これはさすがにハード過ぎます
期末のテストでも、リラは一番上をキープした。
すぐ下には、漆黒の王子様の名前。今さらだけど『漆黒の王子様』ってキャラ濃いめの呼び名だな。
リラは平凡なので、呼び名とかいらない。いらないったらいらない。
少し前に思いついて、教員に『わたしを監視してください』と申し出た。
噂について弁明できる機会を得た時、事実を知る第三者がいたら助かります、と。
生徒会に掛け合うと言っていたので、漆黒の王子様(現生徒会長)も知っているだろう。動いてくれるといいな。
一ヶ月ほどの休暇に入るが、リラは故郷には帰らない。入学以来、手紙を送るだけで帰郷したことはなかった。
それは里心をくすぐられるからでもあり、それどころじゃないからでもある。
特に今年は、リラは官僚試験を受けたのだ。
これに受かれば、将来は王宮または王立の施設で就労し、安定した収入を得られる。
座学試験と、面接。推薦状には、学園長も名を連ねてくれた。
ここまできたら、もはや全力を出し切り、あとは運に任せるしかない。
試験後は一気に気が抜けて、二日ほど寝倒した。同室の人に寮監を呼ばれた。申し訳ない。
試験後も、だめだった時のことを考えて、リラはありとあらゆる就職先に応募をかけた。
この際、安定していれば割となんでもいい。向き不向きはやってみないとわからないのだし。
そうしているうちに、新学期が始まる日。
普段通り登校したリラは、入り口で漆黒の王子様に呼び止められた。
「行かない方がいい。一時間ほど遅れて来い」
「え、なんですか?」
「俺が収めておくから、とにかく一時間」
「は?」
申し訳ないが、未だ苦手分野が残っている。授業をサボるわけにはいかないのだが。
躊躇って、でも王子様の言うことに逆らうわけにもいかず、くるりと足の方角を買える。
ひとまず大図書室の方に向かっていると。
「……っ!?」
いきなり口を覆われて、ガクンと身体から力が抜けた。
しまった。油断した。いや、まさか学園内でこんな野蛮がまかり通るとは思いもしない。
ガサガサと視界を覆われながら、リラは胸元の宝物を握りしめて、意識を手放した。
────まあねー。貴族令嬢なら、小娘一人くらい片づけられるとは言った。確かに言った。
目を覚ますと、リラは物がたくさん積まれた板床の上にいた。暗さから夜だと知る。
ガタゴトと雑な車輪の音と揺れを感じるので、おそらく馬車の荷台だろう。
服の下の宝物がそこにあることを真っ先に確認して、ほっと息をつく。
手は縛られているが、足は自由だ。縛られる前に咄嗟に親指を内側に握りこんだので、頑張れば解けるだろうか。
警邏隊のおじさん、ありがとう。恩に着ます。
ぐりぐりと縄をずらしつつ、肩甲骨を可能な限り寄せたり開いたりしつつ、汗だくになって縄を解く。
やや無理やり引っ張ったので擦れて傷になったが、まあよしとする。
「大丈夫……落ち着いて、落ち着いて……」
カタカタと震える手をすり合わせて、祈るように何度も呟く。
冷静さを欠いちゃだめだ。落ち着け。神父様、孤児院のみんな。大丈夫、大丈夫。




