4話 後悔
(あぁ・・やってしまった。)
ミサキと杏奈は少し授業に遅れてしまう形となったが、互いの授業に参加した。
ハンカチは気にしないでという杏奈に無理強いして必ず洗って帰すと約束し、何とか関係を繋いだが恐らく杏奈から見たミサキの印象は最悪だろう。
ミサキはハンカチを少し嗅いでみる。石鹼で汚れを落としたが、ローズマリーのような香りをミサキは微かに感じた。
(杏奈の匂いだ。)
杏奈との出会いは偶然だった。2年生に上がってすぐ、ミサキと杏奈は席が隣同士になった。昼休みに杏奈が音楽を聴き始めた時、イヤホンが繋がっておらず大音量で音量を流していたのをミサキが教えて上げたのだ。
恥ずかしそうに教科書で顔を隠す杏奈に「その歌手俺も好きなんだよね」と緊張交じりに話を繋げ、仲良を深めていったのは、いい思い出だ。
(杏奈に嫌われてたらどうしよう)
ミサキは先ほどの奇行を思い出し目に涙の湖を作ってまう。それを見た隣に座る川島がこっそりと耳打ちする。
「ミサキどうしたの?さっき遅れてきたけど、誰かに何かされた?」
移動教室であった為、席は教室とは異なり縦に長いテーブルが3つ置かれている。そのテーブルを間に挟み生徒達は座っている。教室とは異なりミサキと川﨑は現在隣同士だ。
「えっ?あっ違う違う。そんなんじゃない。ちょっとやらかしちゃって落ち込んでただけ。」
「あーなるほどね。うちもこの間弟の携帯勝手に弄って遊んでたら本気で殴られたんだよね。誰でも失敗はあるんから。お互いめげずに頑張ろ!あと!聞いてほしかったらいつでも聞くよ。」
川﨑は結構口は堅いかんねっと言いながら唇に指を当てウインクする。
「ありがとう。川島って優しいんだね。」
ミサキがうるうるとした瞳で笑いかけたら、川島は少し顔を赤くして、前を向いてしまった。小声で「美人の涙目破壊力やばっ」と言ったがミサキには聞こえなかった。
(そうだよ!一回嫌われたならそれを汚名返上すればいいだけだ!頑張れ!俺!)
ミサキは小さく気合いを入れると授業に意識を切り替えた。