同時刻
すいません。今回は主人公は出てきません。
そして凄いシリアスです。苦手な方はご遠慮した方がいいかもしれません。
お話は、確信に迫っていきます!
ユウが迷いの森で、謎の青年と話していた同じ時、ユキと先生は自宅にて対策を考えていた。
「先生、やはり言いましょう、このまま黙っているなんて出来ません!」
この場には、この家に住む先生と呼ばれる人物と、ユウの双子の姉になっているユキが、机を挟んで座っている。机は丸いテーブルで下は畳。現代人が忘れた昭和の空気が漂っていた。
そんな中でのユキの一言は、思い空気が漂っていた。
「しかし……魂戻しの一族は、今は政治に関する力を失っています……今の状況で、ユウが理解をしてくれるかどうか……」
この前の仕事で、ユウは力を開花させた。いや、させてしまったというべきだろう。
この力を開花させなければ、ユウは今迄と同じ場所にいれたのだから。
「伝えないのは、ユウへの優しさかもしれません……でも、でも…もし……“あの方”に知られたら…………!」
あまりに悲痛な声を出して、大人びた顔立ちの少女は、金色の瞳に涙を溜めて、先生を見た。泣き出したユキに、先生も下を見て、視線を合わせない。苦渋の選択としかいいようがなかった。
「ユウには言わない事にします………」
「先生っ!?」
睨み付けるように先生を見るユキ。ユウとは似た所は服しかない。髪も、目も、顔立ちさえ、全てが似ていない双子。そんな二人を、先生はずっと、ずっと見守ってきた。
「ユキ、“あの方”が、もしもユウを見つけてしまったら、その時は話しましょう……しかし」
何かを決断した強い眼差しで、ユキを見る。
「今は、今だけは、ユウには自由をあげましょう、本来、ユウには与えられるべき自由ではないのですから……」
それを言われれば、ユキには反論が出来ない。先生がユウを大切にしている事は、一番近くにいるユキが知っている。いや、溺愛しているとでもいえるかもしれない。先生は危険な仕事には、絶対に触れさせない。ユウは実力がないからと思っていたようだが。
「分かりました………しかし、ユウはまた無茶をしますよ? 今でさえ、ユウは私の力に劣等感をもっています……」
ユキは何かをモゴモゴと呟いていたが、結局は口を閉じた。
「その点は、私の方で上手くしておきましょう、ユウは一度、落ち込みと元に戻るのに時間がかかりますからね」
これもこれで考えものです……。
二人の口から同時に溜息が漏れる。ユウのこれから先の未来のためにも、今は何が何でも平和でなければならないのだ。これから先、待ち受けている物のためにも。
◇◇◇◇◇
『クスクス』
真っ暗闇の中、笑い声がこだまする。声からするに、若い娘の声だ。
『みーつけた!!』
もう一つ、こちらは幼い子供の声だ。
『全く……こんな所に隠れてるなんて、ね、灯台許暮らしとはこのことね〜…………』
楽しそうに、嬉しそうに、歌うように、女性は呟く。
『ホントー、探すの大変だったー』
『フフフ、ご苦労様、フランはいい子ね』
『やったー! フラン、偉いでしょ〜?』
『うん、偉いわ』
誉められた子供は、本当に嬉しいのか、声が一際大きくなる。
『“あの方”に、お伝えしなければね』
何かを考え込むように、黙り込む女性。
『でも〜、変だよ? あの子、力をほとんど使えてないみたい〜?』
『彼が邪魔をしているのでしょう………………本来の力が戻ったら、彼女は…王………なんだから』
『主さま、“あの方”から連絡です〜』
『今いくわ』
暗闇が揺れる。既に、この場には誰もいない。
◇◇◇◇◇
王宮、その一室。
「父上、お待たせいたしました」
儀礼的な礼をした青年は、目の前には、この国の最高位を持つ皇帝、焔羅13世・景成が堂々たる姿で椅子の一つに座り、こちらを見ると、その誰もが威圧される威厳のあるその顔を緩める。
結局、陛下と呼ばれても父親に変わりはないのだ。
「おう、よく来たな、水暉よ、さあ座りなさい」
近くに控えていた御者が、椅子を引く。
水暉と呼ばれた青年は、遠慮がちではあるが、父親の前に座った。父と同じ緋色の髪を後ろで一つにまとめ、母親と同じ緑色の瞳。第一皇子の彼は、父親によく似た面立ちであり、頭脳明晰で性格も穏和なため、家臣達の信頼も良かった。父のお気に入りだったりもする。
「父上、如何なさいました?」
「おう、すまんな」
どうやら考え事をしていたため、ぼんやりしていたらしい。
「そういえば、若葉や瑪瑙、藤花はどうしておる?」
若葉は第三皇子、髪は母よりもはっきりした色のエメラルドグリーン。瞳は父に同じの紫。性格は物静かな方だが、頭が良く、将来は兄の右腕になるのは約束されている。水暉と仲が良く、よく一緒にいる事が多い。
瑪瑙は第一皇女、父と同じ緋色の髪に、母と同じ緑色の瞳。性格は物静かであり、淑女としてどこに出しても恥ずかしくない姫君だ。
藤花は第三皇女であり、母よりも美しいエメラルドグリーンの髪を腰まで伸ばし、父と同じ紫色の瞳を持っている。性格は誰に似たのか積極的で、よくお茶会を開いては新たな流行を流行らせている社交性のある姫だ。
