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アタッカー  作者: 空白スラ
2章:恐れし青狼と少女の過去
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5.攻め人ギルド

 木製の床は秋口という事でひんやりしていた。両脇にある窓からは光の筋が浮き木を僅かに温める。

 ルテの足どりは重かった。まるで先に鉄球がついた鎖をつけられているかの如く。ずっとうつむいていた。自分はこれからどうなるのだろうと。10歳の少女には到底現実を受け入れられなかった。ひたすら夢だと願っていた。リンはそんなルテを心配そうに見つめては、頭を撫で慰める事しかできない自分に少しの悔しさを感じていた。

 二人は階段を降りた所の正面にあるドアの中へと入る。そこが食堂。真ん中に大きなテーブルがあり、その周りにも小さなテーブルがいくつか置いてある。全体的に落ち着いた雰囲気を出していたが、ルテには天井に吊るされた明るい灯火でさえうっおしく思えた。

 リンはルテを真ん中のテーブルの椅子に座らせ、自分はその奥にある厨房から料理を持ってくる。取り出したそれは遠足という言葉が似合いそうなバケット。ルテの目の前にそれを置き、またその中から何かを取り出していく。ルテのテーブルは可愛らしいサンドイッチでいっぱいになった。卵を挟んだもの、ハムやキャベツ、トマトやお肉など定番なものからブルーベリーに近いキハの実や、ややすっぱく甘味は控えめのヤエの実などミンダスの特産物、更にはリンの好物なのかカスタード……のような黄色いぷるぷるした物体がサンドされたものもある。

 リンの勧めでルテはヤエの実とキハの実を挟んだものに手をつけようとした途端。

「ちょっと待ってください。食べる前にはいただきますを言いましょう」

 とリンが真剣に言うのでルテは「いただきます」と小声で呟き、サンドイッチを口に運ぶ。酸っぱい香りに混じって甘さが舌をなぞった。

 でも、大切なのはそこじゃなかった。ルテは長年食べ続けてきたツユマ産の小麦粉から作られたパンの味を忘れてはいなかった。急に涙が落ちた。鼻水が心を詰まらせ、胸が苦しくて。

「いいですか? それはツユマ村の最後の小麦粉から作られたパンです。言い換えるならツユマ村で作られた最後の命です。あなたは、その命を繋いで行かなければなりません。でも気負う必要もありません。今日からあなたはここの一員です。私達の家族です。それに__」

 ルテには後の言葉が聞こえていなかった。ただ泣いた。必ずこの命を繋いで行くと、10歳の少女には重たい誓いをたてた。

リンさんはお気に入りキャラの一人。

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