よそでやってください。ぜひ
学園に入学して、必死に、本当に必死に日々をこなしていたら、いつの間にか最終学年になっていた。
あっという間すぎて、実感がない。
三年生の頃から、少しずつ成績が伸びてきて、四年生になって初めて一番を取った。
その後は、ずっと首席を維持している。ええ、もちろん意地です。
負けん気と雑草魂は人一倍。勉強、とにかく勉強、マナー、ダンス、勉強、マナー、ダンス。
今では、『淑女』の仮面を即座に被れる程度には、成長できたと思っている。
二週間に一度のご褒美は継続中。そしてなぜか、無言の王子様が別テーブルにいるのも継続中。よくわからん。
わからんが、関わり合うわけじゃないのは助かるので、突っ込まないことにしている。
令息方に絡まれるのにも慣れた。いや、慣れたくはないのだが。
それと、なんで絡まれるか? の一端も知った。
その昔──といっても、親世代の頃。
リラと同じような淡いピンク色の髪の平民特待生が、高位貴族の令息たちを唆し、王子の婚約者だった侯爵令嬢に冤罪を吹っかけたらしい。
なにそれこっわ。死にたいのかしら。
と、リラはドン引いたわけだが、もちろんピンクの特待生は裁判にかけられ、国外追放になり、在校期間に掛かった費用を返済するため働き続けているとのこと。
入学前、侯爵様がわざわざ会いに来た時、やたら出自を気にしていたことを思い出した。
まあ、リラもたぶん神父様も生みの親を知らないので、無関係だと思っているが。だって国外追放された人だし。
なので、ピンク色の髪の平民特待生というと、面白がられるというか、ちょっかいをかけられやすいらしい。
同じような髪色なら、同じように男好きだろうって? 短慮にも程がある。
中には本当に想いを告げてくれる人もいたけれど、今は恋愛とかの余裕はないと断った。
半分本当。あとは、貴族様と平民孤児がお付き合いってナニ? というのが半分。
お貴族様のお付き合いは、ほぼ婚約や婚姻なんじゃないのだろうか。平民と付き合ってどうすんだ。
愛人候補ということもありえるだろうが、生憎、リラはそんな不確かな進路は嫌だ。
もっと堅実に、もっと揺るぎない収入が欲しい。
なのに。
「リラ。私は本気だよ。私の妻になってほしい」
「何を言う。私の方が、きみのことを愛している」
「侯爵家や伯爵家など目ではない。私と共においで」
口々にそうおっしゃるのは、侯爵令息、伯爵令息、それと隣国からいらした留学生の皇子。
みんな、リラをからかっているわけではなく、本気の本気らしい。
引きつった頬で笑いながら、リラは一歩後ずさる。
「申し訳ありませんが……わたしには、養うべき家族がおりますので」
「私であれば、家族丸ごと引き受けよう」
熱心に言い募るのは、隣国の皇子。褐色の肌に、煌めく金髪金眼。
「何を言う。わざわざ他国に行かずとも、侯爵夫人として我が家へ来るといい。家族のことも任せなさい」
「侯爵家は、しがらみが多いですよ。伯爵家の方が自由がききます」
侯爵令息も伯爵令息も、嫡男だと言う。阿呆じゃないか。平民ごときに高位貴族の夫人が務まるわけがない。
口から出すわけにはいかない本音を、リラは必死に飲み込む。
平穏、大事。不必要なことは言っちゃだめ。