この子供達を生んだのは、第一妃の緑翠。父の寵愛を一身に受ける母は、祭りに関しては口を挟まず、いつも父の心配ばかりしている心優しい妻だ。
「若葉も、瑪瑙も、藤花も、皆、元気にしておりますよ」
毎日、朝食や廊下で会うのだ。今更だろう。
「この頃、子供達が会いに来てくれぬと、緑翠が心配しておった……たまには会いにいってやれ」
確かに、忙しさにかまけて、しばらく母上には会いに行っていなかった。今度、何かを用意して、持っていこう。
「畏まりました………して父上、話はこれだけではございませんでしょう?」
本題を話してはくれないか……、暗にそういうと、父はニヤリと笑った。父がこんな風に笑うのは、何かを企んでいる時であることを、水暉は経験上、知っていた。
「―――人払いを」
先程までの穏やかな空気が、一気に凍り付いたかのように、堅くなる。
すべての御者が扉から出ると、父は国王の顔で水暉を見る。
「“眠れる国宝の御子”を見つけた」
「…………………っ!?」
隠語で言われた、それを理解するまでに、しばらくかかった。
「父上………国宝、“天加護の弦弓”と“天加護の御剣”の持ち主が見つかったのですか!?」
これは13年前、行方不明となったこの国の国宝の事。緑翠の実家である“魂戻しの一族”が管理していた三種の神器である。
「して、その者はどこに!?」
普段穏やかな彼が、ここまで興奮するのは珍しい事だが、事が重大さを秘めている故にである。
「灯台許暮らし………下町で“夢渡り”をしておるようだ、厄介な事に、第二皇子の銀嶺と逢ってしまったようだ」
「なっ!?……銀嶺と?」
白蛇の一族の血を引いた、第二皇子・銀嶺。自由奔放な彼は、父にとって、眼の上のたんこぶと言わしめる程の人物であり、兄弟達の集まりにも来たことがない。しかし赤い瞳を継いだ彼は、その瞳に真実しか映さない。
「まさか、あやつが気付いたと?」
彼にとっても、母が違うため、滅多に口を効かない相手である。幼少時は多少なりとも関わりを持っていたが、大きくなるにつれて、話をする事は少なくなっていた。
「影からの報告故、間違いはあるまい………すぐにでも動きたいが、今は動けぬ」
「白蛇一族の動きですか?」
13年前の戦で、本家に火が放たれ、本家の血筋は全て亡くなったそうだ。分家はかかわり合いがないとされたが、中には本家の火事に巻き込まれて亡くなった者もいたそうだ。そこには緑翠のもっとも仲の良い親戚も含まれていたらしい。
「私にとっては“近い親戚”になりますね」
まさか生きていたとは。しかし今は、今すぐにはいけない。
「あやつらを、蹴落とす方法がなければ、三種の神器の一つ、天加護の御玉を取り戻せぬ」
父は白蛇一族を嫌っている。第二妃の白雪の実家であるため、大きな顔をしている彼らが嫌いなのだ。表向き、心から忠誠を誓っているが、裏ではやりたい放題をしている彼ら。父は二度、余りに度が過ぎた臣下を切った事がある。二人共に白蛇一族だった。
そして、白雪様も嫌っている。父は本来、緑翠のみを妃にするつもりだった。そこに横槍を入れ、自分の娘を入れさせた白蛇一族長を父は手打ちにした。度を過ぎた行いをしたが故に。しかし彼女をそのまま置いたのは、子供が出来たからだ。
「わしは白蛇一族を権力が無い一族まで落とすつもりだ、いくら吉兆の一族と言えど、重要度で言えば魂戻しの一族の方が上」
だからこそ、魂戻しの一族は権力が与えられていた。彼らは自分達の度を知っていた。だからこそ、発言も慎重な物が多かった。
「父上、慎重に行わなければ、足をすくわれます、相手は狡猾な白蛇一族なのですから」
「ああ、つまらぬ愚痴に突き合わせたな、もう下がってよいぞ」
「はい、父上」
立ち去ろうとする彼に、父が呼び止めた。
「水暉よ、白の闇を探せ」
―――白蛇一族の尻尾を掴め
「畏まりました」
こうして、久しぶりの親子の対面が終わった。
読んでいただき、誠にありがとうございます!!
いつものように、秋月です〜♪
今回、主人公の知らない、あちらこちらで真実が明かされ始めました。まさか!?な一面もありますね。
もしかしたら気付いた方がいたかもしれませんね!!
ここが気になる!なんて事がありましたら、是非感想までお送りください。出来る限りのお返事をさせて頂きます。
さて、話は変わりますが、本作品の更新についてです。
作者が今月、忙しくなってしまいまして、大変申し訳ないのですが、しばらくお休みします。
次の更新は5月1日になりますので、ご了承ください。
そしてもう一つ、小さなニュースがあります♪
5月1日にもう一つ、連載を始めよう!!と考えています。
『(仮)天と白の勇者達』というお話です。いわゆる、王道的な勇者のお話ですね。まだまだ考え中のお話ですが、日の目を見れるように頑張ろうと思います。
では最後になりましたが、感想をお待ちしております。なお、作者は吹けば飛ぶような程に小さな心の持ち主なので、優しく言っていただけますと嬉しいです。
ではでは、また次回お会いしましょう。