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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第二章:ワクワク遊園地デート作戦

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07

感想をお待ちしております。

 紗友里のぶりっ子でいい子ちゃんな性格を叩き直してやりたい。亜矢奈はそう思った。


 ナヨナヨした人間は嫌いだ。紗友里はもっと自分を主張するべきなのだ。言いたいことも言わずに黙っているのは体に毒である。


 紗友里の態度次第では友達になってあげてもいい。

 他のクラスメイトと同じように彼女が自分を崇めてくれるなら、「オシャレ道」の師匠として弟子入りを認めてやらないこともない。

 

 せっかく可愛い顔をしているのだから、メイクやファッションに目覚めた方がいいと思う。紗友里は磨けば光るタイプだ。ダイヤの原石だといえる。


 亜矢奈は紗友里のルックスだけは認めていた。自分ほどではないが、このクラスで上位にランクインする美少女として高く評価している。


 森亜矢奈という可愛さのスペシャリストが同じ教室にいる。このアドバンテージを活用すれば、紗友里は可愛さを極めることができるはずなのだ。なのに、それをしないのは勿体ない!


 ライバルを増やすことになっても別に構わない。絶対に負けるつもりはなかった。とはいえ、もし紗友里が自分に引けを取らないほどのオシャレ女子になったなら、それはそれで喜ばしいことである。なぜなら、彼女をプロデュースしたのは自分であるからだ。すべて亜矢奈の手柄にできるということだ。


「待ってなさい、松浪紗友里。私がアンタを化けさせてやるから」


 再び紗友里の方を見る。

 彼女は相変わらず一人ぼっちのまま、何を考えているのかわからない顔をしていた。でも、そういうところも可愛い。


 いつの間にか亜矢奈は紗友里に夢中になっていた。

 彼女が他人にここまで興味を示したことは一度もないかもしれない。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 一方、その頃。紗友里は遠くから亜矢奈に見られていることも知らずに、卑猥な妄想をしているのだった。


 愛読している百合漫画の登場人物を自分と由利香に置き換えて、漫画内の様々なシーンを脳内で再現する。すべてユリエルに筒抜けであることも忘れて妄想に没頭した。


 紗友里にとって妄想は日課である。通勤中のサラリーマンが電車の中で新聞を毎朝読むのと同じようなことだった。最早それをしないと気が済まないのである。


 妄想の世界に登場する由利香は紗友里の理想を詰め込んだ人物像となっている。

 そこでの彼女は紗友里の思い通りの言動を見せるのだった。


 実際の彼女が理想通りの人間性であるとは限らない。だが、現実の由利香と妄想上の由利香は決してかけ離れた性格ではないはずだと、紗友里は心のどこかで感じていた。


 由利香のことを思うだけで頭が沸騰しそうになる。彼女への愛は狂気そのものだった。


 ――ねぇ、宮園さん。どうして私はあなたの虜になっちゃったのかな?


 その問いに対する答えは返ってこない。答えは闇の中である。


 謎は謎のまま誰にも解かれることなく、紗友里の脳内を彷徨い続ける。操縦士と行き先の両方を失った幽霊船のように、それは灰色の海をゆらゆらと漂うのだった。


 だが、紗友里が求めているのは明確な答えなどではない。好きになった経緯はさほど重要ではないからだ。どのような理由であれ、由利香に想いを寄せているという事実に変わりはない。


 望むものはただ一つ。由利香と両想いになることである。


 彼女の気持ちが知りたい。自分を愛してくれるのか。自分の愛を受け止めてくれるのか。

 果たして彼女との未来は存在しうるのだろうか。


 その答えを知るのは恐い。

 期待していたものとは異なるかもしれないから。

 

 残酷な真実を突き付けられるくらいなら、このまま何も知らなくていい。


 悲しい結末を想像すると、胸が締め付けられ、とても切ない気持ちになる。

 由利香への愛の告白が、すべての希望を打ち砕く取り返しのつかない結果を招くものだとしたら、もう二度と立ち直れない気がするのだ。


 紗友里は思った。自分は夢を断たれる恐怖から逃れるために、こうしていつも妄想をしているのかもしれない。


 妄想は自分を裏切らない。妄想は理想だけを映し出す。痛みや苦しみを忘れさせてくれる。

 この世で最も美しく、そして最も悲しい嘘なのだ。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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