落語声劇「お化け長屋」
落語声劇「お化け長屋」
台本化:霧夜シオン@吟醸亭喃咄
所要時間:約40分
必要演者数:3名
(0:0:3)
(3:0:0)【性別準拠人数比率】
(2:1:0)
(1:2:0)
(0:3:0)
※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。よって性別は一応すべて不問ではあります。また、元となった落語を声劇として成立させるために、大筋は元の作品に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。
●登場人物
源兵衛:長屋の住人その一。空いてる家を物置代わりにしていたところを
家主(大家)に見つかって怒鳴られたのを逆恨みし、杢兵衛と
一緒に貸家に越してくるのを阻止し隊を結成。
杢兵衛:長屋の住人その2にして、貸家に越してくるのを阻止し隊その
2。多少知恵が回る。
あだ名は「古狸の杢兵衛」。
家主:杢兵衛、源兵衛の住んでる長屋の大家さん。
男1:最初に源兵衛の向かいの家を借りに来た男。
杢兵衛さんに怪談話をされて飛び上がって逃げ帰るほどの臆病者。
がま口は落っことすわ、下駄は履き忘れるわで散々な目に。
男2:二番目に家を借りに来た男。威勢がいい、典型的な江戸っ子。
幽霊なんぞものともしない性格。
●配役例
源兵衛:
杢兵衛:
男1・男2・家主:
※枕は演者同士で話し合って誰かが兼ねてください。
枕:「四つごろに 出る幽霊は 前座なり」なんという川柳がございます。
四つと申しますってと現在で言う夜の22時ですな。
その頃に出てくる幽霊というのは前座だと、こう言うわけです。
これは寄席で夏場になると怪談噺をよくやります。
噺が佳境に入ってきまして、幽霊が登場するのがちょうどその位の
時間だと、こういうわけです。
ですから、昔の寄席は現代に比べると終わるのが遅かったんですな。
そして、怪談になる舞台というのも実にさまざまで、人のいるところ
や住んでる所に出る。ま、当然でございますな。
狐狸妖怪の類だけでなく、かつて生きていた人もお化け幽霊になるわ
けですからな。出てくるのもお城だったり武家屋敷の井戸だったり、
はては何にもない野っ原だったりするんですが、なかでも現代のアパ
ートである長屋、ここも幽霊の出るかっこうの舞台だったりするわけ
です。
それでこの長屋なんですが、何軒か必ず空いていたそうです。
よく長屋三十六軒なんどという言い回しがございますが、そのうちの
何軒かは必ず空家であったというわけですな。
そしてすでにそこに住んでいる者たちにとっては、それはたいへん
都合よい事だったそうです。それはなぜか。
仮にすべての長屋に入居者がいたとすると、大家がたいへん横柄にな
りまして、
「なんだいお前さん、店賃が払えねえんなら無理にいて
もらわなくたっていいんだ。借りたいって人ならいくらでもあるんだ
。出てってくれ」
なんてこと言いだしかねない。
だから何軒か空いてると向こうが遠慮するから、あえてそうなるよう
にしむけていたんだそうで。
源兵衛:どうでもいいけどさ、杢さんの前だが、
ここの家主くらい忌々しいのは無いね!
杢兵衛:そういえばさっきなんだか知らねえけど怒鳴ってたね。
いったいどうしたんだ?
源兵衛:いやこれがね、くやしいんだ。
こないだウチのかかあに頼まれてね、菜漬けの樽を
表の八百屋でもらってきたんだ。
かかあもまたそれをすぐに古い樽から漬け換えりゃいいのに
不精してそのままにしててよ。
で、家のなかは狭いだろ?
だけど表に出しといて持ってかれたりなんかしちゃつまらねえ。
それでほら、ウチの前の空いてて貸家になってるとこに、
その樽を入れといたんだよ。
杢兵衛:へえ、そうだったのかい。
源兵衛:そしたら今日、家主の奴が来やがってよ、
見つかっちまったんだ。
家主:なんだい、こんな事をして!ええ?
馬鹿なマネをしてもらっちゃ困るよ!
源兵衛:ってんで樽を表へポーンと放り出しやがった。
いきなりそんな事されたから文句を言ったんだ。そしたらよ、
家主:なに言ってんだい、ろくに店賃も払ってないってのに、
その上またここをタダで使おうってのかい!?
ここはお前さんの物置じゃないんだよ!
杢兵衛:はああ、小言の言いようてものがあるよね。
源兵衛:そらぁこっちだってね、断りもなしに置いたのは悪かったよ?
悪かったけどもさ、みんなに聞こえよがしに大声でそんなこと
言うこたぁねえだろ。
杢兵衛:たしかにそりゃいくらなんでもやりすぎだね。
源兵衛:よっぽどケツまくってやろうかと思ったけどさ、
店立てを喰わされちゃかなわねえ。
だから我慢しちゃったんだよ。
杢兵衛:まあ仮にも家主だからね。
源兵衛:仮にってなんだよ。
さあそれからどう考えても虫が収まらない。
なんとか一つ仕返しをしたいと思ってね、いろいろ考えたんだ。
杢兵衛:へえ、それで何かいい知恵が浮かんだかい?
