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天海美漣

 私の名前は天海美漣あまがいみなみ。いかにも真面目で、成績優秀な生徒会副会長、というのが端から見た私のイメージだろう。

 しかし、実際はゴリゴリのオタクである。テスト前以外の時は、すべての時間をアニメの視聴やゲームに費やしている。

 そんな私がなぜ生徒会副会長なんてやっているのかというと、親にやるように言われたからだ。私の父は市議会議員長をやっていて、私にも同じ道を辿ってほしいようだ。

 成績を維持して、生徒会の仕事をある程度こなしている限り、隙間時間は好きに使えるので、表面上は従っているふりをしている。


 8月27日、今日も朝早いのは嫌だけど、夏休み明け早々、生徒会の仕事があるから早起き。自分の二階の部屋からリビングのある一階に降りると、父が朝食を終えて、仕事に行くところだった。

相変わらず、お母さんのいってらっしゃいには「おう。」としか言わない。


「おはよう。ご飯できてるわよ。」「おはよう。」そう返して、席に着いた。テレビの天気予報では今日の天気は雨。折り畳み傘を持っていこう。

 残さずに食べ終えた後、ごちそうさまと言って自分の部屋に鞄を取りに戻った。

 折り畳み傘と文房具などをしっかり確認した。

 部屋にある目覚まし時計でまだ十分ほど時間に余裕があるのを確認した。

 この目覚まし時計は中学入学の時おばあちゃんに買ってもらったものだ。

 一階に降りて、鏡で前髪の最終チェックをする。

 よし。

 髪を結えるかどうか迷ったが、今日はこのまま行くことにした。

 いってきますと言って扉を開けた。


 外で数秒歩いただけで額に汗が滲む。学校の校門に着く頃には体力をごっそり持っていかれていた。

 自慢ではないが、運動はあまり得意ではない。

 朝早くから校長先生も暑そうに、日陰で汗を拭きながら登校する生徒に挨拶をしている。

 おはようございますと首だけで礼をして、校舎の中に急いだ。早く校舎の中に入りたかった。

 生徒会室にはすでに会長がいたので、とても涼しかった。


 鶴谷正輝つるやなおきは一年生にして生徒会長だ。

 この学校では人望(主に中学での成果)と成績順で希望次第で、一年生からも生徒会長になれる。

 つまり私は結構すごいほう。鶴谷とは同じクラスだ。

「今日は髪をおろしてるんだな。なぜだ?」

「気分。」素っ気なく返してしまった。

「似合ってるな。」つい目線をそらしてしまう。

 即座に話をそらして、何とか繋いだ。

 そこに網代理禾あじろりかが入ってきた。

 彼女は私の幼馴染で生徒会書記をしている。もちろん彼女も一年生だ。

 会長も副会長も一年生となると、先輩が生徒会に入るのは気まずいらしい。だから、生徒会は私たち三人だけだ。


 仕事が終わり、鶴谷と理禾と一緒に教室へ向かった。

「そういえば最近学校の近くに不審者がでてるらしいよ。」理禾が話し始めた。

「ただの噂だろうな。怪しそうに見える人がいただけだろう。」鶴谷の返答に、理禾は口を曲げていた。

「それで言うと、今日は転校生が来るそうじゃないか。」

 そういえばそうだった。どんな人だろう。

 教室に入ると大きな人だかりができていた。

 転校生がクラスの陽キャに質問攻めにされていた。

 参加していない人も何人かいたがほとんどは質問攻めをするか、何も話さなくても渦の中で笑みを浮かべている。

 そろそろホームルームの時間なので、座るよう声を掛けようとしたのと同時にチャイムが鳴って、目の前が青い光でいっぱいになった。


 気が付くと中世ヨーロッパのような町の中にいた。隣には鶴谷と理禾がいる。

 どゆこと?このイレギュラーすぎる状況にいつもクールな鶴谷もポカンとしていた。

「な、何が起こったんだ?」

「わかんない。」と鶴谷も理禾も状況が呑み込めていないようだ。

 すると、さっきまで道を歩いていたと思われる人が話しかけてきた。

「あんたたち、どっからきたんだ、不思議だな。」少しなまりのある喋り方をするおじいさんだ。

 するとおばあさんも来て、「異界者じゃないのかい?ほら、別の星の人だよ。予言があったろう。」

「そうだったな。んじゃ、この子たちはお城に案内するんか?」

「それがいいだろな」

 目の前の会話に全くついていけない私たちに笑いかけてきて、「びっくりしてるだろうけど、とりあえず一緒にあのお城まで来てくれないか?」と言ってきた。

「分かった。」鶴谷が勝手に答えちゃった。

 鶴谷には、いつもみたいに考えがあるんだろう。代案どころか、まだ状況を完全に呑み込めていない私は鶴谷の判断に身を委ねることにした。

 私と同じように不安だったのだろう。本当に大丈夫なの?と理禾が鶴谷に耳打ちをした。

 取り敢えず情報収集をしないといけないからということらしい。


 老夫婦たぶんはこの世界について教えてくれた。

 ここはエテラル星のコリナという場所らしい。魔法とかもあるらしい。

 つまり、ここは異世界。

 俗に言う異世界転移。それに、異界者(私たち)は魔力量が多い場合が多いらしい。これはテンションが上がる。


 しばらくすると、お城の門に到着した。門では洋風の槍を持った兵士が見張りをしていた。ここまで連れてきてくれた老夫婦が話をしてくれた。

「じゃあ、わしらはここまでだな。頑張ってな。勇者様。」勇者様ということはやっぱり、異世界系お決まりの膨大な魔力に加えて、チートスキルとかもあったりするのかな?

