第六話
ユリウス、ソルト、グリフィスの三人は、再び訓練所に立っていた。
少し遠くに立っている、グリフィスは逆光で表情がわからない。
「…ユリウス。今後、私と共に茨の道を歩んで欲しい」
表情は読めないが、その言葉には、どこか苦し気な響きを感じる。
「うぉぉ!すごいじゃん、ユリウス!大出世だな、副将なんて!!」
意味が分かって言っているのか、いや、多分わかってないであろうソルトの声が響き渡る。
「茨の道…
貴方は今までずっとお一人で歩いて来られたのですか?」
ユリウスはソルトの言葉を無視して、グリフィスに聞いた。
「北方収容所に収容されたとき、私は息子と一緒だった。
…私には出来すぎた息子だった。共に歩んだ国賊の道。
息子は私を気遣うばかりで、弱音など吐かなかった」
珍しく、グリフィスは下を向いてそう話している。
「…しかし、初めて参加した収容所別闘技会で、息子は殺された。…王弟ニンギルスの手によって…」
グリフィスは、ギュッと拳を握りしめる。
その様子を、ユリウスはただ黙って見つめていた。
「…それでも私は、いまだにここに立っている。息子を殺し、私から誇りを奪ったこの国に忠誠を誓っているのだ…
大した奴隷だろう?」
グリフィスは、ふっ…と自嘲気味に笑う。
「大した奴隷なんて…そんな言い方すんなよ!俺はアンタを心から尊敬してるよ!
ここの収容所の皆は、この国じゃない!アンタに忠誠を誓ってるんだ!アンタがいるからみんな頑張れるんだ!
息子の仇だって、まだ諦めることねえよ!アンタの願いは、皆の願いなんだから!」
ソルトは、グリフィスの様子を見て、思わず感情的に叫ぶように言った。
「…そうか。私には素晴らしい部下たちがいたな」
そう言って、グリフィスは穏やかに笑う。
…でも。それでも。
(グリフィスよ。『茨の道』だな…
戦うことでしか答えられぬ、仕えることでしか答えられぬ、その心中や…
他人に理解されぬ孤独も多かろう)
ユリウスは、目を瞑って考えた。
そして考えた末、こう言った。
「将軍、共に参りましょう。茨の道へ」
「やってくれるのか?」
太陽が陰り、グリフィスの表情が見えた。
少し驚いたような表情をしている。
「…俺はメディシスに、貴方ほどに強い想いはありません。だから、貴方の苦悩と孤独の全てを理解することはできない。
でも。俺はこの茨の先に、必ず自由への道があると信じています。俺自身の…そして、貴方の」
ユリウスの目指すものはいつだって、『自由』だった。
この空の先に、きっと望む場所があると信じていた。
「そうか…
ユリウス、ありがとう」
グリフィスの表情は、またも逆光で見えなかったが、穏やかな声色で答えた。