源兵衛:おう、あすこの家にね、ずっと人が越して来ないようにしてやろ
うと思ってよ。
杢兵衛:ほうほう、なるほど。
へへ、それはおもしろいね。
源兵衛:だろ?相手が家主じゃ、へたな事はできねえからよ。
杢兵衛:それで、どうしようってんだい?
源兵衛:そこまではまだ考えてない。
ーーそれで杢兵衛さん、あんたは知恵者だ。
ちょいと頭をひねって考えてもらいてえんだ。
なんかいい方法ないかい?
杢兵衛:はは、なるほどね。
いや、知恵者というほどのものじゃないけどそうだね、
そういう事は好きだよ。
ふうむ、あすこの家に人が越して来ないようにね…
うーーんそうだね…………お、そうだ、いい事がある。
源兵衛:お、さっそく浮かんだかい。それで、どんな考えだい?
杢兵衛:いいかい、あすこの家はお前さんのとこの向こう前だ。
あすこを借りたいなんて人は、よくお前さんの家に
聞きに来ないかい?
源兵衛:ああ来るよ。もうね、のべつだよ。
多い時には日に五、六人は来るね。
そのたんびにこっちは家主の家を教えてるんだ。
杢兵衛:いやだからさ、その時に家主の家を教えないで、
何とかうまい事を言ってあたしんとこへよこしなよ。
そしたらあたしがうまい具合に話をして、借りないようにして
追い返しちまうから。
源兵衛:へえぇ、大丈夫かい?
杢兵衛:大丈夫だよ。任しときな。
源兵衛:そうかい?
じゃあ借りたいって人が来たらここへよこすから、頼むよ。
【二拍】
男1:ごめんくださいまし。ごめんくださいまし。
源兵衛:さっそく来やがったよ。
--はいはい、なんです?
男1:あの、向かいの貸家のことでうかがったんでございますが、
まだ借り手は決まってないんでしょうか?
源兵衛:そうですね、札の取れてないとこを見るとまだ決まっちゃいない
んでしょ。
空いてますよ。
男1:そうですか。
あの、お家主さんのお宅はどちらでございましょう?
源兵衛:家主ですかい?
それがね、ちょいと遠方なんですよ。
男1:え、そうなんですか。
源兵衛:ぁいやいや、心配なさる事はありませんよ、ええ。
そこへわざわざいらっしゃる事はないんで。
家主からね、この長屋の事を万事任されてる人がいるんですよ。
差配みたいなことをしてるのがね。
男1:はあ、そういう方がいらっしゃるんですか。
源兵衛:あのほら、後ろを見てごらんなさい。こっから見えましょう?
あの奥の四つ目垣の八つ手の植わっている家。
男1:ああ、あの家ですね。
源兵衛:そうそう、あすこにね、古狸の杢兵衛さんて人がいますからね、
そこへ行って聞いてごらんなさい。
万事心得てますから。
男1:そうですか、いや、ありがとうございました。
源兵衛:…さて、杢兵衛さんどんな話をするやら…。
男1:ごめんくださいまし、ごめんくださいまし。
杢兵衛:はいはい、誰だい?
男1:あの、古狸の杢兵衛さんのお宅はこちらでございましょうか?
杢兵衛:これァ驚いたね…陰で言われてんのは知ってたけどね。
面と向かって言われたのは初めてだよ。
ーーはいはい、あたしが杢兵衛ですが、何か用ですか?
男1:はい、路地内の貸家の事でうかがったんでございますが、
よろしゅうございましょうか?
杢兵衛:ああそうですか、ええ結構ですよ。
まぁまぁ、こっちへお入りなさい。
ーーで、中はもうご覧になりましたか?
男1:いえ、まだですが…。
杢兵衛:え、まだ見てない?
あそこね、戸が開いてるんですよ。鍵かけてないんですから。
まぁまぁ、いいですよ。後でね、あたしがご案内しますよ。
男1:そうですか、よろしくお願いします。
杢兵衛:まあおおよその事を話しますってとね、まず戸を開けて入ると
靴脱ぎになってましてね。
上がって二畳、左手が台所、かなり広く取ってありますんでね、
ご夫人がたには喜ばれますよ。
で、その二畳の先のとこは四畳半で、
左手の奥に八畳、あと南が大きく空いてますんでね、
日当たりはいいですよ。
それにわずかばかりですけど庭が付いてますんでね、
なかなか使い良い家ですよ。
男1:はあぁそうですか!結構でございますな!
ぜひともお借りしたいと思っておりますが、ええと、造作のほうは
いかがでしょう?
杢兵衛:えぇそれはもう、すっかりついてますよ。
男1:それは助かります。
あの…それで、敷金はいかほどでございましょう?
