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アタッカー  作者: 空白スラ
3章:孤独な青狼娘ルテ
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短いプロローグ&1.アデナス攻めます。(前編)

このお話がこの小説の第一話です。

 __太古、蒼い狼、地に伏せた。世界、バランス、崩した。

 

 

 せせらぎみたいな水色の長髪は、道を駆け抜ける風になびく。その隙間からは皮製の鞘と、その先に蒼い石が填められた白い柄が見え隠れし、過ぎ去る者を威圧している。足元では軽い金属でできた銀の鎧足が微かに音をたて、日の光を反射して輝く。それが膝を超えると白い肌が露にされていて、その上からやや頼りなく見えるスカートが少女のももを覆っていた。お腹から首元にかけては銀色の細かい楔のような編み物で守らている。また首には不思議な緑光を放つネックレスのようなもの、肩にはやはり軽金属のパット。掌には布が巻かれており、まるでボクサー。顔は凛としている。その血のように赤い目なんかきつくて例え狼が道から飛び出してきても睨んだだけで追い払えそうだ。それほどに近寄り難い雰囲気が少女にはあった。少女はルテ。攻め人(せめびと)という職業についている。この攻め人というのは、各地に湧く『守り手』という存在を狩る者だ。別に守り手だからって何を守っている訳でもなく、昔からの言い伝えで守り手と呼んだ。もちろん狩るのにも理由があるらしいのだが、人々はその理由までは知らない。攻め人すら知っている者はごく僅かだ。ルテもまた、知らない派の一員である。ただ放っておくと何か危ないんじゃないかという変な意識から狩る者も少なくない。もちろんルテはそんな理由で守り手を倒す訳ではないが。

 今ルテが歩いているのは何てことのない道。周りには草原が続き、その真ん中に土の絨毯が果てしなく広げられている。彼女が向かっているのはルーンの洞窟。このヒードルと呼ばれる広大な世界の西端、アード国にある洞窟だ。そのルーンの洞窟に『アデナス』という守り手が現れた為、ルテはギルドから派遣され討伐に向かっている。

 旅前に確認した地図によると、もう少しで着く筈だ。ルテがそう考えていると、ごつごつした暗褐色の岩肌が見えてくる。あれがルーンの洞窟。入り口はやたらと小さく、ルテが体を精一杯に縮めてやっとの事で内部に入れた。この洞窟は海に近く、洞窟の壁は濡れぎみで、波の音が不気味にこだまする。明かりなんかある訳がなく、ルテは一歩一歩を慎重に奥へ進んでいった。洞窟探索ならたいまつを持ってくるのが普通である。でもルテはわざとたいまつを使わない。守り手や洞窟に潜む危険に、なるべく自分の気配を悟らせない為に。

 まあもっともこの洞窟はさほど広くないので、そもそもたいまつのお金が勿体ないというのもルテに限ってはあったが。

 数分暗闇を歩き続けると、守り手が表れる洞窟の特徴でもある広い空間へ出る。

 ルテは空間の入り口でアデナスの気配を探る。奇襲をかけるつもりだ。対するアデナスはルテの存在にはまったく気づいていない。たいまつを使わない事で結構な差は生まれるのだ。

 漆黒に慣れたルテのコウモリのような目は、アデナスを捉えた。アデナスは言うなら巨大な蜘蛛(くも)だ。茶色と焦げ茶、それに黄色の三色が毒々しい縞模様を作り、正面には目が6つ。8本の足は見た目以上に機敏に動き、脚力も凄くその巨体で軽快にジャンプするがなんと言っても脅威なのが口から吐き出される大量の糸だ。今ルテが対峙する子供クラスのものならまだかわいいものだが稀に出る仙人クラスの巨体をもつアデナスからは想像を絶するほどの糸が出てくる。20人なんてチンケな数じゃなく一気に8000人の息の根を止めてしまう事さえ容易い。故に、アデナスには奇襲をかけ糸が出される前に倒してしまうのが一般的になった。

 静かに抜かれた剣は微かに震え、ルテの手には手あせが出る。恐れ。ルテは戦闘能力に関してはいい方だが、守り手と向き合うといつも恐れを感じてしまう。だが恐怖は命を奪う。ルテはその事を深く自覚している。

 恐怖を必死にこらえて、ルテは暗闇を駆け抜けた。アデナスはルテの剣が近くにくるまで、その存在を知らなかった。

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