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妻の登場により顔色を無くし、おどおどしているだけになったトビー。 

妻の登場に驚いているが、自分には関係ないと毛先をいじっているヴィヴィアン。

そんな二人をじっと見つめ笑っているがその目がとても冷たいメリーアン。

アリシアたちは次の展開を見守っている。


「それで?相談内容は何?」

「あ・・・あ」

「仕事の事なので他部署の人には関係ないと思いま~す」

「あら、そんな機密事項をこんな大勢の前で話していいの?」

「そ、そんなに重要な話じゃ・・・」

「だったら別に私が聞いてもいいわよね、トビーの妻として一緒に考えてあげるわ」

「・・・・」

しばらくそのような問答が繰り返されたが、ヴィヴィアンの口からは具体的な相談は出てこなかった。

「相談自体が単にお誘いの常套句だったって事なのね?」

しびれを切らしたメリーアンがそう言ってのけた。

「そんなっ、ひどいです、私、そんなつもりじゃ・・・」

「じゃあどんなつもりだったの?」

「それは、えっと・・・、そう、アリシアさん達からいじめられててその相談を」

「いじめられてた?」

「そそ、そうなんですぅ、特にアリシアさんは私の教育係になってから毎日のように嫌がらせをしてきて、私毎日がつらくて・・・、それでトビーさんに相談していたんですっ」

そこにアリシアたちがいることも忘れたのか、ヴィヴィアンはそう言って泣きだした。

「ウソ泣きうまいんだよね~、ヴィヴィやんって」

そう言ってアリシアが笑っていた。

「ウソ泣きだなんてひどい事言うな!!ヴィヴィちゃんが可哀そうだろうが!!

どうしていつもヴィヴィちゃんをいじめるんだ」

トビーが思わずと言った感じでアリシアを怒鳴りつけた。

「ふ~ん、あんたそうやっていつも彼女を守ってあげてるんだ、へー」

メリーアンの感情の入ってない声がした。

トビーはハッとして逃げようとでもしたのか椅子から転がり落ちた。

「あ・あああ・・あ」

「本当に男って見る目がないのよね、こんなあからさまなウソ泣きに引っかかって」

「そんな、ひどい!!」

「だってあなたの目から涙なんて出てないじゃない。

両手を顔に当てて肩を震わせてただけでしょ?」

「・・・」

「女はねえ、女の嘘には騙されないのよ」

そう言われ、ヴィヴィアンはちっと舌打ちをした。

「はあ~あ、もういいでしょ?ちょっと誘ったら簡単にご飯奢ってくれて色々プレゼントくれるからご飯に付き合ってただけ。

別にこんなおっさんに興味なんてないわ」

こんなおっさん呼ばわりされたトビーは椅子から落ちたまま驚いたように目を見開いている。

「本当に気付いてなかったのね、役職もちなのにこんな節穴でいいのかしら?