杢兵衛:敷金?敷金はね、無しですよ。
男1:えっ!?あの、いらないんでございますか?
いや、それはどうも助かりますな。
それで、お家賃のほうはいかほどで?
杢兵衛:ああ店賃、ね…。
店賃は、その、あなたのほうがね、払いたいと思っ
たら払えばいいし、
こんな家には払いたくないやと思ったら、払わなくてもいいんで
すよ。
男1:はあ…ーーってと、あの、タダでございますか…?
杢兵衛:そうだね。
男1:え、タダ…、あの、タダというのは…その、何かわけがございます
か?
杢兵衛:えぇそりゃあありますよ。
今どきあれだけの家を建ててですよ?タダで人に貸そうなんて
そんな酔狂な人はいませんよ。わけがあるに決まってるじゃあり
ませんか。
男1:はぁぁそうですか。
それじゃ、どういうようなわけなんでしょうか?
杢兵衛:【言いにくそうに】
うん、それはね…、あたしも本当はあまり話したくないんだが…
うん、弱ったなァ…。
でもまあ、こういう事があるんだったらなぜ越してくる前に
ひとこと言ってくれなかったのかと、恨み言を言われるのも
嫌ですからね……まあ、お話しますよ。
男1:えぇ、お願いします。
杢兵衛:まま、そこではお話が遠くなりますから…まぁどうぞ、こっちへ
【幽霊っぽく】
おあがんなさい…。
男1:へ…?
杢兵衛:【幽霊っぽく】
おあがんなさい…。
男1:あ、さ、さようでございますか。
では、ちょっと失礼をいたします。ごめんください。
…っで、で、あの、なんでございます…?
杢兵衛:いや、実は今を去ること三年ばかり前にね、あそこの家に
年ごろ二十八、九になる後家さんが一人で住んでおりましてな。
大変な働き者でね、朝から晩まで長屋の掃除洗濯賃仕事、
まるでコマネズミのようでした。
その上なかなか色白で器量よし、
と言って気取りが無くて愛想がいいから馬鹿に評判がいい。
まあ昔からよく、女やもめに花が咲くと言いますな。
「おかみさん、いつまでも女が一人でいるってとね、世間に馬鹿にされ
るから、私がひとつ暮らし向き一切を面倒見ようじゃないか。」
とか、
「せめて、家賃だけでも持たして下さい」なんて話がいっぱいあ
りましたがね、
「いえ、男は先の亭主でこりごりでございます」と言ってね、
これっぱかりも妙な噂が無い。
まことに物堅いおかみさんでしたよ。
男1:はぁぁえぇえぇ、さようでございましたか。
杢兵衛:そうですな…あれがちょうど花嵐時分でした。
ある晩にそのおかみさんのところに泥棒が入りましてね。
男1:それはご災難でございますな…。
杢兵衛:泥棒が荷物をこしらえてどっこいしょと背負って、
さあ表へ出ようとひょいと脇を見るってと、
おかみさんがかいまきを掛けてすやすやすやすやと寝ている。
その年増女の寝乱れ姿を見て、泥棒がむらむらっと
妙な了見を起こしましてね。
いったん背負った荷物をそこへ下ろすと、いきなりおかみさんの
胸元へ手を差し込んだんですな。
男1:はぁぁ嫌な奴ですなぁ。
杢兵衛:もとより物堅いおかみさん、ぱっちり目を開けて見ると
雲を衝くような大男、覆面頭巾でのしかかってきているから、
「きゃーーーっ、泥棒!」と叫んでしまった。
泥棒も自分の身が可愛いから隠し持っていた匕首で斬りつける。
わっと言って逃げるところを髪をつかんで手元へ引き寄せると、
グサーッと突き立てたのが乳房の下。
これが致命傷というやつで、おかみさんは虚空をつかんで
ばったりと倒れた。そのまんま泥棒は随徳寺。
男1:あぁいたましいですなぁ…。
杢兵衛:【情感たっぷりに】
倒れてるその形相のものすごさ…女がいいだけによけい怖い…!
男1:えぇえぇ、そうでしょうとも。なるほど…。
杢兵衛:誰も身寄り頼りの無い人ですから、長屋の皆で弔いはねんごろに
いたしましてな、畳を取り替え、壁を塗り替え、掃除をして、
また貸家の札を張ると、まああれだけの家ですからな、
すぐに借り手がついた。
男1:そうでしょうなあ、あれだけの使い良い家ですからな。
杢兵衛:ところが越してきた人は、たいがいの人が三日四日、
長い人で六日でもって出て行ってしまうんです。
男1:え、そ、それはいったい、何があったんです…?
杢兵衛:あたしも初めは分からなかったんですが、
いちばん終いに出て行った人に聞いて驚きました。
【だんだん怪談っぽい語り口に】
越してきて一日二日は何ともないが、三日四日と経つうちに、
雨がしとしとしとしとと降る晩なんぞがある…うふふふ…。
男1:い、嫌ですなあ…お、恐れ入りますがあの、もうちょいと陽気に…
ごく当たり前に話をできませんかね…?
