表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アタッカー  作者: 空白スラ
3章:孤独な青狼娘ルテ
14/19

7,ミンダス守ります-1

 ルテは剣を左手に駆けていた。精一杯に足を前へ出し続け風を切る。それを追う、3匹の黒い狼もまた。

 ミンダスの市場は殺伐としていて今は歩く人の1人さえいない。あるのは死の臭いと血の臭い、それと肌にはりつく言い様の無い絶望。並べられていた果物はばらばらに転がり、露店の屋根は粉々にされ、ガラス、壺の破片、レンガさえ散乱していた。

 ルテの前に、また1匹狼が阻む。ルテと同じく目が赤の狼。まるで、複製された自分に襲われているようなルテ。

 走りながらためらわず剣を一瞬で振り抜き正確に首を切り裂く。少し遅れて鮮血がほどばしり、狼は水晶が割れるように破片となって消える。

 そこでルテは急ブレーキをかけ、砂ぼこりをたてて反転する。狼3匹は構わず突進し、ギラギラと光る目をルテの首もとに据えて爪や牙を近づける。

 ルテは狙いが集中したところに剣を合わせて弾き返す。しかしさすがに反動は大きく、足が地面を滑る。その隙を逃さず1匹ずつが微妙にタイミングをずらしてルテに襲い掛かる。金属音が響く度に体制は崩れ、3匹目の攻撃を防いだころには膝が地面についていた。 

 歯軋りするルテにすかさず次の一撃が振り落とされようとした。ルテは横に身を倒し砂煙に紛れながら転がる。空を切り裂いた爪は地面を捕らえた。低い姿勢のままルテは狼の四肢を薙いで立ち上がる。

 残りは2匹。体力に余裕もなく、挟まれればその時点で終わる。そう悟ったルテは睨みをきかせ、牽制し続けた。

 ルテの集中が途切れたのは、乾いた音が聞こえてからだった。片方の狼がうめき声も立てられずに粉々になり、もう片方はルテを超えて走り去った。ルテが視線を数少ない残った建物の上に向けると、白光りする銃を両手に持ったクウがいた。

 ルテを見るとクウは無言で頷き、迷わず引き金を引いた。ルテを飛び越えた弾丸は、逃げ去る狼を正確に撃ち抜いた。

「ルテ、一度風車前に集まれってルークさんから」

 ルテは頷いてその場を後にした。目指すはミンダス村の中心部に立つ風車。地下には巨大な貯蔵庫があり、ミンダスの人々はそこに避難している。焼け跡は無かったが、ルテは過ぎていくこの光景に、あの時のツユマ村を思い出していた。二度とあの悲劇を起こさない為に、攻め人として生きる道を選んだのだ。ここでそれを果たさなくてどうするか。ルテはそう自分に言い聞かせて震えが止まらない脚を動かした。

 風車につくまで、二、三匹の狼と遭遇したが一匹ずつだったため出会い頭に切り捨て、無傷の状態でルテは風車前にたどり着いた。せせらぎが砂に染まっているのを除けば。全ての攻め人が集められているのか、人の数が多い。ルテはルークを探して人の合間をすり抜けて行った。しかし、それは無駄に終わる。すぐにルークはその場にいる全員に呼び掛けたからだ。

「お前らのおかげで全員が無事避難できた。後はどれだけここを守れるかだ」

 大小、男女、見た目に違いはあれど全員がルークの話を黙って聞いている。それはギルドの長にかける信頼あってのものだろう。

「これからいくつかのやつには個別でここの防衛に関しての役割を与える。呼ばれたやつは残っててくれ。後は常に複数人で行動しながら遊撃戦を続けてくれ。あまり深追いはするな。必ずリーダーがいる。そいつを見つけたらすぐに黄色の花火をあげて俺に知らせろ。緊急時には赤い花火をあげろ。すぐに仲間を向かわせる。以上だ」

 今回の守り手はおおよそ獣タイプ。獣タイプは強いリーダーに群れる習性があり、必ずリーダーと共に生まれてくる。ルテはそんな事を思い出しながら、腰の花火を再度確認していた。その矢先、ルテは名前を呼ばれたのだ。顔をあげてルークのもとへ走りだそうとすると、不思議と震えが止まっていた事に気がついた。

「さてルテ。お前は緊急時要員だ。俺とここに残って黄色い花火を見たらそこへ向かえ。赤い花火も同じだ」

 ルテは頷きながらも歯がゆかった。待つ間、仲間はずっと危険にさらされ続けるのだ。

「お前さん、ここが一番危険だって事、わかってないだろ」

 見透かしたようにルークが言った瞬間、空に赤い花火があがった。

「そら、行ってこい」

 ルークに言われる前にルテは駆けていた。脚が棒になっていくにつれて剣を握る手に力がこもる。飛び込むように割り入った二匹の狼と倒れた仲間の間。ルテは震える手を必死に抑えて目に闘志を宿した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