老師と弟子
さて、ユウちゃんの秘密が明かされます。
ちょっとだけ(笑)
「まったく、老師!この二人に何かあったら、どうするつもりですか!」
あれ?先生の発言に違和感を覚えた。何だろう。
「ほっほっほっ、そんなへまはせんわ」
髭を撫でながら、鋭い視線を送られたような気がする。
「どれくらい成長したか、見てみたくなってのぅ、いやはや、弟子の成長は早いのぅ」
嬉しそうに笑っている老師に、先生も仕方なそうに笑う。結局、先生は老師を尊敬しているのだ。
「さて、遊びはここまでじゃ」
今までのほほんとしていた空気が、突如、張り詰めた。仕事が始まるのだ。
「本日の仕事は、狭間に迷い込んだ夢の回収じゃ」
何でも夢が迷子になり、現実、つまり現世に帰れなくなってしまったらしい。夢の持ち主は今頃、昏睡状態になっているはずだ。
「頼んだぞ、なんせこの広さでは、わしらだけでは人手不足なのでのぅ」
髭を撫でながら、ふと視線がユウに止まる。
「そち、名前はなんという?」
「……ユウと申します」
先生から言われていたため、少し警戒して答えた。
「ほう、ユウか……そなた、夢呼びは出来るか?」
あれ? 今、老師の顔が少し変わったような?
「どうした?」
「い、いえ!出来ます」
反射的に答えて、はたと気付く。夢呼びは、迷子や遠くに行った夢を呼ぶ時に使う。
しかし問題がある。それは夢呼びが出来る範囲が、その人それぞれによって違う事。広い範囲に声を届ける事が出来る者もいれば、狭い範囲しか出来ない者もいる。
「ユウ、いつも通りにやりなさい、無理はしなくていいですから」
先生の声に、うっとくる。何にといえば、プレッシャーというやつに。
「ユウ、大丈夫、落ち着いて」
ユキも心配そうに声をかけてくれた。
(そんな事、言ったって……)
「ふ〜、………Wit~su-na kaogi kukaore nirobi daeki katieto. miyaore yemo-nu shokeh~k~-iro.」
「ほう……」
声が広々とした空間に、響き渡っていく。
これは……。
先生も厳しい顔でユウを見ていた。
「Si~ yabukiko-nu katioto.」
呪文が完成する。そしてユウから、最後の波紋が広がると、何事も無かったように元に戻った。
「あれ?」
おかしい……普通は、最後の波紋が広がると同時に、手応えを感じるのに……もしかして失敗した!?
「ふむ……来たか」
「えっ?」
老師が呟いたその時、ユウはびっくりした。手応えを感じたのだ!間違いなく、夢は近くにある。
けど、何か変……?
「ユウ、どうしました?」
「いえ……」
何と言えばいいのかわからない。確かに夢が近くにあるのは感じるのだが、普段感じる夢と何かが違う。
「ふむ、やはりか……」
老師の諦めたような呟きが聞こえた。
「老師?まさか……」
瞬時にその意味を気付いたのは、やはり先生だった。
「うむ、そのまさかのようだのぅ」
髭を撫でながら、鋭い視線を彼方へと向ける。
「魂削じゃのぅ、まずいのぅ」
聞きなれない単語に、ユウとユキ、さらに後ろにいる二人の弟子が、同時に困惑した顔になった。
「そういえば、ユウ達には教えてませんでしたね」
魂削とは、魂が弱り消えそうになる状態なのだという。
「そして消えそうになった魂は、力を取り戻す事はないんです」
「そんな! 何か方法はないんですか!? 夢なんですよ」
淡々と言う先生に、ユウは信じられない気持ちでいった。
「そうです、これは夢―――しかし夢は魂とも繋がっている」
そういえば、そんな事を昔、教わったような……。
「ユウ、その顔は忘れたのですね?」
(うっ、何でわかったの!?)
爽やかな先生の顔が、何故か今は怖い。
「顔に出てますよ、まったく……夢が弱るのは、魂が弱っている証拠です、だから助ける事は難しくなります」
それでも教えてくれるのは、先生が優しいからだろう。
「確かに難しいがのぅ……方法が無いわけではない」
老師の言葉に、ユウは驚きを感じた。だって今、無理と言ったのに!
「出来るのは、出来ます……しかし、問題があるんです」
何故か苦々しげに言った先生が、哀しそうだった。
「わしらがやるにはのぅ、命を賭けねばならんのじゃ、命を救うには、それ相応の対価がいる、つまり命じゃ」
あっと思った。そうか、助けるには、それ相応の物が必要なのだ。今回の場所は命が必要になる。助けたくても出来ないのだ。夢渡りは、命をかけてはならぬ。それは夢渡りをやる者達なら、誰でも知っている掟。
「例外はありますけどね……」
どうも、皆のアイドル秋月です!って、痛い、痛いからっ!!
すいませんm(__)m 調子にのりました。
今回はいかがでしたでしょうか?
先生、凄く心配性なんです。ユウちゃん達を溺愛してるんですよ。
さて次回は、どうしましょうかね〜(笑)