運命の星が廻る
久しぶりの更新です。
今回はサイドストーリー!
本編でないのは、本当にすいませんm(__)m
王宮、月宮殿、その一室にて。
時刻は深夜―――――。
夜空には無数の数多の星々が光輝き、美しき風景が目の前に広がっている。
王宮は小高い丘の一番高い場所に建っている。だから、この光景を見る事が出来るのだ。
「うん、分かったわ…………えっ? すぐに?」
そのバルコニーの一つ、中々に広いバルコニーの手すりに掴まりながら、夜空の星を見上げ、一人で何かを呟く少女がいた。
「でもお父様もお忙しいし…………明日、先見様に聞いてからではダメ?」
可愛らしく首をかしげる少女だが、すぐにすねたように唇を尖らせる。不機嫌なはずなのに、可愛らしくしか見えないのは、一重に少女の顔立ち故である。
「分かったわ………星が動くなんて………」
一人で呟く少女は、不安そうに町を見ている。いや、少女が見ているのは、暗闇に紛れ、姿さえ見えない一つの屋敷。
奇しくも、夢渡りの姫が母と廻り合う時と同時刻。
運命が動き始めていた。当事者達でさえ、気が付かない程に、早く、速く、動き始めていたのだった――――――――。
◇◆◇◆◇
翌日、未明の事である。宮殿、王の私室にて。
「陛下、お呼びでしょうか」
歳のわりに落ち着いた雰囲気の少女が、膝を付き、手を拳にして合わせ、目の前に掲げる。これは目上の人に対して行う礼である。着ている物は紫色に染め花柄の描かれた落ち着いた着物である。
「ふむ、よく参った、桔梗よ」
陛下と呼ばれたのは、我らがご存知、焔羅十三世景成様である。
そして彼の目の前にいるのが、彼の二番目の娘であり、彼が犬猿する白雪の娘でもある。名前は、桔梗。
ただ幸いにも彼女は母親には、全く似ていなかった。髪の色は王家特有の緋色、瞳の色も父親である陛下と同じ紫色で、顔立ちすらも父親に似ていたため、陛下は母親は気に食わなくても、この子は大切にしようと思ったのだ。彼は桔梗が生まれると、すぐに乳母を付け、母親から引き離した。元々、白雪は女の子には興味が無かったらしく、引き離すのは楽だった。彼女の愛情は、息子の銀嶺にしか向かない。故に、桔梗は緑翠を母として慕っていた。幸いな事に、緑翠は優しく彼女を受け入れてくれた。母性愛溢れる緑翠に懐くまで、そう時間はかからなかった。兄妹達も仲が良く、さらに桔梗には弱いながらも、先見の力を引いていた。勿論、王も周りも喜んだ。
―――――ただ一人、その力が発覚しても、白雪だけは彼女に見向きもしなかった。逆に向けたのは、憎悪、いや、嫌悪感と言えばいいか。実の娘に向ける物では無かった。
幸いにも、桔梗は緑翠を実の母のように慕っていたため、問題にすらならなかったが。
「本日、この場に喚んだのは他でもない、藤花の事だ」
控えめに頭を上げていた桔梗は、流石に戸惑いを隠せなかった。急に末の妹の名前が出たからだ。
「陛下、藤花がどうかいたしましたか………?」
陛下は家族を溺愛している。それはこの城に住む者達なら、誰だって知っている事だ。
勿論、その家族の中には、白雪と銀嶺の二人は入れられていない。これも城中の人間が知っている事だ。
しかし藤花は何かしただろうか? 思いあたる節がない。
「いや、実はな……藤花にも先見の力があるようなのだ」
「えっ……」
「そなたと一緒に、先見様の元で修行させたいと思っておる」
それは喜ばしい話、である。元々、桔梗の力では次代の先見様にはなれない。補佐がせいぜいと言える程度の力なのだ。
しかし藤花はそれ以上の力を持っているのだろう。だから、先見様の元で修行する事が決まったのだ。
つまり桔梗は、大切な妹に仕えるかもしれないのだ。
「分かりました、陛下、次期先見様が決りました事、お喜び申し上げます」
丁寧な言葉でめでたいと言った桔梗に、陛下は、彼は、申し訳なさが襲う。この子は小さい頃から、一歩引く所がある。家族だけの時は別だが、表に出ると、すぐに態度が固くなる。
「そうか、祝ってくれるか………」
自分の立場を理解しているからこそ、この子は強い。そして脆い。
「桔梗よ、昨晩の星を読んだか?」