杢兵衛:いや、陽気に話をしたいんですがね、どうしてもそれができない。
ま、我慢をして聞いて下さいよ。
【怪談ぽい語り口調に】
宵のうちは世間もにぎやかだが、夜が更けるにしたがって次第に
シーン…となる。
どこで打ちいだすか遠寺の鐘が陰にこもってものすごく、
ごぉぉん…と鳴りますとね、お仏壇の鉦がチーン…と
鳴るんですよ…。
男1:ひ、ひえぇ…だ、誰が鳴らすんでございます…!?
杢兵衛:【怪談ぽくおどろおどろしく】
ひとりでに鳴るんでございますよ…。
男1:ぃ、嫌な家でございますなあ…!
え、えぇわかりました、そういった次第でしたらーー
杢兵衛:【↑の語尾をさえぎっておどろおどろしく】
まぁあなたお待ちなさい…しまいまで聞きなさい…ねえ?
おやおやと思っていると、縁側の障子に女の髪の毛のあたる音が
サラサラサラサラしたかと思うと、その障子が音もなくすー…と
開きましてね…、生あったかい風がふーっと吹いてくると、
殺されたおかみさんの幽霊が髪をおどろに乱して、すー…っと
入ってきましてね、寝ている人の枕辺へ立つと、
その人の顔を見てケタケタケタっと笑うんですよ…!
男1:っい、ぃっいえっ、もうっ、もう結構ですっ…!
もうわたくし帰りますっ…!
杢兵衛:まあ待ちなさいよ。
【おどろおどろしく】
「まああなた、よく越してきてくれましたね」
と冷たい手でその寝ている人の顔をつーーっ…
男1:【↑の語尾に喰い気味に】
ぎぃゃあああああーーッッ!!
杢兵衛:!!ッッお、おぉ…!
あぁ驚いた…なんだよあいつは、ええ?
脅かしてるこっちが驚いたよ。
一尺ばかり飛び上がりやがったね…。
あぁあぁ、裸足のまま表へ飛び出してって…
まあゴミ箱は蹴散らして、大変な騒ぎだよどうも…ハハハ…。
お?なんか落っことしていきやがったよ。
こりゃがま口だよ、こいつァありがたいね…どれどれ…。
おほっ、入ってるねえ…!
こういう儲けがあろうとは思わなかったなぁ、
下駄もあるし。普段履き買おうと思ってたとこなのに、
間に合っちゃったな。
源兵衛:おう杢さん、どうしたんだい、いまの奴。
なんだか知らねえけど、真っ青な顔して表へ飛び出してったよ。
うまくいったのかい?
杢兵衛:ああ、大丈夫だよ。追い返してやったんだ。
あれァもう越して来ないね。
源兵衛:へえ、いったいどうしたんだい?
杢兵衛:うん、怪談話だよ。
源兵衛:え?なんだって?
杢兵衛:怪談話をしたんだよ。
あすこの家にね、三年ばかり前に後家さんが一人で住んでて、
そこに泥棒が入ってその後家さんが殺されて、
その幽霊が出るという話のすじだね。
もうさんざん脅かしておいてね、いちばん終いにその幽霊が冷た
い手でもって寝ている人の顔を撫でるって時にね、
ほら、そこに濡れ雑巾があったから、それでもって野郎の顔を
スッと擦ったらぴょーんって飛び上がりやがってさ、
裸足でもって表へ駆けだしてったよ。
源兵衛:へええ、そりゃあ驚いただろうねえ。
杢兵衛:もう下駄はそのまんま脱いでってくれるしね、それにさっき
ひょいと見たら、そこにがま口を忘れてったんだよ。
なかを見たらね、ちゃんとお足が入ってんだよ。
これで寿司でも取ろうじゃないか。
源兵衛:ははは、そりゃ儲かるなあ!思わぬ実入りだね!
じゃ、またうちに来たらこっちへよこすからよ、頼むよ!
杢兵衛:あぁ、任しときなよ。
【二拍】
源兵衛:へへへ、しかしこりゃいい考えだったなあ。
男2:【べらぼうめぃ!!と言ってますが、かなり巻き舌で】
アウッ!!ぶらぼんめィ!!ぶらぼんめィ!!
源兵衛:??なんだよおい、ぺらぺらぺらぺら言ってんな。
家に用なのかな?
男2:だれもいねえのかァ!?おうッ!!
返事がねえってところをみると、死んでんのかァ!?
源兵衛:乱暴な奴だねどうも。
…うちに何か御用で?
男2:おぅ御用、御用御用!御用だよ!
あのな、ほら、前の貸家よ。あそこどうだ?塞がってんのかい?
