まらない。泣きたい訳じゃないのに、涙が次から次へと、溢れてくる。何だかいっぱいいっぱいで、頭がぼんやりしてくる。


「大丈夫ですよ、姫君・・・姫君?」


何だろう。大切な事なのに、私の意識は何処か遠くへ向かうように、ゆっくりと意識を手放した。

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