「星ですか? はい、読みましたが、詳しくは分かりませんでした…………星の位置が僅かに動いておりましたが」
「そうか、実はな、藤花は星の声を聞いたらしい、昨晩遅くに我が寝室に来てな、言ったのだ…………定めが動いた、と………」
「定めが…ですか?」
星が動くという事は、定めが動くということ。それは誰もが知っている事ではあるが、専門の知識が無ければ正しい事は分からない。
「ああ、そしてそれの意味さす者の中には、そなたも入ると、先見様よりのお言葉を頂いた」
「わたくしも? どういう意味でしょうか、陛下」
不安そうに、こちらを見る桔梗の目の中に、僅かに警戒の色が浮かんだのを、彼は見逃さなかった。当たり前だろう、彼女は陛下の大切な娘に変わりはないのだから。例え、忌々しい白蛇一族の血を引いていようとも、そこは変わらない。
因みにだが、王家の血は白蛇一族の血よりも強いらしく、先見様より、今後、母方の血で煩わされる事はないというお言葉を頂いている。
「そなたは白蛇一族をどうみている?」
彼女の質問にはあえて答えず、彼は別の質問をする。
「白蛇一族、ですか………あえて言うならば、身の程知らず……でしょうか、わたくしめには踊っているに過ぎない役者に見えます、まるで本当の敵を隠すような………」
「ほう………そうか、では、白蛇一族が消えても問題は無いと思うか?」
「えっ…………?」
「どうした?」
「い、いえ、何でもありません、わたくしは国の意志に従うのみです、どうぞ、お気になさらなずに――――――」
「そうか、わかった………桔梗よ、藤花を頼むぞ」
「かしこまりました」
これにて本日の謁見は終了したのだった。
◇◆◇◆◇
桔梗は、陛下の私室を出ると、すぐに自分があてがわれた部屋へと戻った。
「わたしの星見が当たるなんて………」
白蛇一族の星を読んだのは、1ヶ月程前になる。戯れに読んだのだが、余りに不穏な未来しか見る事が出来なかったため、その日以来、見る事は無かった。そしてあの時、読んだ未来の中に、あったのだ。最悪の未来の一つとして。
“白蛇一族の没落”
まさか、当たるとは思わなかった。だってあの時は、可能性の一つに過ぎなかったのに。
「欲張り過ぎたのよ、白蛇一族は………」
彼女も血を引いているが、幸いにも母より父に似ているため、実母の白雪は早々と彼女を見捨てた。幼い頃、何度か座席が隣同士になったりしたが、白雪は見向きもしなかった。彼女が見ているのは、常に銀嶺のみだった。
「本当に馬鹿みたい…………」
彼女にとって母と呼べるのは、本来ならば敵対するはずだった緑翠様だけ。緑翠様は、陛下にそっくりな桔梗を、自分の子供達と同じように可愛がってくれた。悪い事をすれば叱り、善いことをすれば褒め、寂しい時は、そっと抱き締めてくれた。実母には一度たりともされた事がない桔梗にとって、緑翠様は実の母のような存在なのだ。
最近は母様と呼ばないと、拗ねた顔を見せるので、公式の場以外であれば、母様と呼ぶようにしている。
「どうか、母様は巻き込まれませんように……………」
例え無理な願いだとしても、桔梗が願わずにはいられなかった。
久しぶりです。秋月です。
えっ?忘れた?
そんな冷たい事は言わないで下さいませ!
秋月はあまりの忙しさに、夕暮れを見て黄昏ていたのは、まぁ、今はいい思い出です(笑)
さて、話を元に戻して。
まずは皆様にお詫びをせねばなりません。本当にごめんなさいm(__)m 前回、次回は本編と申し上げましたが、作者の都合により、無理になりまして、サイドストーリーへと替えました。もし楽しみにしていた方がおりましたら、本当に申し訳ありませんm(__)m
次回こそは、本編にいたしますので、もう少しご辛抱いただけますでしょうか。
さて、ネタバレ……………と行きたい訳ですが、実は山場の盛り上がるシーンがもうすぐ?ありまして、少々無理になりました(__;)
何だか本日は謝ってばかりですね。次回は本編の方でストーリーを進めますので、今回は見逃して下さいませ!!
感想・誤字脱字・ご指摘、いつでもお待ちしております。なお、甘口で言って下さると嬉しいです。
次回は9月18日に更新します。