源兵衛:あぁいやいや、まだ貸家の札が取れてないところを見るってと
空いてるんでしょう。
男2:空いてる?へへっちきしょう、ありがたいねどうも。
で、家主んところどこだ、家主の家。
源兵衛:あ、家主さんはね、ちょいと遠方なんですよ。
男2:遠方ってどこだよ。
まさか外国じゃあるめぇし。
源兵衛:なんです、外国って。
男2:日本にいねえのかてんだよ。
源兵衛:いや、日本にはいますがね、わざわざそんな遠くまで行かなくた
って、この長屋に家主から万事任されている人がいますよ。
そこから見えるでしょう。壊れかかった四つ目垣のあるヤツデの
植わっている。あの家ですよ。
あそこに古狸の杢兵衛さんて人がいて、その人が万事心得て
いるんで、そこ行って聞いてごらんなさい。
男2:何をォ?古狸の杢兵衛?
なんだいそいつは?
源兵衛:いや、この長屋で一番古い方、草分けなんで、そういうあだ名が
ついてる。
男2:ハンッ、しょうがねぇなあこんちきしょう、ええ?
こんな小汚ねェ長屋にいやがってよォ、え?
表通りに這い出す事ができねえ。
古狸なんてあだ名をつけられるくらいこんな所にくすぶってるよう
な野郎じゃ、どうせ大したもんじゃねえだろ。
源兵衛:…あんたね、そんなに悪く言うんだったらここに越してこない
ほうがいいでしょう。
男2:大きなお世話だよこんちきしょう!なに言ってやんでェ。
俺ァな、永代ここに腰をすえようとか、
松木を植えようってんじゃねえ、仮の住まいなんだよ。
実はな、来月になるってェと仲から俺の女がよ、
年が明けてやってくるんだ。
俺ァいま親方ンとこに居候でよ、夫婦そろって居候ってのも
気がきかねえじゃねえか。だから仮にあすこに住まおうってんだよ
。
へへへ、俺の女ァいい女だよ。そんじょそこらにはいねえんだ。
色っぽいんだからよ、へへ。
それに迷って変な目つきなんかしやがると、張り倒すぞこんちきし
ょう!
源兵衛:な、なんだよまったく。のろけてるよ。
とにかく行ってごらんよ。
男2:わかったよ!
【二拍】
狸はいるかィ狸は!?
杢兵衛:乱暴な奴だね。
名前も何にも言わねえでいきなり狸だって言ってるよ。
はいはい!あたくしはね、杢兵衛と申します。
男2:あぁわかったよゥいたよォいたなァこのたぬ杢兵衛!
杢兵衛:たぬ杢兵衛てのはないよ。
大変な奴が来やがったね。
それで、なんかご用ですか?
男2:おう、あんなァ、路地口んとこの貸家のことで来たんだ。
すぐ向かいの野郎に聞いたら、ここへきたら分かるっつったんで
来たんだよ。ほらなんだか知らねえがいるだろ?
無理に引っ張りだされたモグラだか青びょうたんに屁を引っかけたような
ようなツラぁしたのが。なんかこう、ばぁーってしたのがよ。
で、あの家、空いてんのかい?
杢兵衛:ええ、空いてますよ。
男2:お、空いてんのかい!じゃ、中はどういう事になってんだ?
間取りだよ間取り。はっきり言え。
杢兵衛:…まあおおよその間取りはね、まず戸を開けて入ると
靴脱ぎがあって、上がって二畳、左手が台所、かなり広いから
ご夫人がたは喜びますよ。
二畳の先は四畳半で、左手の奥に八畳、
あと南が大きく空いてるから日当たりがいいですよ。
それに小さな庭が付いてる。
男2:庭が?へへ、奢ってやがんな。
乙な家じゃねえか。気に入ったな。
それで、造作のほうはどうなってんだ?
杢兵衛:造作はみんな付いてますよ。
男2:みんな付いてる?へえ、それじゃなんだろ、敷金やなんかで
高えこと言おうってんだろ?
杢兵衛:敷金?敷金はね、いらない。
男2:何をゥ?敷金がいらねえ?本当かい?
ふゥン、これァありがてぇな。そういうのが一番助かるんだよな。
じゃあなんだ、やっぱり家賃でもっておっそろしく高えこと言おう
ってんだろ?え?
あんまりふざけた事を言うんじゃねえぞ。
てめえの体の事を思ったら、あんまりバカなことはーー
杢兵衛:【↑の語尾に喰い気味に】
まだ何も言っちゃいないよ。気の荒い人だね。
えー家賃、店賃ね。
店賃はね、あなたが、払いたいと思ったらお払いなさい。
こんな家には払いたくないと思ったら、払わなくてもいいですよ
。
男2:ふゥン…?
ってェと、タダ?タダかい?あの家が?
こりゃあいいや!ありがてぇなぁ!
いいなァ、気に入っちゃったよ!
じゃあ俺ァあそこ借りるよ!明日すぐに引っ越してーー
杢兵衛:【↑の語尾に喰い気味に】
っちょちょちょちょちょいと、ちょいとお待ちなさい!
