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「君を愛してる」と脅されても、もうすぐエンディングなので全力で応援します! ~悪役令嬢ですが、ヒロインと婚約者様が結ばれるのを待ってるんですが?~  作者: ましろゆきな
第二章:怒涛の学園イベント

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第四話:波乱の幕開けと、美の暴力

 1.波乱万丈の学園祭のはじまり


「今年度の学園祭でのメインは生徒による演劇となります。演目は男女キャスト入れ替わり「ロミオとジュリエット」、主演は全生徒投票により、主演のロミオ役リリアーナ・フォン・ローゼンハイム公爵令嬢、ジュリエット役エリアス・ド・グランヴェル公爵令息です」


 全校集会で教師よりそう発表された。


 毎年、学園祭が行われ、各クラス、クラブが催し物を行い、それぞれの成果を広く発表することになっていた。そして、全体発表としてメインのイベントも開催されるのだが、今年は「演劇」が催されることになっていた。


 しかし、――。 


(え? ……そんなの聞いてないわ!)


 リリアは予想外に自分の名前が出て青ざめる。こういう時、主役はアリスのハズなのに!


「さあ、リリア。立って」


 エリアスに促されて慌てて立ち上がる。その場にいる生徒たちの拍手に頭を下げた。横ではエリアスが片手を軽く上げて、にこやかな笑みを浮かべる。


 強い視線を感じてそちらを見るとハンカチを噛み締めて歯ぎしりするアリスの姿が目に入る。


(そ、そうよね……アリス、ごめんね……)


 拍手を浴びながら、横に立つエリアスが体を寄せ、リリアにだけ聞こえる声で呟く。


「……逃げられないよ、ロミオ。 嬉しいな、リリア。君と『運命の恋人』を演じられるなんてね」


 拍手を浴びながら、横に立つエリアスがリリアにだけ聞こえる声で呟く。


(ひえっ……全部仕組んだわね!?)


 集会が終わった瞬間にアリスが猛ダッシュで目の前にやってきた。


「リリア様ぁぁぁ! 投票箱に細工が! 私が調べたところ、エリアス票が異常に多すぎます! これでは私がジュリエットを演じて、ラストシーンでリリア様と……っ、ぐぬぬぅぅ!」


 リリアの中でさっきの疑念が確信に変わる。


(ああ……今回のキャスティングはエリアスの陰謀なのね)


 ならば、アリスが主人公にならないはずだと一人納得するリリアだった。


「……アリス様、残念ですが、投票操作の証拠はありませんね」


 カシャッ、と乾いたシャッター音が鳴る。

 いつの間にか横にいた銀縁眼鏡の生徒――新聞部のマリオンが、レンズ越しに鋭い視線を送っていた。


「貴女の思惑はさておき……今の青ざめた表情、そして男装の想像図……被写体としてSランク認定いたします」


 こうして、波乱万丈の学園祭が幕を開けるのだった。


 2.魅惑の衣装合わせ


 劇関係者の顔合わせ、脚本の読み合わせを経て、今日は、メインキャストの衣装合わせ。


 何だか嫌な予感がしつつ、準備された衣装に袖を通す。


「リリア様、髪は一つにまとめて、薄くメイクさせていただきますね」


「ええ、お願いしますわ」


 ロミオの衣装に着替えると、メイク担当の生徒が手際よく髪を整え、メイクしてくれた。


「リリア様、完璧ですわ!」


 頬を赤らめて満足に頷く彼女にカーテンの向こうに送り出される。


「おおっ――!」


 何故か拍手が起こって、感嘆の声に迎えられる。


 身体のラインが出すぎない、カチッとした貴族の礼服。長い髪を束ねて、少し照れたように頬を赤らめていた「男装の麗人」がそこに立っていた。


「はぁぁぁっ……!」鼻息荒くアリスが最初に駆け寄ってきて何故か拝んできた。


「か、かっこいい……! 性別なんて関係ない! 抱いて! 今すぐ私を抱いてくださいリリア様ーーっ!!  結婚しましょう! 実質、同性婚ですが魂が惹かれ合えば問題ありません!!」


 そして、「あ、鼻血が――」と言うとその場に倒れた。


 え? え? 大丈夫なの? ――そのまま、他の生徒によって保健室へ運ばれていった。


「……ふむふむ、素晴らしいですね! この『恥じらい』が最高の商品価値を生みます」次にカメラ片手のマリオンがしたり顔で全身くまなくチェックする。


「あ、目線頂けますか? そのままで大丈夫です。――ふふふ、『リリア様・男装ブロマイド~禁断の園~』セット、予約完売間違いなしですね」


 最後の方は聞こえなかったけれど、どこからか小銭の音が聞こえる気がした。


 うっかり気を抜いたところに顎をスッと指で持ち上げられた。いつの間にか目の前に立っていたエリアスが感情の読めない笑顔を浮かべている。


「……うん。倒錯的でいいね。君のその華奢な体が、男物の服に包まれているという事実だけで……そそるよ」


 そこで言葉を切り、すっと顔を近づけ、更に耳元で囁く。


「今度、こういうパンツスタイル一式を贈ろうか。  ……もちろん、それを脱がすのは僕の特権だけどね?」


 甘い言葉に背筋が凍る。


(ひえっ……! 贈らなくていいわよ!!)


