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新人侍女メリノアの王宮記録〜王城のおしどり夫婦たちの観察日記は溺愛だらけ〜

【王宮日誌】


――筆者:新人侍女メリノア


はじめに


 私、王城に仕えるようになって日も浅い新人侍女のメリノアです。

 有名な『王女殿下の忠実なる侍女カトレア様』に憧れ、厳しい試験を合格し念願の王宮侍女になりました。


 運の良いのか悪いのか、私の直属の上司は王太子妃となられたカトレア様、そして王宮にいらっしゃる時の公爵夫人ソフィーア様。

……つまり、常に王城きっての「おしどり夫婦」お二組を間近で観察できる立場にあります。


表向きは完璧で皆の憧れである王太子妃のカトレア様、いつも落ち着いていて冷静な公爵夫人のソフィーア様。

けれど、その裏には――想像もしない一面と、甘すぎる殿方たちのお姿がありました。


以下、私が見てしまった“記録”です。



日誌その1:舞踏会のあと(カトレア様と王太子レイモンド殿下)


 今回、舞踏会の主役を初めて務められたカトレア様は初めてとは到底思えず、溜め息が出るほどにお美しさも所作も完璧でした。

 最後のカーテシーも、まるで教本のお手本…誰もが「理想の王太子妃」と讃えました。


――けれど。


 舞台裏の控え室にて。

人の目がないとわかるや、カトレア様の瞳からぽろっと大粒の涙がこぼれ落ちました。

(申し訳ありません、出ていくタイミングがなかったのですが私は柱の影におりました)


「……ふ…うっ…っふうぅ……ぜんぜん、うまくっできなかっ……」


 嗚咽が混じり、途切れ途切れに言葉が漏れたその瞬間――扉が開き、殿下が入ってこられました。

彼女が慌てて俯く前に、殿下は迷いなく抱き上げたのです。


「……出来すぎだったぞ。それに…完璧な王太子妃じゃなく、カトレアだから結婚したんだ。だからもう、泣くな」

「れ、れいもんどさま……!」


 子供のようにしがみつくカトレア様を殿下はただ優しく撫でていました。

 驚くべき光景であるものの、私はカトレア様を大好きになりました。


(※観察記録:王太子殿下は、妻が“泣き虫”であることをむしろ愛しているよう。なお、私はほふくぜんしんで部屋を出た。)



日誌その2:厨房横にて(ソフィーア様と宰相レオネル閣下)


 外交の茶会で甘党の使者の方がおり、お菓子が全く足りなくなり侍女達が大騒ぎしていたときのこと。颯爽と厨房に現れたのは公爵夫人であり元王女殿下のソフィーア様。

 手慣れたご様子で手際よく小麦粉を計り、生地を練り、焼き上げる。


 その姿はまるで熟練の菓子職人でした。


 そこへ公務で外交に当たっていた宰相閣下が現れ、彼女の焼いた菓子をつまみぐい。


「……君の味だ」

「お、お菓子なんて同じような味です!」

「いや。君の作ったものだから、美味いんだ」


 ソフィーア様は真っ赤になってふるえていましたーーですが、そう言った閣下の耳もほんのり赤かったのを、私は確かに見たのでした。


(※観察記録:昔は冷徹無慈悲とも言われていたとお聞きした宰相閣下は、冷徹どころかただの“恋する男”)



日誌その3:外交の夜会(カトレア様と王太子レイモンド殿下)


 夜会の最後、皆の視線を浴びながら優雅に挨拶をし、踵を返し美しく退場するカトレア様。

かなり踊りをこなされていたにも関わらず、疲れは一切みえません。完璧。完璧すぎる。


しかし控え室に戻るやいなや――。


「っ、あっ……うぅっ」


 よろり、とへたり込み腫れ上がった足首をさすっている。侍女たちが声を掛けようとし、近衞騎士が手を差し出そうとした瞬間のこと。

 レイモンド殿下が現れ、当然のように彼女を抱き上げた。


「…俺が運ぶ。……カトレアの足を酷使させたのは俺の責任だ」

「あっちょっ…殿下、皆が見ておりま……っ」

「…俺の妻を抱くのに理由が要るか?」


(※観察記録:眼光鋭く騎士を制した王太子殿下は私室にちゃっかり連れて行き、何故か翌朝カトレア様の足首は悪化しており国王様にレイモンド殿下はお説教をされておりました。)



その四:城下の祝祭日(ソフィーア様と宰相レオネル閣下)


 式典の挨拶を終え、子供たちから貰った花束を抱いたソフィーア様が階段に足を取られた。

その瞬間、宰相閣下はすごい速さで花束もろとも抱きしめて支えた。


「……怪我がなくてよかった。君は何よりも大切だから」

「れ、レオネル様!人前ですのに!」

「何も恥じることはない」


普段は柔和な宰相閣下が、真顔で真剣に言い切った。当然、ソフィーア様のお顔はきれいに染まっておりました。

周囲の民は慣れた様子で「あらあら」「まあまあ」とにこにこしていました。


(※観察記録:とんでもなくあまあまな、国民公認のいちゃつき)



終わりに


カトレア様は完璧に見えて実は人一倍努力家、かなり泣き虫。

けれど、王太子殿下はそれすらも包み込み、むしろその可愛さを誇らしげに愛している。


ソフィーア様は冷静でしっかり者で素直で可憐。ときにドジをなさるけれど、その度に宰相閣下が深く恋に落ちてしまっている。


――この二組がいる限り、この国は大丈夫のようです。

そう確信しながら、私は今日も観察を続けている。


以上、メリノアの日誌でした。


 新人侍女メリノアの日誌は、侍女だけでなく騎士達までもが回し読みしてほっこりしたのだが、日誌としてはあまり意味がないため、真っ赤な顔のカトレアに叱られた。

 だが、レイモンドの取りなしによりーー私的なメリノアの観察日記は続くことになったのである。

メリノアとカトレアは似ているようで似ておらず、メリノアの方が豪胆であっけらかんとしています。

可愛いのでお気に入りのキャラです。子育てで右往左往するカトレアと意外と落ち着いていてちょっとズレたメリノアの会話なんかも書きたいですね。

よろしければブクマ、レビュー、感想などよろしくお願いします!

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