男2:あん?なんでェ?
杢兵衛:いいですか、あれだけの家ですよ?
敷金もなし、家賃もタダ。
なんか変だと思いませんか?
男2:うーん…そりゃあ、変だって言われれば変かもしれねえや。
けどいいや、変だって。タダだろ?
杢兵衛:いや、ちょ、あのね、あなた。
タダほど安いものはないと思ってるでしょう?
それが違うんですよ。
あれだけの家がタダなんてのは、変だと思いませんか。
男2:あぁあれだろ、幽霊が出るとか化け物がいるとか、そんなんじゃね
えのか?違うかい?
杢兵衛:【わざと声をひそめて】
はい…そうなんですよ。
男2:そりゃそうだろなあ、タダだもの。あたりめぇだよ。
それで何にもねえってんじゃ、そのほうがおかしいよ。
まあいいや、そのぐらいのもんが出た方が退屈しねえってもんだ。
杢兵衛:ぇ、い、いや、あのあなたね、そんなこと言いますけどもね、
これが大変なんですよ、ええ。
わたしだってね、したかないんだけどーー
男2:【↑の話すのをさえぎって】
いいよ、話さなくて。
杢兵衛:え、えぇ!?い、いや、そりゃ、だけどもね、
もしこういう事があるんだったら、なぜ越してくる前にひと言
言ってくれなかったんだと、恨み言をねーー
男2:【↑の話すのをさえぎって】
んな事ァ言わねえよ、俺ァ。
もう分かったからいいや、あした越してくるからよ!
杢兵衛:っちょちょちょいと、お待ちなさいよ…!
あなた、そんなこと言わないで聞いて下さいよォ…!
男2:??涙ぐんでやがるよ。
しょうがねえな…聞いてやるよ。
で、どういうことなんだ?話してくれよ。
杢兵衛:【気を取り直して怪談話の前準備に入る】
ゴホン…ま、そこでは話が遠くなりますからな。
どうぞこっちへ、おあがりなさい…。
男2:何をォ!?
杢兵衛:【怪談話モードに入る】
ぉあがんなさい…。
男2:なんか食ってんのかてめぇは、ええ?
まるで腹に力が入ってねえぞ。
上がれってのか?はっきり言えよおい。
なに言ってんだか分かんねえじゃねえか。
ったく、厄介だなおい。
ーーほら、上がったぞ。何か食わしてくれんのか?
杢兵衛:馬鹿なこと言っちゃいけませんよ。
…それでは、これからお話をーー
男2:【↑の話すのをさえぎって】
おうおう、ちょいといいか?
俺ァな、気が短けぇんだ。長ったらしい事は嫌だよ。
トーンとやってくれ、トーンと。いいかい、分かったかい?
さ、どんな話なんだ?え?どんな話だ?
杢兵衛:ちょちょちょ、ちょいと待っておくれ。
そうガミガミガミガミせっつかれると私も話がしにくいよ。
…実はね、今を去ること三年ばかり前ーー
男2:【↑の話すのをさえぎって】
それが嫌なんだよ。「今を去ること」なんざいらないんだよ。
三年前って言やぁいいんだよ。俺ァ無駄が大嫌いなんだ。
で、三年前どうしたんだい。
杢兵衛:ぅ、ぅうん…、三年前にですね、あそこに年ごろ28,9になる
後家さんが一人で住んでた。
男2:へえ、亭主はどうしたんだい?
杢兵衛:ぅ、そ、そこまでは私も聞いてはいないね。
まあ、一人で住んでました。
大変な働き者でね、朝から晩まで長屋の掃除洗濯賃仕事、
まるでコマネズミのようでした。
その上なかなか色白で器量よし、と言って気取りが無くて愛想が
いいから近所の評判がいい。
昔からのたとえに、女やもめに花が咲くと言いますな。
「おかみさん、いつまでも女が一人でいるってとね、世間に馬鹿
にされますよ。私が暮らし向き一切を面倒見ましょう。」
とか、
「じゃああたしは、家賃だけでも持たして下さい」なんて話が
いろいろありましたがね、ーー
男2:【↑の話すのをさえぎって】
そりゃそうだろうな。
女が良くって一人でいるんじゃたまんねえやな。
野郎がほっとくわけはねえや。
おめえだって他人事のように言ってるけど、なんか言ったんだろ?
もっともおめえは暮らし向きは無理だやなあ。
と言って家賃だって払えねえだろ。
だから「おかみさん、その代わり私は水でも汲んであげますよ」
とか、
「代わりにお使い行きましょう」
なんて親切から持ち込んで、何とかしようと思って骨を折ったんだ
ろ。このスケベ狸。
杢兵衛:口が悪いねほんとに…そんな事はしませんよ私は。
まあ、「男は先の亭主でこりごりでございます」と言ってね、
これっぱかりも妙な噂が無い、物堅いおかみさんでしたよ。
それが、ちょうど花嵐時分でしたな。
ある吹き降りの晩に、そのおかみさんのところに泥棒が入りま
してね。
男2:泥棒?
