第十六話:断罪の方がマシだったかもしれない
エリアスとアリスは、神に向かって殺気を放っている。 その背中は頼もしいはずなのに、リリアには「世界の終わり」に見える。
「行くぞ、元・神。 僕たちの愛の巣から、速やかに退去してもらおうか」
「リリア様の視界に貴方のような不純物が映るだけで、万死に値します! 消毒のお時間ですわーーッ!!」
二人の暴走を見ながら、リリアは遠い目をする。
(……あれ? おかしいな。 私はただ、推しの幸せを願って、ちょっと課金しただけなのに。 どうしてこうなったの?)
(断罪イベントなら、国外追放で済んだかもしれない。 修道院で静かに野菜を育てて暮らせたかもしれない。 ……でも、これはもう、逃げ場がないじゃない)
ボコボコにされる直前の神様と、ふと目が合う。
『……おい、バグ。 今、「こんなはずじゃなかった」って顔をしたな?』
「……神様。 もし私が「やり直したい」って言ったら、タイムリープさせてくれます?」
『無理だ。あいつらの執着が重すぎて、もう時間は巻き戻せん。 諦めて食われろ』
「いやああああッ!!」
神は諦念にリリアは絶望に染まった。
エリアスが闇の魔力を、アリスが聖女の物理攻撃力を最大チャージしている最中。 逃げ場を失った神と、腰が抜けているリリアの視線が交差する。
『……なぁ、バグ。 私、お前のこと、ちょっと誤解していたかもしれない』
「……私もです、神様。 貴方が「悪」だと思ってたけど……一番話が通じる相手だったんですね」
『だろ? あいつら、私の言葉なんて一つも聞いてないんだぞ? 「愛」とか「革命」とか叫んでるけど、要するに「欲望のままに暴れたい」って言ってるだけだからな』
「……否定できません」
感動的な和解(?)も束の間、モンスターたちが動き出す。
「いつまで見つめ合っている? 僕のリリアと視線で会話していいのは、僕だけだ」
嫉妬の炎が物理で火力が倍になっていた。
「リリア様に気安く話しかけないでください! その汚い口を浄化します!!」
「「消え失せろ!!」」
ドゴォォォォン!!
エリアスとアリスの同時攻撃が王城の結界ごと神を粉砕した。
圧倒的な火力の前に、神の姿がノイズのように薄れていく。 消滅の間際、神はリリアに向かって親指を立てた(ように見えた)。
『……悪いが、私はリタイアだ。 この「制御不能なバケモノたち」の手綱は……お前に預ける』
「えっ、ちょっと!? 押し付けないでよ!!」
『諦めろ。世界を救うと思って……彼らの愛を受け入れるんだ。 ……グッドラック、生贄の姫君』
プツン。 神の反応が消滅した。
静寂が戻る。 目の前には、神を倒してスッキリした顔の魔王と狂信者。 二人は満面の笑みで、リリアの方へ振り返る。
「終わったよ、リリア。 これで邪魔者はいない。……さあ、続きをしようか」
「おめでとうございます、リリア様! これで貴女様は、永遠に私たちだけのものです!」
リリアは、消えた神のいた空間を見つめ、そっと手を合わせた。
(……神様ですら勝てなかった。 なら、私が抵抗しても無駄ね。 ……さようなら、私の平穏。さようなら、常識。 南無……)
「……はい。謹んで、お受けいたします」
リリアの声が震えていたのは気のせいではなさそうだった。
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いよいよ明日、2月26日朝7時の更新をもちまして、『君を愛してる』第一部・完結となります!
二人の関係を揺るがす第二王子の画策、そしてヒロインが下す決断とは……。
明日の朝、物語の大きな節目をぜひ見届けていただければ幸いです!
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