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1話 懐かしい風景と知らない自分

(何か聞こえる・・・・。)


「ねぇ、ねぇってば」


(誰の声だ?少し懐かしい気もするが・・・。)


「そろそろ起きないと先生が来るよ!ほら!」

ミサキは気だるそうに目を開ける。


「先生って、病院の先生?」


声をかけた主は呆れたように答える。


「病院?君って入院でもしてたの?あっ先生が入ってきた。注意はしたからね!」


そう言って声の主は隣の席に座った。


(一体ここはどこだ?あれ、俺何で机で寝てるんだ?)


おぼろげな頭で入ってきた先生呼ばれるものを見つめる。彼は黒板に名前を書き始めた。そして書き終わると同時に振り返る。


「今日から、担任になる深谷宗介ふかやそうすけだ。皆よろしくな。」


新生活に心を躍らせる生徒達に深谷先生は挨拶した。よろしくねーそうちゃん!などの女子達のからかいの声などもあるが「おいおい、勘弁してくれよ」等と答え生徒と心の距離を短くしようとする姿はとても懐かしく思えた。嫌、とてつもないデジャヴだ。


城島ミサキは高校の入学当日にタイムスリップしていた。


少し傾いている机、懐かしい友の声にノスタルジックな気持ちに浸っていたが、妻である杏奈の事が気になる。もしかして今病院ベットの中で見ている夢なのだとすると、早く目覚めなければいけない。


隣の席に座っている眼鏡をかけた、眠たそうな男子に声をかける。名前は確か、早乙女さおとめだ。


「ねぇ、早乙女」


声をかけると早乙女はガタッと猫背だった姿勢を正した。


(こんな奴だったかな。)


早乙女とは隣の席だったこともあり、高校で最初に出来た友達だった。以外とうぶな奴で、夏休みに泊まりに行ったとき早乙女の兄が持っていたアダルトな雑誌を見て顔を真っ赤にしていた。その時と同じような表情をしていたので、クスッと笑ってしまう。


「どっども。なっ何で俺の名前知ってるの?」


しまった。前と同じ感じでしゃべったから怖がってるのかな。


「おっと、ごめん。その、そう!席順!ほら、黒板に張られてるの見だろ?」


慌ててミサキは指をさした。


(夢なのに、何焦ってんだ俺)


「それでさ!ちょっとお願いがあるんだけど、いいか?」


あたふたしている早乙女を無視してミサキは話を進める。


「なっなんでしようか」


(なんで敬語なんだよ。)


「俺のほっぺ、ちょっとつまんでくれない?」


ミサキは自分の頬を指指して頼むが、返答がない。早乙女は目を泳がして、顔が先ほどよりも沸騰したかのように真っ赤にして俯いてしまった。


「早乙女?」


ミサキは早乙女に手を振るが、全く返答がなくなってしまった。


(なんなんだ。こいつ・・・いだっ!)


急に後頭部に何かが当たる。振り返ると深谷先生が立っていた。困ったように眉を下げ、


「気になる男子をからかい気持ちは分かるが、そのぐらいにしといてやれ。城島さん」


そう言うと深谷先生は教壇に戻っていった。クラスで皆が騒しくしている中、ミサキの思考は停止していた。


(いや、俺!男ですけど)


そう思いながら頭をかきむしる。が、また不可思議な点に気付く。


(俺の髪ってこんなにサラサラしていたっけ)


ミサキは幼い頃から短髪で整えてきた。長髪にしたのは大学時代のノリで一度だけだった。パーマに挑戦する為に伸ばしていたが、髪質が硬い為、皮に刺さって痒いと杏奈に嘆いていた時以外は一度たりともない。なのに今は髪質は柔らかく、質感の良いシルクの様な触り心地だ。考えを巡らせていると今度は前の席の女子が話しかけてきた。


(この子は確か名前は川﨑だったかな。)


「私川﨑マナ。君、面白いね。あんな大胆に行動してたと思ったら恥ずしそうに頭抱えたりしてさ、見てて飽きない感じするわ。でも初日から寝てたからかコミュ症系の子かと思ってた。ごめんね。」


川﨑舌をペろっと出した後、髪がボサボサになっちゃってるよと言いながら鏡で見せてくれた。


その時、ミサキは全て理解した。


俺、女になってる!?

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