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「アンタの夢にあたしも共感したわけ。とても素敵な計画だと思うわ。やっぱり女の子は女の子と恋愛するべきよね。女の子だけの世界なら、それが常識で、ステータスで、日常茶飯事になるわ。あたしとアンタで百合の理想郷を築き上げましょう」
そう言ってリリィは腰をくねらせる。
悪魔が天使に力を貸すなど、前代未聞のことであった。
本来、両者は常に対立し合うものだ。
天使が白と言えば、悪魔は黒と言う。
意見の一致などあり得ない。
だが、ユリエルが成そうとしていること対してリリィは賛同の意思を表明している。
そこにどのような意図があるのかはわからない。信用できない相手だ。このまま素直に協力するとは考えられない。彼女は何かを企んでいるのではないか。
「確かに私は少女楽園計画を提唱した張本人ですが、計画の内容を知るのはごく一部の者だけです。悪魔のあなたがどこから情報を仕入れたというのですか?」
「ふふふっ。な・い・しょ」
リリィはウィンクをしながら右手の人差し指を口先に当てる。
彼女が見せる仕草の一つ一つにユリエルは嫌悪感を抱くのだった。
「何を考えているのかわからない相手と協力するつもりはありません。この計画は我々だけで完遂しますから」
「水臭いわねぇ。ま、アンタが何を言おうと関係ないんだけどね。あたしはあたしのやり方で理想郷を作ってみせるから」
「どうぞご自由に。できるものなら」
「できるわ。アンタたちよりも、よっぽどいいものを生み出せる自信があるもん」
余裕を見せるリリィ。
ユリエルと結託はせず、独自の手法で目的を果たすつもりのようだ。
「松浪紗友里はしばらくアンタに預けるわ。でも、時が来ればあの子を無理矢理奪い取ってやるから、覚悟しておきなさい」
そうはさせない、とユリエルは思った。
紗友里は自分のパートナーである。誰かに奪わせるつもりはない。
「また会いましょうね、ユリエル。次は今日より気持ちいいことしてあげるから、楽しみにしてなさい。じゃ、バイバイ」
そう言い残し、リリィは壁の表面に出現した魔法陣の中へと消えていった。
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