 3.夜色の女王、降臨


「……冗談だよ。さあ、次は僕の番だ」


 凍りつく私を見て満足したのか、エリアスはふっと笑みを深めると、ひらりと手を振って更衣室のカーテンの奥へと姿を消した。


(はぁ……もう、心臓に悪いわ……。アリスも大丈夫かしら……)


 嵐のような時間が過ぎ、少し落ち着きを取り戻した頃。  シャッ、と勢いよくカーテンが開く音がした。


「――お待たせ、ロミオ。……どうかな」


 その声に顔を上げた私は、息を呑んだ。  そこには、この世のものとは思えない「美貌の令嬢」が立っていた。


 身に纏っているのは、夜空を切り取ったような深いナイトブルーのドレス。  フリルやリボンといった甘さは一切なく、計算し尽くされたドレープが、エリアスの長身を彫刻のように美しく見せている。


 首元は豪奢なレースのチョーカーで覆われ、喉仏のラインを隠すと同時に、顔立ちの鋭さを「気品」へと昇華させていた。  肘上まである長い手袋グローブが、男性的な骨格の手を優雅に包み込んでいる。


(……噓でしょ……?)


 かつら(ウィッグ)の金髪がさらりと揺れ、冷ややかな視線が私を射抜く。  それは可憐なジュリエットというより、国を一つ傾けそうな『氷の女王』の迫力だった。


「……ほう。悪くないね」


 私の絶句など気にも留めず、エリアスは姿見()の前でポーズを取り、自分の腰に手を当てた。


「ウエストの締め付けも、コルセットで極限まで絞ったおかげで、女性特有の曲線美が出ている。  ……どうだい、ロミオ。これなら君を『舞台上』で食い殺せそうだろう?」


 鏡越しに目が合い、妖艶に微笑まれる。  そのあまりの完成度の高さに、私は悔しさも忘れて見惚れてしまった。


(……悔しいけど、綺麗……!)


 4.美貌と熱視線の板挟み


「どうだろう。リリア、君の感想を聞かせてくれないか?」  鏡の前でポーズを取っていたエリアスが、不意に私の方へ顔を向けた。


 その美貌は、同性の私ですら息を呑むほど完璧で、妖艶だ。  けれど――その瞳だけが、いつものエリアスだった。  獲物を逃がさない、少しだけ湿度を含んだ熱っぽい視線。  外見の「冷ややかな美」と、瞳の「熱」のアンバランスさに、私の思考が一瞬停止する。


「……き、綺麗ですわ!」


 混乱のあまり、私は素直すぎる言葉を叫んでしまった。


「ふっ……。それはよかった」


 エリアスは満足げに目を細めると、ヒールを鳴らして一歩、また一歩と距離を詰めてくる。


(ち、近っ!? 必要以上に顔を近づけないでほしいのですがっ!)


「――逃げないでくれ、ロミオ」


 逃げ場を失った私を見下ろし、エリアスは愉しげに目を細める。  長いドレスの裾を翻し、ドン、と私の顔の横に手をついた。いわゆる「壁ドン」だ。  至近距離で見ると、その美貌は暴力的なまでに整っていて、思考が麻痺しそうになる。


「……さて。手袋グローブをしていると、君に触れる感触が鈍るのが難点だが……」


 エリアスはふと視線を自分の手元に落とすと、左手のグローブの指先を、自身の歯でくわえた。  グッ、と生地を引っ張り、指先を露わにする。  その仕草があまりに淫靡で、私は息をするのも忘れて魅入ってしまった。


「……こうして焦らされているようで、それもまた一興かな」


「ひぅっ……」


 露わになった指先が、私の顎をスッと持ち上げる。  冷たい指の感触と、熱っぽい瞳のアンバランスさ。  私は抵抗することもできず、ただ涙目で彼を見上げることしかできなかった。


 ――カシャッ!!


 その刹那。  乾いたシャッター音が、静まり返った部室に響き渡る。


「……完璧です」


 いつの間にかベストポジションに移動していたマリオンが、冷徹なプロの顔で液晶画面を確認していた。


「ナイトブルーのドレスが放つ『絶対的な支配者のオーラ』と、白い男装が醸し出す『可憐な敗北感』。  リリア様のその涙目……加工なしでこのクオリティとは。  タイトルはそうですね……『魔女の晩餐メインディッシュ』でいきましょう」


 その言葉に、エリアスは満足げに、私は絶望的な気分で脱力した。  ……アリス、早く戻ってきて。この空間、私一人じゃ耐えきれない……!

最後までお読みいただきありがとうございます!

おかげさまで、本作が日間ランキング170位まで浮上いたしました!

皆様の応援が目に見える形になり、本当に嬉しいです。ありがとうございます!


【明日夜、新作が始まります!】

明日2/13(金)20:10より、新作『鍵の聖女』の連載を開始します。

今回の作品とはまた別ベクトルの「重い愛」を、マルチエンディング形式でお届けするシリアス・ファンタジーです。


ぜひマイページをチェックしてお待ちください。

明日の朝7時、そして夜20:10にお会いしましょう!

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