 さっきまでの不安はどこへやら。私はワクワクした気持ちでお城の中を進んでいった。


「ここか。」鶴谷が大きな扉の前で立ち止まった。

「たぶん。」鶴谷が扉を押し開けた。赤がメインで使われてるもので装飾された異世界感溢れる玉座部屋だった。


 中には王様っぽい人と、その護衛が二人、魔術師みたいな人が一人、秘書が一人、そしていつも教室のなかでも感じが悪いクラスメート六人(通称城倉グループ)がいた。


 保苅紘弥ほかりひろや、サッカー部で運動神経はクラス内ではトップレベル。その反面、勉強はできず、色々とマウントをとってくるということで、あまり人気はない。


 武永富菜たけながふうな、弓道部女子エース、中学校の時にいじめをしていたという噂がある。勉強も多少できる。


 千原 川音ちはらかわね、これといった具体的な悪い事件はないが、様々なトラブルによく首を突っ込むところや、陰口の多さなどから多くの人に嫌われている。学力は檜山と同等。


 檜山凛矢ひやま りんや、中学では有名なヤンキーで、喧嘩腰。帰宅部で、もちろん勉強はできない。


 城倉宗慶じょうくらむねちか、このグループのリーダー的存在。文武共に学年の中でも上位。帰宅部だが、体育祭では大きく活躍した。ルックスもよくモテるのだが、言葉では表せない異様な雰囲気で嫌う人も少なくない。


 このグループのメンバーは全員揃っているみたいだ。


「ほかの人たちはどこだろうね」理禾が周りを見渡しながら言った。


「この転移がクラスだけに当てはまるのか、学校全体なのか。やはり、情報収集は必須だな。」

 鶴谷が手を顎に当てて考えている。


「それより、ここって本当に…」安全なの?と言おうと思ったときにさっき私たちが入ってきた扉が開いた。入ってきたのは教室の中で転校生を囲んでいた人たちのようだ。


「これで、この大陸にいると思われるのは全員です。」王様のそばにいる秘書が言った。


「うむ。異界者達よ。突然のことでさぞ驚いているところすまないが集まってくれたこと感謝する。君たちはこのエテラル星に転移したのだ。」


「なんで、こんなとこに呼び出したんだ!」転校生の周りにいたグループの沖村峻綺おきむらしゅんきが一歩前に出た。


「転移した理由は我々もわかっておりません。このリルガア城に貴方方をお呼びした理由は我々の戦力になって欲しいからです。この星は七つの大陸それぞれの国に分離されています。アルバロ、サバイアと同盟を結んだ我々は宗教、経済問題でオシディナ、ギオルノ対立関係にあります。」


「俺たちに戦争に行けと?それを承諾するとでも?」さすが鶴谷、もっと言っちゃえ。戦争に行くのなんて、ごめんだね。


「うむ。其方の意見はもっともだ。だがしかし、仮に我々の国が敗北した場合、其方たちもこの国にいる限り、敗北となる。国の敗北は民の敗北。苦しい生活となるだろう。」なんだそのルール。


「なら、この国を出ていくまでだ。」そーだ、そーだ。


「しかし、貴方は今一文無しでは?この世界の情報もない。この国の外には魔物などの危険もございます。少なくとも魔力を扱えるようになり、ある程度の資金を得てからこの国を去るのをおすすめします。」確かに?


「我々はなにも、戦争に行けといってるのではない。現に、まだ戦争は始まっていない。もし、争いが起こった際に我々の味方でいて欲しいのだ。実際に戦わなくても我々を支援し、相手国に協力しなければ我々としてはそれでいいのだ。」なんか分かるような、分からないような話だった。


「俺たちにそこまで固執するのは、俺たち異界者が膨大な力を持っているからか?」


「その通りだ。」今まで発言してなかった魔術師が答えた。「異界者の能力の限界値は計り知れない。間違っても敵陣営には回って欲しくないのだ。」


 なんとなく話が見えてきた。要するに私たちが敵になってほしくないから色々提供して、媚びを売ろうってことか。


「皆どうだろう、とりあえずここでお世話になるのも悪くないんじゃないかな?」沖村が周りを見渡す。


 私はそれでいいと思う。城倉グループの中にも反対する人はいないようだった。


「話はまとまったようだな。取り敢えず魔力操作、この世界の常識を身に着けるということでいいな?」


「それで頼む。ええと…」


「コリナ王国国王のディルク・コルブゼニル。そしてわしの秘書のアラン・ローク。魔術師のエーミール・ポールタだ。」


 そういうことで、私たちはこのお城にお世話になることになった。クラス25人中15人はそれぞれ部屋をもらい、魔術やこの世界について学ぶことになった。

 他の10人は別の大陸に転移したらしい。生死は不明だ。生きているといいけど。

 私が思い描いていたチートスキルでただ無双するのとはかけ離れて、色々複雑なことがあるけど、魔法を学ぶのは楽しみだ。難しいことは鶴谷に任せればいいしね。早くファイアーボールとか打ちたいな。


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