ねえ、この人会社でちゃんと仕事回せているの?」

「ん~、まあまあですかね」

「一応副室長ですからね、そこそこですかね」

「ちょっと髪を気にしすぎてますけど、それ以外は普通ですね」

「ちょっとネチネチ言ってきますけど、まあそれなりですね」

「独り言が大きいんで返答に困るときはありますが、普通の上司です」

アリシアたちの返事に何故かトビーはがっくりと肩を落としていた。

「尊敬されてるとか思ってたんだ、すごい脳味噌に花咲いてんのね」

「アリシア、声に出てるって」

「ありゃま」

アリシアがてへっと笑ってごまかした。


「それで、ヴィヴィアンさん?夫とは浮気未遂って事でいいのかしら」

「はあ?こんなことくらいで?しかもこんな男と浮気なんてするわけないでしょ!!」

「そんなわけないでしょ?」

すっと真面目な顔でメリーアンがヴィヴィアンの顔をまっすぐみつめた。

「な、なによ」

「男性たちにに贈り物をねだり、高い食事を奢らせ、職場でもスキンシップをはかる。

独身ならまだしも婚約者がいたり既婚者だったりしたら、それははたから見たら浮気してるとしか見えないのよ」

「浮気なんてしてないわ!単に食事に行ったりプレゼントもらったりしただけよ。

皆仲良くしてもらっていただけで・・」

「そう言っても浮気をしてない証拠はないでしょ?浮気してると思われても仕方がないって事よ」

「そ、そんな」

「そうね、職場内での貴女の行動は問題視されていたしね」

マーガレットがそう言いだすと女性達はうんうんと頷いていた。

「実は派遣会社に連絡も入れていたみたいよ」

「誰が?」

「部長、室長が報告したみたいよ」

「そりゃそうよね、事務の補助をしてもらいたかったのに、部内をひっかきまわした挙句に、ろくに仕事もしない派遣なんてお荷物だもんね」

「しかも浮気疑惑が上がってるだなんて社内風紀に厳しい部長からしたら激怒もんだよね」

「エリーゼがいなかったら派遣会社ごと切られてたわ」

「そうそう、エリーゼのおかげで仕事がはかどったわ~」

「あの子事務の効率化も室長に提案してくれててね、作業が迅速になるって喜んでたわ」

メリーアンとアリシアたちの話を聞いてヴィヴィアンは顔色を無くしていた。


「あ、あの、派遣会社に報告したって本当ですか?」

「そうみたいよ」

「あの、派遣会社から何か聞かれたらアリシアさんから私がしっかり仕事してたっていってもらえませんか?私結構頑張ってましたよね?」

ヴィヴィアンが必死でアリシアにそう頼み始めた。

だが、

「え~だってあたしぃ、そんな難しい事できないですぅ~」

アリシアはそう言って両こぶしを顎のあたりにあてて体をくねくねさせていた。

「ぶふぅ!アリシアすごい似てる~」

「特徴をちゃんとつかんでるわね」

「流石アリシア」

そうでしょそうでしょ、と得意顔のアリシアにヴィヴィアンの怒りが爆発した。

「全然似てないわよ!!ふざけんな!!

なんでこのはげの奥さんが来てるのよ!!あんたの仕業でしょーが」

「え~ひど~い、あたし何もしてないのにぃ~、アリシアかなすぃ~」

「ウソ泣きすんな!!」

てへっとウソ泣きをやめたアリシア。

「まあ、何か聞かれたら正直に話すだけだからさ」

そう言ってにやりと笑った。

「そうそう、それに、夫との不貞関係が疑われるって事も報告しとくわね」

メリーアンにとどめを刺され、ヴィヴィアンは顔色を失っていた。

「人の顔色ってびっくりするぐらい白くなれんのね」

アリシアがそうポツリとつぶやくと、ヴィヴィアンはふらふらと店から出ていった。


床に座り込んでブツブツと何かをつぶやいているトビーを見て、メリーアンはあっとため息をついた。

「連れ帰って話をしないといけないんだけど、アリシア、頼める?」

「りょうかいです」

アリシアが返事をすると

「ぎゃ~~~」

トビーが大声を出して飛び上がった。

「ああああありしああああああ、おまおまお前~雷撃かあああああ」

「そうですけど?」

「上司にむかっておま「虫がいたんですよ、しかもでかい毒ガガンボが」」

「・・・」

「刺されてたら大変でしたよ~、あ、髪に優しい静電気も出るかもしれませんね、時間的に」

「!!!」

そう言われてトビーは頭を押さえると一目散に店の外へと逃げ出していった。

「静電気って時間で出るの?アリシア」

「うふ、まあね」

そう言って手のひらをパリパリさせたアリシアを見て皆は笑った。

「騒がせちゃったわね、ここまでの支払いは奢らせてね。

後は楽しんでちょうだい。

今度はゆっくりと誘ってね」

メリーアンは外に飛び出したトビーの後をゆっくりと追うように帰って行った。

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