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徳を積みすぎたモブ願望の元聖女。 朝の挨拶で魔王が安眠し、なぜかお隣さんになりました!  作者: 黒武者


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第7話 お隣さん2号と、魔女城の誕生

翌日。

放課後。


寮の前――


“魔王城”と称されるテントの前で、

ヴォルガドは腕を組んで立っていた。


風に揺れる黒い布。

どう見てもテントである。


その前に、モルディナが立っていた。


じっと見上げている。


沈黙。


「……ねぇ」


低く言う。


「やっぱり納得いかないんだけど」


ヴォルガドは視線も動かさない。


「何がだ」


「なんであんたがここに住んでるのよ」


「余の城だからだ」


「だからそれが納得いかないのよ」


ぴしりと指をさす。


「ここ誰の土地よ?」


「なぜ魔王が住んでるの」


ヴォルガドは即答する。


「お隣さんだからだ」


「意味がわからないわ」


「わからなくとも良い」


会話が成立していない。


そのとき。


「お待たせいたしました」


セラフィナイトが寮から出てきた。


にこにこと微笑んでいる。


モルディナの視線が、一瞬でそちらへ移る。


(来た)

(やっぱりかわいいわ)

(くしゃくしゃにしたくなるもの)


内心が一瞬で崩れる。


だが表情は整える。


「セラフさん」


「少しお話があるのだけど」


「はい」


セラフは嬉しそうに頷く。


モルディナはちらりとテントを見る。


そして、言った。


「私も、ここに住むわ」


(断られたら自決するわ)


一瞬の沈黙。


ヴォルガドが即座に言う。


「許可できん」


「は?」


モルディナの眉が跳ねる。


「なんであんたに許可を取る必要があるのよ」


「ここは余の城の領域だ」


「ただのテントでしょ」


「魔王城だ」


「テントよ」


セラフは二人を見て、こてんと首をかしげた。


「まぁ」


少し考える。


そして、ぱっと顔を明るくした。


「では」


二人が同時に見る。


「こちらに、もう一つお城を建てればよろしいのでは?」


沈黙。


モルディナ

「……え?」


ヴォルガド

「……は?」


セラフはにこにこしている。


「そうすれば、皆様お隣さんですわ」


モルディナの頬が、ぴくりと緩んだ。


「……いいの?」


思わず、素の声が出る。


「はい!」


セラフは嬉しそうに頷いた。


「賑やかになりますもの!」


その瞬間。


モルディナは――


ぎゅっとセラフに抱きついた。


「ありがとう……!」


頬が完全に緩んでいる。


(なにこの子)

(天使なの?)

(いや女神よねこれ)


セラフは少し驚きながらも、嬉しそうに笑う。


「ふふ」


「楽しみですわね」


ヴォルガドはその様子を見て、ぼそりと呟く。


「……軽い」


そして腕を組む。


「だが」


少し間。


「余の城の方が上だ」


誰も聞いていない。


モルディナはすぐに離れると、軽く咳払いした。


「……では、失礼するわ。ヴォルガド、ちょっと危ないわよ」


すっと手を上げる。


空気が変わる。


「――展開」


低い詠唱。


魔力が地面へと流れ込む。


土が震え、空間が歪む。


次の瞬間。


石造りの基礎が現れ、

壁が立ち、

窓がはまり、

装飾が施されていく。


黒と紫を基調とした、優雅でどこか妖しい建物。


屋根には繊細な装飾。

蔦が絡み、淡い光を放つランプが灯る。


あっという間に、それは完成した。


モルディナは小さく息を吐く。


「……こんなものかしら」


どこか誇らしげだった。


セラフは目を輝かせる。


「まぁ……!」


その建物を見上げる。


両手を胸の前で合わせる。


「とても素敵ですわ」


そして、ふわりと微笑んだ。


「魔女城でしょうか?」


モルディナは一瞬、きょとんとした。


それから――


ふっと笑った。


「……そうね」


腕を組む。


「悪くないわ」


そのとき。


ふわりと風が吹いた。


セラフの周囲から、柔らかな光が広がる。


建物を包み込むように。


次の瞬間。


空気が、変わった。


どこか温かく。

どこか落ち着く。


モルディナは、わずかに目を見開く。


(……なに、これ)

(私の魔法じゃない)


建物を見上げる。


(空気が整ってる……?)


ちらりとセラフを見る。


(この子……)


すぐに視線を逸らす。


「……気のせいね」


そう言いながらも、

その頬は少しだけ緩んでいた。


ヴォルガドは腕を組んだまま呟く。


「……増えたな」


目の前には、


テント(魔王城)

そして、魔女城。


セラフは嬉しそうに微笑む。


「とても賑やかになりましたわ」


夕暮れの空の下。


お隣さんが、ひとり増えたのである。


そのとき。


セラフが、そっとヴォルガドの背をつついた。


つん、つん。


ヴォルガドがわずかに振り向く。


「……なんだ」


セラフは少しだけ背伸びをして、耳元に顔を寄せる。


小さな声で――


「あの……ヴォルガド・魔王さん」


「ところで」


一拍。


「先ほどの、あの美しくてゴージャスな、魔女っぽい方は……どなたですか?」


沈黙。


ヴォルガドはゆっくりと目を細めた。


「……今さらか」


ぼそりと呟く。


「アイツは余の元側近」


「魔女のモルディナだ」


セラフは、ぱっと表情を明るくした。


「まぁ!」


嬉しそうに微笑む。


「素敵な方ですのね」


満足そうに頷く。


ヴォルガドはしばらく黙っていたが――


やがて、小さく息を吐いた。


「……お前は」


少し間を置いて。


「本当に、それでいいのか」


セラフはきょとんと首をかしげる。


「はい?」


そして、にこりと笑った。


「はい!魔王さんの大切なお友達ですもの」


「とても賑やかで、楽しいですわ」


ヴォルガドは何も言わなかった。


ただ、わずかに空を見上げて――


「……そうか」


小さく、そう呟いた。


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