5.攻め人ギルド
ルテが目を覚ましたのは、自分の部屋によく似た部屋の、ふかふかのいい匂いのするベッドの中だった。体から血生臭さは消えていたが、まだあの光景が目に焼き付いていてルテは震えた。
ドアが開く音にも敏感に反応し、入ってきた人を定まらない目で見つめる。その者は子供なのかやや高い声で言う。
「あっ! よかったぁ。目が覚めたんですね!」
やや短いツインテールの、艶がよくかかったブラウンの髪。色のよい肌の上に見る者を落ち着かせるような優しい黄色の瞳。鼻は小さく、唇は可愛らしい。赤い着物のような服を見にまとっていた背の低い女性。ルテは警戒を隠せない。
「あっ、えと私、リンっていいます。一応このギルドハウスの家事全般を取り仕切ってます」
リンという女性はにっこりと微笑む。だがルテはがたがたと震え続けた。
「ここは、どこ?」
小さい声でそう尋ねるのがやっと。
「えとアード国の西端、ミンダスですよ。そのミンダスの攻め人ギルドのギルドハウスの二階の私の部屋ですね。生憎、空き部屋が他に無かったので」
リンは頭に手をやって苦笑いを浮かべた。
「私の……村は?」
そう聞くとリンはうつ向いて静かに答えた。その優しい表情とは裏腹に、手は強く握りしめられている。
「……ツユマ村は……もう人が住める場所では無いでしょう」
そしてリンはまだ震えているルテに近寄り抱いた。不思議な暖かさと、村が終わった事にルテは胸がいっぱいなって泣き出した。リンはそんなルテの頭と背中を撫でながら「恐かったですよね。でも大丈夫。もう大丈夫ですよ」と言い聞かせていた。ルテはリンを強く抱きしめ疲れきるまで泣き続けた。幼い彼女に、両親と村がいっぺんになくなったという事実はあまりにも重すぎる。むしろ、彼女の精神が壊れない事が奇跡に近かった。
やがてルテは泣きながら眠りに落ちた。リンはそれを確認するとルテをゆっくりベッドに倒れさせ、上から毛布をかけた。それから優しく微笑んでルテの寝息を子守唄に、ベッドに寄りかかって目を閉じた。
月がさんさんと輝く夜の事だった。
リンさんは実は凄い人だったり……。




