小鳥の禁術
いつも読んで下さり、心より感謝いたしますm(__)m
「―――――始めます」
星回の声が響いた。彼女が金色の細長い杖を掲げたその瞬間、私の下の魔方陣から、とんでもない威力の魔力が溢れだした。
(凄い……! 何!? 何か入ってくるみたい………)
魔方陣の輝きは、どんどん強くなっていく。私の髪や服が風も無いのに裾が翻っていく。魔方陣は直視できない様な程の光になり、薄暗い辺りを照らしだしていた。
「…きゃ………!」
体の中から何かが無理矢理、引きずられるような奇妙な感覚が私を襲う。耐えられない訳ではない。でも、体が落ちていきそうになる。どこまでもどこまでも続く、永久に廻り続ける暗闇の中に…………………………。
「姫君、意識を奪われてはなりません!!」
星回の声に再び意識が戻ってくる。
私は意識を奪われたのだろうか? それとも体? 私は立ってる? 上下も分からない……………。
頭は混乱している。星回が呪文を唱えれば唱える程に、体の奥深くにある物が抜けていく。少しずつ少しずつ、確かに何かが抜けていく。それに合わせるかのように、私のまわりの魔方陣に何かが吸い込まれていく。それは霧のように煙のように、暗い色を辺りに見せびらかすかのように、上に逃げようとして、下の魔方陣に吸い込まれていく。
(これが……私の中にあった……呪い?)
正直、気持ち悪かった。こんな物の所為で、私は幼い頃から苦労してきたのか。いつもいつも肝心な時に魔法が制御出来なくなるのは、これの所為だったのだ。
(誰がかけたの?)
それを考えた時、不意に体に異変が起きる。
「きゃっ………………!?」
意識をもってかれるなんて物ではない。全身に襲い掛かる痛みに、私は体をぎゅっと抱き締めるようにして耐えようとする。
「くっ……あっ………!」
それでも余りの痛みに、意識が飛びそうになる。こんな痛みが現れるなんて。薄れそうになる意識を、何とか繋ぎ止める。そんな中、ちらりと星回に視線を向けた。
「姫君っ……!」
彼女もまた、襲い来る呪いに、必死で戦っていた。その横に付き従うフランも、小さな手を私の方に向けて、何かから主である星回から守るようにしていた。
あちらも戦っているのに、解いてもらう自分がこれでは、何だか失礼な気がしてくる。ましてや星回は命懸けでやってくれているのだ。それなのに、私は今ズルい事を考えた。逃げようとした。この痛みから、苦しみから。逃げようとした………………星回が命懸けで戦っているのにも関わらず。
「……くっ!」
何とか意識をつなぎ止めなくては。とはいえ、この痛みの所為で、まともに考えがまとまらない。どうしよう。
そうこうしているうちに、いつの間にか私の中からあの煙みたいな奴が消えていた。
(どれくらいたったんだろ? 終わり………?)
そんな事を考えた時、まさにその瞬間――――――――悪夢が始まった。
(ん? 何かしら?)
痛みでぼんやりした意識のまま、私はそれを“視た”。
始めはぼんやりとした形で、徐々にそれは形を成していく。
(これ………葉っぱ?)
それは葉っぱである。足元に蔦のような物がひしめいていた。それは不思議な事に、先程までの煙と同じく、まがまがしい色をしていた。蔦は私の足元をあっという間に覆い尽くすと、今度は逃げられない私に、絡み付いてくる。
「ひっ…!?」
押さえ切れない悲鳴が上がる。
「姫君っ!? もう少しですから、耐えて下さいませっ!」
星回は、苦渋の選択をした。本当なら、姫を助けなければならないのに、助ける方法が解呪のみと、しっていたからである。あれは恐らく、姫に呪いをかけた者が、妨害のためにかけた一種の罠だ。効果は恐らく…………。
「きゃぁぁぁぁ――――――!!」
「姫君っ!!」
星回が叫ぶ。解呪の時はその場から動けないのだ。
私は足に絡まってくる蔦に、既に混乱し始めている。かなりの早さで成長する蔦は、私の体へと蔦を絡ませてくる。それは茨の蔦。成長するたびに動く蔦の刺に、私の体は小さな切り傷が大量に出来た。何とか剥がそうとした手も、既に茨の蔦に捕まり、只今、全身を茨に絡まれている。
まだ激痛が抜けていない今、抵抗は手で払うくらいしかできなかったのだ。
「せい…か……さ…」
何とか絞りだした声は、まともな音にも成らなかった。
不意に視界に動く物を視た。それは茨の蕾のようだ。それはムクムクと大きくなり、人間の拳位の大きさになる。
(まさか………!?)
