小鳥の目覚め
すいません。秋月には、荷が重いようです…………。
フランよ、君はいつの間に小悪魔になったんだい?
秋月はスランプが脱却出来ません( ̄□ ̄;)!!
気付くと、周りは薄暗くなっていた。いつの間にか、寝ていたらしい。この部屋にも、昼と夜の区別があるようである。
「かあ様…………私はどうしたらいいのですか……………?」
母からは、私が大切である事、我一族が何故、消されなければならないのか、他諸々を教えて貰ったけれど。私が何をするのかは、母は一言も教えてくれなかった。
そして、予言。
巫女が言ったと言う、私に託された予言は、とても意味不明なものだった。
“月と星の定めが重なる時、重き定めの本流が我が一族を襲うだろう、この子はその時、ただ一人の希望となる、月に恋をする星は、月を救う只一人の聖人となるであろう、しかし星と月は重ならず、星は大地と繋がり我が一族のさらなる発展を促すだろう”
どういう意味なんだろう…………。
よく出てくるのは、月と星。何を表すのかさえ、今の私には分からないのだ。
そして、これより大切な事。それは、“私の名前”。
かあ様も、誰も、私の本当の名前を教えてくれない。いや、教えられない、が正しいかもしれない。私の名前は、星回さん曰く、下手をしたら王都が半分吹っ飛ぶ名前だそうだから。
……………名前だけで、広大な王都が吹っ飛ぶって………、何て名前を名付けたんだ。父よ、母よ…………、大切なのは分かるが、そんな物騒な名前は付けないで下さいよ。
そこまで考えて、ふと自分に毛布がかけられている事に気付いた。今更と感じ無くもないが、はて、誰がかけてくれたんだろう?
「おめざめですかぁ? ひめ様」
声のした方を見ると、不安そうにしているフランが、泣きそうな目をしながら、気遣わしげにこちらに歩いてくる。
「フラン、わたしはどれくらい寝てたの?」
「えっと、まるまる一日?」
「っ!? そんなに!?」
「まじゅつを解くと、つかれるから」
「そうね、大丈夫よ、フラン、それよりご飯をお願いしてもいい?」
「わかったの」
まだぎこちないけど、仄かな笑みを見せて、フランは廊下にかけていく。
あっ、毛布を誰がかけたか聞くのを忘れてしまった。戻ってからでいいだろう。
しばらくすると、フランが戻ってきた。手にはお味噌汁と漬物、そして何故かパン。
「あの、フラン? 普通はご飯じゃないの?」
思わず突っ込むと、フランはきょとんとして首をかしげてしまった。
あれ?
「スープとパンだよー? 普通でしょう? サラダも必要でしょうー?」
あぁ、スープとパンとサラダ。確かに体に優しい軽食だろう。
「ええ、そうね、ありがとう、フラン……………頂きます」
まずはフラン曰くのスープ。一口飲むと、あっ!
「これ、玉葱のスープ?」
「うん、フラン、これだーいすき!」
満面の笑顔で答えたフラン。なるほど、フランの好みで持ってきたのね。具は玉葱、じゃが芋、人参、何か(恐らく、鳥肉だと思う)の肉、スープの上に浮いてるのはハーブかな。癖があるけど、嫌な感じはない。落ち着ける味だ。
「何で味噌汁に見えるのかしら?」
ニコニコしながら、こちらを見ているフランに聞こえないように、ボソリと呟く。多分だけど、じゃが芋が溶けたから?とかが、一番あやしい。実際、具は溶けかかっているので、説得力はあると思う。
「ユキがいたら、分かるのに…………っ!」
何で、思い出してしまうんだろう。忘れられないのは、当たり前だ。物心付く頃から一緒にいたのだから。
でも、今は忘れていたい。
―――――――私はもう、過去の私には戻れない。
「ひめ様? どうしたの? どこかつらいの?」
えっ? フランは何を言ってるの?
そう思ってフランを見たら、何故か分からないけど、視界が歪んで見えた。
えっ? 私、泣いてる?
「だいじょうぶ? どこかいたいの?」
不安そうなフランに、笑って違うと言いたいのに、声が出ない。出るのは、しゃくりばかり。
「だいじょうぶだよ、ひめ様、もう呪いはないよ? あとね、主様が目が覚めたら、まじゅつを教えてもらえるよ?」
必至で宥めようとするフランに、私はただ首を左右に振って、違うとしか言えない。だって、涙が止まらないのだ。
しばらく室内に、私の啜り泣く声が響く。
「ごめんね、フラン、もう大丈夫だよ」
「ほうとー? ほんとーに? フラン、何も出来なかったよ……」
涙を一杯にためて、それでもフランは必至に私を宥めようと、沢山はなしてくれた。
「大丈夫よ、フラン」
そっと抱き締めると、フランはびっくりしていたけど、ぎゅっと抱き締め返してくれた。フランからは、甘い匂いがする。
「ねえ、フラン、星回さんは寝てるの?」
さっき、会話の中でフランが言ったのだ。主様が起きたら、と。それは星回さんが寝ている事を示しているはず。
「うん、あれからずっと起きないの……………今はね、ヤタが見てる、だからフランはひめ様の所にいれるの、ヤタはこわいから」
何故かフランがビクビクとし始めたので、会話を変えるために、私はパンを手に取った。泣いてすぐはつらいと思ったが、フランの怯えが尋常ではない。私はパクりとパンを口にする。早く話題を変えよう。
「このパン、ふわふわして美味しい!」
話題を変えるつもりだったのに、本当に美味しい。普通のパンなのに、ふわふわしていて、全然かたくない。
「ひめ様、しばらくゆっくりしてね?」
その言葉は、本当に嬉しくて、私は素直に頷いた。
例え、これから先、困難があったとしても、私は大丈夫。何故か心のそこからそう思えた。
「ひめ様、パンをちょくせつ口にするのはマナー違反なの」
「っ!?」
この後、盛大にむせたのは言う迄もない。
お読み頂きまして、ありがとうございますm(__)m
秋月と申します。
今回、スランプの中での執筆をやり、上手くいかなくて、思わず消そうかと……………思い止まりましたが。
いやはや、何だかドタバタの9月です( ̄〜 ̄;)
さて、本編にて。
本日の更新はいかがでしたでしょうか? 主人公、色々回想してましたが、大丈夫、これから前を見ていくはず? そしてフランよ。作者は、君を小悪魔にした覚えはないんだが、何故に君はそんなキャラに?
作者は次回、ようやく主人公に魔術を使わせます!! やっと出来ます! このシーン☆ さあ、ようやく主人公のチートが明らかに!
では次回、10月2日にお会いしましょうm(__)m