外伝 〜森の奥の魔女と若き王!?親たちの愛は子供たちでもドン引きするくらいいちゃいちゃきゅんきゅんでした〜
婚礼の喧噪も落ち着き、ようやく王城が静けさを取り戻した夜。
王の私室に呼ばれて集まったソフィーア、レイモンド、レオネル、カトレア――そして部屋の主である王オルフェウス。
ソフィーアが光を放つ手をおそるおそる見つめていた。その光はたぶん「聖女の力」。
「……あの。父上、わたし、今さら聖女になったんですけど……」
王の私室では、父オルフェウスが水晶玉を前に「ふむ」と唸っていた。
「……母さんを呼ぶか。来てくれるかなぁ」
「……母、ですって?」
ソフィーアが驚愕した。
「お母様の記憶ってあやふやで…誰も話題に出さないし、正直死んだのかと思ってたわよ!!」
「ごめん。俺も最近知った」
兄が気まずそうに肩をすくめる。
「ええええっ!?」
オルフェウスは全く聞いておらず、何やら水晶玉に向かって、堂々と声を張った。
「可愛い可愛いレティ、顔を見せておくれ」
やわらかな光が広がり、――長い銀髪に大きな瞳の……どう見ても美少女にしか見えないちんまりした女性が浮かんだ。
「はぁい♡♡」
とびきり甘い声を発した次の瞬間、彼女は硬直する。
「…ぎゃっ!!人っ!人がたくさん!!いっぱい!無理いいいいっ!」
水晶玉越しに大慌てするその姿に、ソフィーアとレイモンドは呆然。
「……うわあ母上ってこういう感じか」
「え、生きてたの?ていうか美少女!?」
「…幼女趣味の傾向…?」
とカトレアがぽつりと呟く。
「……」
レオネルは黙って目を逸らした。
「オルさまぁっ!」
水晶の向こうでレティーシアが泣きそうに叫ぶ。
「人がいるところはっ無理だってば!」
「人って……君の娘と息子だが」
「よけい無理ぃぃ!」
「なんでやねん!」
子どもたち二人は同時に突っ込んだ。
オルフェウスは平然と続ける。
「レティ。娘のソフィーアに聖女の力が発現したのだ。だから確認しに来てほしい」
「……そ、そんなの大丈夫よぉ。ただの聖女力でしょお!!
それに、わたし、ずっと見てたけど結婚したしみんな立派にやってるじゃない……」
めそめそする美少女(年齢不詳)とデレデレする壮年の父。控えめに言ってほぼ事案である。
「見てたんかい!!」
取り敢えず子どもたちは突っ込んだ。
レティーシアが必死で逃げ腰になるのを、オルフェウスはゆったりした声で遮る。
「……うむ、こわいのはわかるぞ。だがなぁ、愛しいレティに私も会いたいのだ」
「えっ♡♡」
「毎日水晶玉越しには顔を見ておるが、な?その……ご無沙汰だろう?」
「あっ♡♡」
「……レティの肌に、直接触れたいのだ」
「すぐ行くっ♡♡すぐ行くからぁぁ♡♡」
ぶちっと通信が切れる。
「……いい年して親のいちゃいちゃを見せつけるなーーーっ!」
ソフィーアとレイモンドの悲鳴が響いた。
◆
「……母さんはな、大魔法使いでありながら極度の人見知りでな」
とオルフェウス。
「王宮には住めず森の奥の屋敷に暮らしておる。だが、お前たちのことも時折、メイドや文官に化けて見に来ているのだ。三日に一度くらい」
「多いな!!」
そして父王は懐かしげに目を細める。
「レティとの出会いは……」
そして聞いていない両親の出会いを垂れ流し始めた。
◆
若き日のオルフェウス。
国境沿いの戦場で重傷を負い、死にかけて森に倒れていた。
しかし、目を覚ますと、静かな森の屋敷のベッドに丁重に寝かされていたのだ。
彼を救い、ついでにうるさかったので戦を納めたらしいのは――マントを深く被った少女、レティーシア。
オルフェウスは礼を何度も言い、恩人と仲良くなりたかった。だが彼女は声を聞かせてすらくれない。ただ無言で薬草を煎じ、食事を盆に置くだけ。
ある日オルフェウスは手紙を書いた。
《可愛らしい我が恩人よ、お名前をどうか教えてもらえないか?》
その日の食事の盆には小さな紙片が添えられていた。
《レティーシア》
それから二人の文通ははじまった。
《レティと呼んでいいか?》
《…いいよ》
《ずっと一人で暮らしているのか?》
《…魔女はそういうものだもん》
《何か、私にも聞きたいことはあるか?》
《…料理の味はどう?》
《…量が多くて嬉しいぞ。ただその…若干しょっぱすぎる》
《…ごめんね。料理は苦手なの》
《……レティは可愛いな》
無口な彼女との筆談が日課になった。
ある日、ふとした拍子に彼女のマントが外れ、透き通るような銀髪と色白の美しい美少女が現れた。
あまりの可愛さに驚いたオルフェウスは体勢を崩し、小さな彼女を抱きかかえるように転ぶと――唇が触れた。
「な、な、な、な、!!!こ、こ、こんな破廉恥なことしたらっ……けっ、結婚しなきゃなんだからぁぁぁっ!」
「……えっ、可愛いすぎるな!!!もちろんよろこんで!!」
即答し抱き締めるオルフェウスに、顔を真っ赤にしたレティーシアが両手で顔を覆う。
――それが、二人の始まりだった。
◆
現在。
王城の王の私室に現れたレティーシア。
オルフェウス以外は子供たちとレオネルとカトレアしかいないのだが、やっぱり人の多さに震えていた。
「いやああぁたくさん人がいるうううう!!帰りたいぃぃ!!」
すぐさまオルフェウスが抱き寄せ、マントで覆い隠す。
「……変わらず可愛いのう、レティ。君に触れられるのは私だけだから安心せよ」
「オルさまぁぁぁ」
抱きしめられ、耳まで真っ赤になって震え混乱する妻をあやす王。
二人の甘さに、ソフィーアとレイモンドは砂糖を大量摂取した顔をしてレオネルとカトレアを連れ、同時に扉を閉めた。
「……何を見せられてるのよ!」
「親世代、強すぎる」
「しばらく放っておこ」
「そうだな、妹よ…」
ただソフィーアはそっと心の中で呟いた。
(お母様……それでもずっと見守っていてくれたんだね)
まあいっか、と思えるのはやはり二人の子供なのかもしれない。
レティーシアとオルフェウスは交際0日婚です。
まだこの時、オルフェウスは王太子ではなかったのですが色々あって王様になっちゃったので色々揉めたのですが、オルフェウスは妻に激甘なのでどうにかしたようです。しかも少なくとも三日に一回は必ず会ってます。