開花した。蕾が一枚、また一枚と開いていく。しばらくすると、それは美しくも、まがまがしい色の薔薇となる。真っ黒い薔薇。この場でなければ、もしかしたら喜んだかもしれないが、今は緊急時である。私の頭の中は混乱し、更に全身を激痛が襲い、更に更に茨の蔦に絡まれて動けず、最悪な事に彫像とかした私には花が咲いてる。まるで私に憎しみをぶつけるかのように、黒い薔薇が咲き乱れて…………。
「姫君、参ります!」
あっ、星回さんの声がする。
混乱していても、彼女の声はすんなりと私の中に入ってくる。
「さあ、これで最後です! 不気味な薔薇共々、呪いは灰と成って消えなさいっ!!」
星回が大きく杖を振るう。同時に、薔薇の蔦が真っ赤に燃え上がる。ごうごうと凄まじい迄の勢いで、魔方陣の中は火の嵐のようだ。勿論、その蔦に絡まれている私にも、容赦なく熱風が襲い来る。
(熱っ――――――――――い!!!??)
痛みすら忘れて、思わず叫んでしまう。でも星回が頑張っているのに、叫ぶのは何だか違う気がするのだ。
そして不思議な事に燃えているのは薔薇だけ。赤々と燃え上がる薔薇は、熱風を気にしなければ、それは美しい光景だった。幻想的な、紅い紅い、何処までも美しく燃え上がる紅色の炎。
私は見入っていた。痛みも何もかもを忘れて、一心にそれを見ていた。
どれくらいたっただろうか……………。いつの間にか炎は小さく成り、気付けば全てが終わっていた。
「姫君………終わりました」
星回の姿は、ローブのあちらこちらに何かで切られた様に、ぼろぼろになっていた。立つ姿もどこか頼りない。隣にいるフランが心配そうに、星回を小さな手で必死に支えていた。
「無事に全ての呪いを解呪しました…………が、」
言いにくそうに、そこで星回は言葉を切る。
「姫君の“繋がり”も解けました…………双子の繋がり、師弟の繋がり、もです」
その言葉に、私は固まるしか無かった――――――――――――――。
どーも〜! いつものとおり、せーのっ!!
秋月です〜(^O^)/
えっ? 前にもやっただろうって? あっはっは………。
さて、今回は真面目に解説をしたいと思います! 前回は忘れ…げっふんごっふん、前回は書いておりませんので、しっかりと解説をします。
まず、この夢渡りというのは、職業です! 今更ですがね……(;^_^A 今でいう公務員さんの特殊技能持ち?みたいなカテゴリーです。夢渡りになる条件がありまして、それは音魔法が使える事、そして刀と契約する事、等があげられます。今の所、ユウちゃんは刀と契約できてないので、正式には夢渡り見習いとなります。
さらに夢見の方々もついでに紹介しましょう! 夢見も職業です。彼らは夢を見せるのが仕事なのですが、カテゴリーは夢渡りと同じになります。まあ、あんまり仲は良くありません。夢渡り一族と白蛇一族の戦いの所為ですが、生き残った夢渡り一族は白蛇一族を毛嫌いしてます。前回の記述通り、白蛇一族は荒廃してますからね………。無理もありません。
さて、今回はこの辺で。
次回は6月26日にお会いしましょう(^^)v
なお、感想・激励・誤字脱字等も受け付けておりますので、宜しくお願いしますm(__)m