2.モルバーグ攻めます。(後編)
小さい傷を負ったモルバーグは丸まり、真っ直ぐルテに突進してくる。先程のバックステップで距離をおいた事もあり、ルテは難なく左に避ける。クウもそれに合わせてかわす。ハリネズミは勢いあまり壁にめりこみ、フィールドが揺れた。抜け出せないのか針玉は必死にもがく。
「お、おい、どうするんだ? これ」
ルテはおおいに戸惑うが聞かれるクウも頭を掻くばかりで。
しかし次の瞬間、漆黒がハリネズミを包み込む。紫の剣山は一気に墨をかぶる。そして先から液はしたたる。ぐにゃりと剣山はスライム状にたれ、窪みから少し離れたところで再生する……針玉に。
全く理解できない光景に、勝機の兆しは敗北への兆候へと姿を変えていた。音も無く、針は虚空を駆け抜け肉に突き刺さる。その速さに対処しきれず、クウは顔を激痛に歪ませながら血を地面に落としていく。出血毒は健在のようで緑の薄汚いコートは補色で染められていった。
「クウ!」
その光景にルテは握りが甘くなり、剣は彼女の手から滑り落ちた。信じられないと同時に恐かった。敵の目の前だというのに、ただ両腕で自分を抱き締めて震える事しか彼女にはできない。ルテの脳裏に高々と燃え上がる火と、救いを求める子供達の声が焼きついた。その中心で血まみれになる自分……飛び散った手や足や体の中身……甦ってはいけないトラウマに反狂乱。がたがたと体は地震。目からは豪雨。
首に巻き付く翡翠の首輪は、悲鳴をあげて砕ける。そして、ルテの視界を無が包んだ。
「……テ、ルテ」
聞きなれた声がルテを呼ぶ。ルテはクウに寄り添う様に寄りかかっている。クウとルテの目の前には、赤い水溜まりが出来ていてピンクの内臓だろうか、そんなものがぐちゃぐちゃに引き裂かれた状態で散乱している。折れた針やむき出しの骨につく肉片も生々しく存在を主張する。
「……アルーン?」
その単語にルテの体はぴくりと疼くが、それ以上の反応は無い。クウはルテを起こすことを諦め、またおぶって帰る事にした。
NEW! 守り手ファイルに『モルバーグ』が追加されました!
NEW! 二章『恐れし青狼と少女の過去』が解禁されました!
一旦2章へ。もちろん3章を読み進めてもらって構いません……続きがあれば。(1/18日に更新したのでね)




