第十一話:死に装束の仕上げは、魔王の手で
侍女たちの手で銀糸で豪華な模様が織り込まれたシルクのブロケードで作られたオフホワイトのドレスに袖を通す。
同時にメイクとヘアアレンジも手際よく進められた。
髪は華やかに結い上げられ、メイクも口紅を残すのみ。ドレスはといえば、背中の編み上げとなったところでエリアスの声がかかる。
「……そこからは僕がやる。下がれ」
「は、はいっ! 失礼いたします」
侍女たちはお辞儀をすると大急ぎで片付けて、部屋を後にする。
バタン、と扉が閉まり、広い部屋に二人きりになった。
リリアは鏡の前で硬直している。
背後に立ったエリアスの手が、背中の開いた部分、素肌に触れた。
「……震えてるね。肌も少し冷たい」
「でも、すぐに熱くなるよ。……僕が触れれば」
エリアスはわざとゆっくりと、コルセットの紐を締め上げていく。 キュッ、と締められるたびに、リリアの身体が跳ねる。
「っ……エリアス、く、苦しい……」
物理的にも、雰囲気的にも苦しくなってリリアは悲鳴を上げる。
「我慢して。……このドレスは、君を一番美しく見せるための『包装紙』なんだから」
「パーティが終わったら、一番に僕が解いてあげるからね」
着付けが終わり、エリアスは無防備に見えるリリアのうなじに、チュッと音を立てて口づけた。
最後にエリアスがドレッサーの前でリリアの顎をくいっと持ち上げて……。
「……仕上げだよ」
長い指に口紅をすくい取り、リリアの唇を鮮やかな色を付けた。
「綺麗な赤だ。……パーティの間、この唇を噛んだりして色を落とさないようにね? 君が唇を噛んでいいのは、僕に愛されている時だけだよ」
(ひぃぃ! 無駄に色っぽいこと言わないで!)
溢れ出るエリアスの色香にリリアは目眩を覚えた。
「これで完成だ。……完璧だよ、リリア」
鏡に映る艶やかに装ったリリアにエリアスは満足げに微笑む。
「さあ、行こうか。僕たちの未来を、世界に見せつけに」
(ひぃぃぃ! 『僕たちの未来』って何!? 『断罪後の地獄』のこと!?)
「ま、待って! お腹痛い! 仮病じゃなくて本当に胃が……!」
リリアはこれから起こることを想像して慄き、お腹を抑える。
「大丈夫。君が立てないなら、僕がずっと抱きかかえていてあげるね」
何か盛大な勘違いをしたエリアスは満面の笑みでふわりとリリアを抱き上げた。
「キャーーッ!! 自分の足で歩くわーーッ!!」
いわゆるお姫様抱っこだった。
(このまま、外に出たら、余計に目立って処刑フラグが立つじゃないーっ!)
リリアの悲鳴も拒否も、ものともせずエリアスは建国祭パーティの会場に向かうのだった。




