6.異常事態の窓口
レースの仕切り布を背に、水流が止まっている。落ち着いた茶色系の色に統一された家具は無言で佇んでいたが、真ん中の机は乗せられた書類に少し不満げだった。
「聞いてくれルーク。こう、黒い液体がモルバーグを包んだと思ったら……」
ギルドハウスの一階。食事場奥の部屋にルテの声が響いた。ルークは机で退屈そうに頬杖をつき、目を細めている。ルークは半ば辟易していた。
「わかったわかった。報酬の件は交渉しといてやるから今日はもう寝させてくれ。お前さん達のを含めて依頼書との食い違いが今日は4件もあったんだ。しかも情報元からは知らないの一点張り。板挟みはたくさんだ」
声を小さくして「おまけに犠牲者まで出やがった」ともつけ加えた。
ルテは黙り込んだ。拳が握りしめられわなわなと震えるのが自分でもわかった。ルークは粗雑にルテの頭に手を置き軽く水面を波立たせた。
「追加報酬の交渉はしなくていい」
ルテはそれだけ言ってドアに手をかけた。
「ルテ……わかっちゃいると思うが……早く寝ろよ」
「そっくりそのままお前に返す」
せせらぎはドアを潜ってその先の暗闇へと消えていった。
ルークはため息をついて書類を片付け始める。「明日は絶対に何かある」そう攻め人としての勘がうるさく言うのだ。きっとそれはルテも同じだったのだろう。
耽る夜に紛れて、漆黒を纏う獣が颯爽と草原を駆け抜ける。赤光する眼は、ミンダスを捉えていた。




