小鳥に罠
今回、ユウちゃんに変化があるかも?
「先生、老師の方は? こちらに既について居られるはずでは……」
ユキが尋ねるが、先生も訝しげにしている。
「ええ、そのはずなんですが……」
まわりを見渡しても、それらしい影は見当たらない。
「狭間は広いので、もしかすると別の場所についたのかもしれません」
「そんな訳あるかい!アホが」
突然、声がしてびっくりしながらもあたりを見る。
「老師、頼みますから登場する時は、普通に登場してください」
先生が頭を押さえつつも、上を指差した。
見ろ、という事らしい。
「浮いてる……!?」
「嘘……」
二人で絶句するしかない。雲みたいな物に乗り、胡坐をかいて座ってるさまは、さながら仙人のようだ。その後ろには、若い青年が二人、控えるように立っている。多分、この人が老師で、後ろにいるのが弟子なのだろう。
「久しぶりじゃのう、お前も弟子を取るような年になったか」
考え深いとでもいうように、髭を撫でながら話す様は、あまりにも似合い過ぎている。
「お久しぶりです、老師」
にこやかに笑っている先生の顔が、何故か引きつっている。なぜだろう?
「老師、何を仕掛けたんですか?ここに」
先生の突然の言葉に、ユウはまわりを見渡してみる。特に変わったところはないように見える。隣にいるユキを見てみるが、ユキもわからないとばかりに、首をふった。
「ほう、やはり気付いたか、いやいや、弟子の成長は早いの〜」
好こうと笑う老師に先生は、ため息をついた。諦めたという感じだ。
「暇だったんでな〜、ここに罠を仕掛けてみた」
茶目っ気たっぷりに、ウインクをしてみせる老師に、誰もが固まった。
はっ?今、何と言いました?この方は。
「老師、今すぐに解除してください!」
一様、敬語を使っているが、先生の顔に青筋がたっている。うわっ、本気で怒ってる。
「それがのぅ」
髭を撫でながら、のほほんと言ってのけた。
「場所を忘れてもうた」
『はい〜!?』
三人の声が綺麗にはもった。つまり、ここには罠が嫌と言うほどあると言う事。
「本当に申し訳ありません!」
「我々では、老師を止める事、かないませんでした」
後ろの弟子達が、必死に謝っているが、降りてくるつもりは無いらしい。
「これも試練じゃ、確か二十個程かのぅ、解除を頼むぞ」
しれっと言ったあたり、最初からそのつもりだったようだ。
「老師!」
先生の顔が怖い、冗談抜きで怖い。
「―――ユウ、ユキ!」
突然名を呼ばれ、二人はびくっとなる。声さえも怖い、恐怖しか感じない……。完全にこちらに、とばっちりである。
「全て解除しますよ!いいですね」
「はい」
「了承しました」
ユウとユキ、さらに先生とで、罠を発見しては解除していく。もっぱらユウがドジをして、罠に填まるので、以外とすぐに罠を発見する事が出来た。
「………勘弁してください」
思わず口に出た。罠に填まるたび、髪はぐじゃぐじゃ、服はぼろぼろ……とんでもない姿だ。そんな姿になるたびに、どんどん惨めになる。ああ、まただ。やっぱり自分は駄目なんだ。自分がいるから。
「ユウ、大丈夫?」
ユキの声で、考えの淵から引き戻される。
「うん、平気」
にっこりと笑ってみせる。誰にも自分の心を見せないように。
「無理はしないで」
そう言われ、笑顔のまま固まった。あれ、大丈夫なはずなのに。なんで、固まっちゃうんだろう?
「ユウ、ユキ、これで全部ですね」
先生が戻ってきた。そして二人の頭を撫でてくれる。ユウはこうされるのが、結構好きだ。ユキは、子供みたいだと、嫌がるけれど。先程まで感じていた暗い思いが、ふっと軽くなった。
読んで下さり、ありがとうございます!
うーん、うまく書けないですね……。
でもでも頑張ります。
ユウちゃんも、きっと後ろ向きに頑張ります!!