飛び立つ小鳥
初の水曜投稿です。
お話は、新たな展開へ進みます。
今日の依頼は夢の管理。
先生からそういわれた。ユウにとっても、楽しい仕事だけに、自然と笑顔になる。
「ユウ、遊びにいくのではないですよ」
嗜めるように、そう言われても今はどこ吹く風だ。
「今日は他の方々と、一緒に仕事をします、くれぐれも粗相のないように」
先生が珍しく厳しい口調で言ったので、おやと思った。あれ?と思って先生を見ると、何故か先生の顔が厳しい。そんなに大変な人達が相手なのだろうか?
「ユウ、今回、貴方は絶対に補助以外の呪文を使ってはいけません、いいですね?」
何故かそういわれ、怪訝そうに先生を見た。
私って、そんなに信頼されてないんだ……。
「今回はどなたと組むのですか?」
ユキが聞くが、珍しく先生が顔を曇らせる。やっぱり、何か変だ、先生。
「……組むのは、シャン老師と弟子のお二人です」
シャン老師、それは夢渡りであれば誰でも知っている人である。
十三年前、この世界に戦があった。その時に政権の交替があり、今は白蛇の一族が政治の中心にいる。そしてその戦いで、シャン老師は抵抗していたにも関わらず、今の地位に上り詰めたという、強者だ。
そんな人が、なぜ私達と?
「ですから、いいですね? 言う通りにしてください」
先生の顔は今だに緊張したような、かたい表情のままだ。
「わかりました」
「は、はい……」
ユキはすんなり答えたけど、ユウは答えられなかった。だって私だけ、制限をつけられるなんて!
「ユウ、これは貴女を守るためでもあります、いいですね?」
何故かそういわれ、ユウは怪訝そうな顔になる。だってそれは、先生にとっても良い意味にはならないはずだ。通常、高位の夢渡りに会うなら、自分の弟子を自慢したいはずだ。それなのに、ユウには補助のみをいうのだ。
「ユウ、納得できないのはわかります、説明も後で行います、しかし今は時間がないのです、わかってください」
先生に、わかってください、といわれればユウは断る事は出来ない。きっとそれを知ってていうのだろうけど。
「わかりました」
その言葉に、先生は満足そうに笑う。きっと待っていたのだ、ユウが、はいと言うのを。
「では待ち合わせの場所に向かいます」
先生はそういうと、ポケットから小さな水晶の欠片を取り出した。
「先生、これは……?」
初めて見るものだ。ユキも不思議そうにそれを見ている。
「これは移動に使う補助石といいます、普段は高価なので使いませんが、シャン老師と会う場所は、これが無いと行けない所なんですよ」
やれやれというように、先生が石をポーンと垂直に投げた。
(えっ! 投げちゃうの!?)
思わず目を見開いてしまったユウ。次の瞬間、まばゆいばかりの光が、石からあふれ出る。
「行きますよ、狭間へ……」
先生の声が聞こえたが、その時にはユウ達の体は浮遊感に包まれており、正直にいうと酔いそうだった。とりあえず我慢はしてみるが、自信はない。
先生が先程言った狭間とは、うつつとあの世の丁度中間の事をいう。普段はそこを通り越して、うつつ、つまり夢の世界へ行くのだが、今回は狭間なので、普段よりも近い。
「つきましたよ、ここが狭間です」
先生の声がして、目を開けると、思わずユウは目を見開いた。
「ここが……?」
狭間?思わず突っ込みたくなった。まるで子供がばらばらに詰め込んだ玩具箱。それが第一印象だった。
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