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 「あの~ちょっと相談があるんですぅ」

「え?俺に?」

「はい、ちょっとここでは話しにくいんですけど・・・」

「じゃあ、食堂で聞くよ?」

「皆がいるところではちょっと・・・」

そう言って下を向いて肩を震わせるヴィヴィアン。

「じゃあ、どこかでランチでもしながら」

「どうせならディナーでもいいですか?そしたらゆっくり時間も取れますし」

「ん~まあ、いいか、いいよ、じゃあ今夜でも大丈夫かな?」

そう言って部内の中級職員ゴードンとディナーに行ったらしい。

それからも結構な頻度で《相談》とやらは行われているらしい。


「それからジェームスさんもパーシーさんもヘンリーさんもトーマスさんも」

「ちょちょ、そんなに沢山??」

「ビクター班長もトビー副室長もです」

「うわ~よくやるわ、あれ?タクキムは?」

「そう言えばタクキムさんから誘ってたみたいですが断られてました」

「ぶは、相手にされてないじゃん」

「という事で、男性職員はほとんどヴィヴィアンの味方なんです」

「まったく面倒くさいことになってる~」

「はい・・・」

「全員バリッと後ろから雷撃で「あんたまた物騒な事いってんじゃないわよ」」

アリシアの後ろから声をかけてきたのはマーガレットだった。

「あ、メグ」

「何でもかんでも物理攻撃で解決しようとするのやめなさいよ」

「あれ?また声に出てた?」

「ばっちりとね」

向かいでユーナもうんうんと頷いている。

マーガレットはそのままアリシアの隣に座った。

「なんか深刻そうだったからさ、何があったの?」


ユーナはもう一度マーガレットに今の部内で起こっている状況を話した。

「あらら~、そりゃ面倒くさい()が来ちゃったのね~」

「そうなんです、もう一人のエリーゼさんは覚えも早いし問題ないんですけど・・」

「とりあえず明日からは私がヴィヴィやんの教育係になるわ」

「先輩?」「アリシア?」

「そうとなったら早速課長に、いや、この際部長に直接言ってくるわ」

アリシアが立ち上がって部長の所まで行ってしまった。

「待てって・・・、あ~あ、行っちゃった」

「マーガレット先輩、どどどどうしましょう」

「まあ、アリシアがああなったら誰にも止められないわよ」

「そうなんですけど・・・なんか逆に心配です」

「アハハ、まあユーナは明日から通常業務を普通にこなしたらいいわよ。

後はアリシアに任せちゃいな」

マーガレットはそう言ってユーナの頭をよしよしと撫でた。

(暴走雷対ぶりっこ相談女、なんか面白そうね)

マーガレットは明日からをちょっとだけ楽しみにしていた。


「おはようございま~す」

ヴィヴィアンが職場に行くと、見た事のない女性が近寄ってきた。

「おはよう、貴女がヴィヴィやん?」

「え、ええ」

(なんかヴィヴィやんって聞こえたけど、気のせいよね)

「あたしはアリシア、今日からあなたの教育係になったの、よろしくね」

「あ、はい」

(あの地味ユーナ、とうとう教育係から降ろされたのね、ぷぷ)

ヴィヴィアンがニヤニヤとしていると、机の上にポンと書類の束が置かれた。

「あの?」

「ああ、これが今日の貴女の仕事ね」

「あの、あたしこんなに沢山難しい仕事は・・・」

「えええ!!!!こんな簡単な事も出来ないの??」

アリシアの大声に周囲がなんだなんだと近寄ってくる気配がする。

「だって、あたし、まだちゃんと教えてもらってなくて・・・」

そう言って下を向くと周囲の視線がヴィヴィアンをかばう空気に変わるのだ。

「へー、この書類の同じ位置に穴をあけて綴じるだけなんだけど、それもできないの?」

「へ?」

「だから、書類に穴をあけて綴じるの。それくらいうちの息子が5歳だった時にもできたわよ?」

周囲が違った意味でざわざわしている。

「何だ、もっと難しい仕事かと思ってたよ」「穴開けるくらいなら幼児が魔法練習にやるよな」

「ヴィヴィアンちゃん、それくらいは流石にできるっしょ」「教えてもらってないって親教えてくれなかったのかな?」「つーか、アリシア書類ため込みすぎじゃね?」「あいつ細かい作業嫌いなんだよな」

「ヤダ、あの子穴あけもできないって、他に何ができるのかしら?」

周囲の声にヴィヴィアンは恥ずかしくて顔が赤くなっていく。

「こんなことくらいできますから」

そう言うと、

「じゃ、よろしく~」

そう言ってアリシアは自分の席に戻って行った。

(何よ!最初から穴あけって言えばいいのに、むかつく~)

ヴィヴィアンはいらいらしながら書類に穴をあけていく。

「なんでこんなにたくさんあるのよ・・・」

あけてもあけても書類は終わらない、ふと顔をあげると、空間鞄から次々と書類を出しては載せているアリシアと目が合った。

「あら、見つかっちゃった」

どうやらヴィヴィアンが穴をあけている間にどんどん書類を置いていたらしい。

「何してるんですか!!」

「いや~、せっかく穴開けてくれる人がいるから、ため込んでたヤツもやってもらおうかなって」

てへっと言いながら書類を置いている。

「追い書類置かないでください!」

「え~」

「他の仕事ができないじゃないですか!!」

「あ、他の仕事もやってくれるんだ、じゃあしょうがない、今日はここまでにしとく」

アリシアはそう言って鞄を閉じた。

(そうじゃない~~~~~)

結局ヴィヴィアンは午前中かけて書類に穴をあけた。


昼休み、ヴィヴィアンは男性職員に泣きついた。

「アリシアさんてばひどいんですぅ、ヴィヴィ、ずっと穴をあけてたんですよ?

目も疲れるし、細かい魔法使い続けさせられたんですよ?」

「ああ、ヴィヴィアンちゃん可哀そうに」

「しかし、アリシアもため込んでたな」

「ああ、出張とか行くとなかなか書類整理できないんだよな」

「そうそう、ヴィヴィアンちゃんに手伝ってもらえるとありがたいよな」

「俺もヴィヴィアンちゃんに頼もうかな」

「俺も」「あ、俺も頼みたいな」「俺も」

どんどんと賛同者が増えていく状況にヴィヴィアンは焦ってその場を離れた。

(穴あけばっかりで1日が終わっちゃうじゃない!冗談じゃないわ)

ヴィヴィアンは男性職員に見つからないように昼休憩を過ごし、そうっとデスクに戻った。


「ヴィヴィやん~、午後からの仕事なんだけど」

(ヴィヴィやんって聞こえるわ?まさかね)「穴あけは嫌ですよ」

「ええ~ま、しょうがない、またにするか」

「また?またやらせるつもりですか?」

「え?だって仕事だし」

「自分でやりなさいよ」

「え?」

(いけない、つい素のままで言い返してしまったわ)

「じゃあ、午後からは違う仕事をしてもらうかな」

(ふん、どんな仕事を任されてもユーナみたいにしてやればいいだけだわ)

ヴィヴィアンはそう思っていた。


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