惜しいなァ、俺がもうちょいと早く越してきてたらふんづかまえて
やるってのによ!
で、どうしたんだい。
杢兵衛:泥棒が荷物をこしらえてどっこいしょと背負って、
表へ出ようとする。ひょいと脇を見るってと、
おかみさんがかいまきを掛けてすやすやすやすやと寝ている。
その年増女の寝乱れ姿を見て、泥棒がむらむらっと妙な了見を
起こしましてね。
いったん背負った荷物をそこへ下ろすと、
いきなりおかみさんの胸元へ手を差し入れたてえやつですよ。
男2:胸元にィ?手ェ入れちゃったの?おっぱいに?
へへへへ大胆な奴だねェェ。
俺ァそういう話がでぇ好きなんだよ!
で、どうしたんだい。え?どうしたんだい?え?
杢兵衛:前へ出てきたよ、しょうがないね。
本当に嫌な人だよ。
もとより物堅いおかみさん、はっと目を開けて見ると
雲を衝くような大男、覆面頭巾でのしかかってきているから、
「きゃーーーっ、泥棒」と叫んでしまった。
泥棒も自分の身がかわいいから、隠し持っていた匕首でエイッと
斬りつける。
わっと言って逃げるところを髪をつかんで、手元へ引き寄せとい
てグサーッと突き立てたのが乳房の下、
いわゆる致命傷というやつですよ。
男2:ははぁ…なるほどねェ…おう、その泥棒ってのはてめえだろ、え?
てめえなんだろ?
杢兵衛:ええ!?いやいや、私じゃありませんよ。
男2:そうだてめえだ!それでなくてそんなに事細やかに話ができるかよ
こんちきしょう!
さあ番所へ来いッ!
杢兵衛:いやっ、わっ、私じゃありませんよ!私じゃありませんって!!
男2:ハハハ、バカだねこんちきしょう。
ムキになって言いわけしてやがるよ、ハハハ…シャレだよシャレ。
バカだねほんと、ハハ…で、どうしたんだい。
杢兵衛:~~脅かしちゃ嫌だよあなた…!
そこまでこっちだって考えちゃいないからさ…えぇと、どこまで
話しましたっけ?
男2:あ?なに言ってやんでェ。
泥棒はどうしたんだよ。
杢兵衛:ああそうだ、うん、泥棒ね。
そのまんま泥棒は随徳寺。
明くる日になって、いつも朝の早いおかみさんがなかなか起きて
こないからどうしたんだろうってんで、長屋の者がみんなで
立ち合いのもと、戸をこじ開けて入ってみてあなた、驚きました
よ、ええ。
あたり一面、血の海ですよ。
その中におかみさんが眼を見開いて歯をくいしばって、虚空をつかん
で倒れてる。その形相のものすごさ…
女がいいだけによけい怖い…!
男2:【あっけらかんと】
あーそうかもしれねえな。
で、どうしたの?え?どうしたの?うん?
杢兵衛:~~っっいや、それでね…身寄り頼りの無い人ですから、
長屋じゅうでねんごろに弔い
いたしましてな、畳を取り替え壁を塗り替え、
掃除をしてまた貸家の札を張ると、まああれだけの家ですから、
すぐに借り手がついた。
男2:だろうなあ、それだけの使い良い家なんだからよ。
で、どうしたんだ?
杢兵衛:ところが越してきた人は長い人で六日、たいがいの人が三日四日
のうちに出て行ってしまうんです。
私も何があるんだろうとね、いちばん終いに出て行った人に
聞いて驚きましたよ。
【だんだん怪談っぽい語り口に】
越してきて一日二日は何ともない。
しかし三日四日と経つうちに、雨がしとしとしとしとと
降る晩なんぞがある…。
男2:ああ、そうだよな。天気ばかりじゃ困るもんな。
たまには雨降ったり風吹いたりすらぁな。
で、どうなったんだい。
杢兵衛:~~ん、んんっ。
【怪談ぽい語り口調で】
宵のうちは世間もにぎやかだが、夜が更けるにしたがって次第に
シーン…となる。
男2:はっはははよせよォおい、当たり前のことをもっともそうに言うな
よォ!
そりゃどこだって宵のうちはにぎやかだよ。夜が更けりゃシーンと
するんだよ、ええ?バカだね本当に。
で、どうした。
杢兵衛:話がしにくいなぁほんとに…!
【気を取り直して怪談ぽい語り口調で】
どこで打ちいだすか遠寺の鐘が陰にこもってーー
男2:ごぉーーーん!と鳴るのかい?
杢兵衛:~~えぇ、そうですよ…。
男2:へへへ調子くるってやがるよ、ええ?
それからどうなんだよ。
杢兵衛:【気を取り直して怪談ぽい語り口調で】
仏様の鉦がチーン…と鳴りますな…。
男2:誰が鳴らすんだい?
