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青い光

「なぜ?」

 その言葉が頭の中に充満している。

 毎日、同じことの繰り返し。

 自由も、変化も、何もない。

 他人と比べられ、他人に合わせることを求められる。

 何か変わりたい。でも、どうしてもその方法が見つからない。

 俺は、ただ流されるだけの人生を送っているのか?


 そう思っていた日々が、突然、異世界への転生という形で崩れ去った。




優聡まさと、早く学校に行きなさい」


 台所の方から母の声が部屋の中に入ってくる。

 学校に行って何がある?そう思いながらも、行かなくてもなにかあるわけじゃないから、鞄片手に部屋を出た。


 ついに朝ごはんを作らなくなった母が何かを何か言おうとするのに気付かないふりをして傘を持って家から飛び出した。


 いつもの空の下、いつものアスファルトの上を通り、新柊しんひいらぎ高等学校の看板のよこを通りすぎ、校長先生の挨拶を無視して校舎に向かった。

 あたりを取り囲む雑音を押し抜けて1-2の自席に座る。


 チャイムの音が黒板に向かって走り抜けていく。それと同時に教室を青い光が包んだ。


 ――??


「……え?」

 目をこすり、二、三度瞬きをしてみる。

 けれど、目の前には見覚えのない森の景色。

 どうやら、ここは教室ではなく、まったく異世界に転移してしまったようだ。


 ほっぺたをつねる。

「痛い……」

 幻覚ではない、間違いなく異世界に来てしまったんだ。


 どうしてこんなことになったのか疑問だらけだが、まずは周りに誰かがいないか探すことにした。

 ふと、目に留まったのは、淡い青灰色の岩の丘。そこに登り、周りを見渡すと、藁の屋根が見えた。どうやら村らしい。

 太陽がまだ沈んでいないことを確認し、村の方向に走り出した。


 走るうちに気づいた。体が妙に軽い。疲れないし、普段の倍以上の速さで走れる。体内を流れる暖かいものが強く感じられる。これは…魔力、か?

 良く分からないが何かしらの能力があるのだとしたらありがたい。


 村に近づくと、何かの動物が村の方で動いていた。

 目を凝らしてよく見ようとすると、目が充血したように筋肉が締まって、いつもよりもよく見えた。空気中を漂う白いものも確認できた。


 動いていたのはねずみだった。しかし、それは地球で見るような小さなねずみでは無かった。背丈は7,80cmもあり、二足歩行で歩き、古びたローブを身にまとい、槍を持っている。


 少し気持ち悪い見た目をしているが、ゾンビとかよりはましだと思った。あまり強そうには見えないが、相手は武器を持っているので真正面から戦えば間違えなく負けるだろう。慎重に行動することにした。

 さっきやったように体の中のあたたかいものを目に集結させるのを途切れさせないように意識しながら村の周りを走った。家の数は6、ねずみの数は8匹のようだ。

 ねずみはほとんどが槍のような武器を持っていた。

 木の棒に錆びかけの金属をロープで巻いた少々雑なものだったが、それでも素手で勝てるようなものではなかった。

 かれこれ1キロ近く走ったが、ほとんど疲れていない。目にこのあたたかいものを集中させるほうが大変なぐらいだ。


 そうこうしているうちに日が沈んできた。お腹も空いたし、寝床もない。今日中に何とかする必要がありそうだ。幸い、村全体で見張っていたのは一匹だけだった。


 あの見た目だ。敵対してくる可能性は高い。

 こちらから、先制攻撃を仕掛けることにした。


 その辺に落ちている石を拾って、村の反対側に思いっきり投げる。

 ドサッという音を立てて草の上に着地した石の方に見張りのねずみが意識を向けた。その隙に手に思いっきり力を込めて、ねずみめがけて石を投げる。

 鈍い音とねずみの鳴き声が小さく聞こえてすぐ、ねずみの背後にダッシュで回り込み、ねずみの首の周りにロープを巻き付けた。

 殺すつもりは端からないので軽く締めて脅かせようとしたが、背後からロープを巻きつけられた時点で十分びびったらしい。ねずみはその場に崩れ落ちた。思っていたよりも怖がってくれてよかった。他も同じようにいくと助かるが…。


 さっきのねずみの鳴き声で他のねずみたちが家から出てきた。何が起こった?とでも言いたげな顔をしている。


 ねずみの中から一目で村長とわかるような長老が一歩前に出てきた。「お前さんかなりの強者じゃのう。殺してないということは敵意があるわけじゃなんじゃろ?」


 まじか。ねずみが喋ったという事実よりも、日本語だったことに驚いた。また、謎が増えた。謎を解決するためにもまず、敵意がないことを示すのがベストだろう。


「そうだ。俺は知識と寝泊りできるところが欲しいだけだ。」


「取り敢えず、そいつを開放してやってくれ。 」

 村長は俺の横で倒れているねずみを指さした。


 言われたとおりにすると、ついてこいといった感じで村長のねずみは一番大きい家に向かって歩き出した。


「色々説明する前にはっきりさせておきたい。お前さんは異界者か?」

 俺を含めた全員が家の中に入り、腰をおろしたところで話始めた。異界者とはおそらく、俺のような異世界転移?した人のことだろう。


「そうだ。俺は今日気付いたら、森の中にいたんだ。その前まではこことは違う場所にいた。」

 これで納得したという様子で、何が聞きたいのか尋ねてきた。まず一番興味のある魔力について聞いてみた。


 魔力とは生物が生きるために必要なものでそこら中にあるものらしい。異世界系ではお決まりの魔法や身体強化などもできるらしい。

 次にここがどこなのか聞いてみた。どうやらここはエテラル星のアルバロ大陸チェネ森林中心部らしい。

 この星は七つの大陸アルバロ、ギオルノ、サバイア、オシディナ、コリナ、イーユ、ヴィデで構成されているみたいだ。

 交渉してみたところ、村の仕事を手伝ってくれるのなら、ここに泊まらせてくれるらしい。

 この世界の常識や生き物がどう生きるのかをもっと知っておきたかったのもそうだが、一番は魔法に惹かれた。


 このなんのレールもない澄んだ青空の下の世界でどんな生活が待っているのか今から楽しみだ。







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