杢兵衛:【怪談ぽい語り口調で】
ひとりでに鳴るんですよあなた…。
男2:へえぇ、おもしろいねそらァ。
ゴーンと鳴ってチーンときたな。
今度はどんな音かな?どんな音だろうな?
杢兵衛:鳴るのを楽しみにしてちゃダメだよ…!
【怪談ぽい語り口調で】
縁側の障子に女の髪の毛のさわる音が
サラサラサラサラしたかと思うと、音もなくすー…っとあなた、
開きますよ…。
男2:便利な家だなそらァ。俺ァそん時を狙ってしょんべんに行くよ。
んで、どうなるんだい。
杢兵衛:【怪談ぽい語り口調で】
生あったかい風がふぁーっと吹いてきますとね、
その殺されたおかみさんの幽霊が髪をおどろに乱して、
すー…っと寝ている人の枕辺へ立つ。
その顔を見て、ケタケタケタっと笑いますよ…!
男2:陽気でいいやね、それ。愛嬌があらぁな。
泣いてんのはいけないよ。めそめそしてて陰気だからよ。
で、どうなんだい。
杢兵衛:【怪談ぽい語り口調で】
「まああなた、よく越してきてくれましたねぇ」
と寝ている人の顔を冷たぁい手でもってつーーっ…
男2:ッおっこのっ、なにしやがんでェこんちきしょう!この!このッ!
この野郎ッ!こんちきしょッ!
ったく、いいか、俺ァあした越してくるからな!掃除しとけよ!
あばよッ!
杢兵衛:あッちょっ、ちょっと待ってくれッ!ダメだよッ違ッお前さんッ
!お待ちよッ!
…しょうがねえなあ本当に、弱ったねどうも。
どうしようかなぁあれァ…。
源兵衛:おい、どうしたんだい杢さん。
いまの奴なんだか知らねえが、家の中をのぞき込んでニコニコし
てったよ?あれどうなったんだい?
杢兵衛:大変だよ源さん、越してくるってんだよ。
源兵衛:えっ、怪談話やんなかったのかい?
杢兵衛:やったんだよ。ところが度胸のいい奴で何をやっても驚かねえん
だ。さんっざんまぜっかえしてきやがった。
源兵衛:いちばん終いの、冷たい手でもってスッとやるのもかい?
杢兵衛:それだよ、雑巾でもって顔を拭いてやろうと思ったらスッと体を
かわしやがってね、雑巾ふんだくられてこっちが顔をこすられち
まったよ。
源兵衛:なんだい、だらしがねえなどうも。
杢兵衛:なにしろ敷金も店賃もいらねえってそう言っちゃったんだからね
…。
しょうがないよ、あいつの店賃をお前と二人で出そう。
源兵衛:冗談言っちゃいけねえ!
そんなバカなことできるかよ!
それじゃあいつ、何も置いていきやしないかい?
杢兵衛:置いてくどころじゃーーああっ!!いけねえ!
あいつさっきのがま口持って行っちゃったよ。
終劇
●参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)
古今亭志ん朝(三代目)
三遊亭圓生(六代目)
●用語解説
・店賃
家賃の事。
・家主
アパートなどにおける大家さんの事。
・店立て(たなだて)
家主が家賃の滞納や契約違反などを理由に、借家人を強制的に追い出した
り、店を閉めさせたりすることを指す言葉。
・匕首
鍔のない短刀、ドス。
・随徳寺
「随徳寺きめる」という。「ずいと出ていく」洒落で寺の名前に見立てた
もので、後先構わずに一目散に逃げ出す事。
落語の演目、「山号寺号」のサゲ(オチ)にも使われている。
「一目散、随徳寺!」→「ああ南無三、し損じ」
・一尺
だいたい30センチ。
・お足
お金の別称。今はあんまり使われない。
・仲
遊郭の仲見世の事。
遊郭(主に吉原)には上から順に大見世、仲見世、小見世、
その他に切見世や河岸見世などがある。
・草分け
最初に土地を開拓して村落を作った者及びその家のこと。
転じて、もっとも古くからいる者のことを指す。
・松木を植えようってんじゃない
ここに永住、定住するのはまっぴらだ、という意味。
・造作
建物の内部の仕上げ材や取付け物。床板・階段・陳列棚・畳・建具の類。
比喩的に、顔の作り、顔つき。
・賃仕事
これだけすればこれだけの賃銭がもらえるという手内職。
・花嵐時分
桜の咲く頃に吹く強風によって、花びらが激しく散り乱れる時期や光景を
指す言葉。
・かいまき
袖がついた着物状の寝具(着る布団)のこと。
首から肩をしっかり覆って寝冷えを防ぐことができ、現代でも防寒用や
赤ちゃんのスリーパーとして活用されている日本の伝統的なアイテム。
・遠寺
字の通り、遠方にある寺。




